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敵、倒す、無双、

 休日終わりの月曜日、僕はいつもの様に教室に入る。

 するとクラスメイトが何やら慌ただしい。


 黒板を見ると、課外授業が行われるようだ。


 どうやら彼らはそれがうれしいようで、目をぎらつかせていた。


「やっと魔法をぶっ放せるよ」


「金欠から解放される〜」


 と言う声で察しがついた。

 

これはもしかして魔物退治か!?


 これはようやく、やっと異世界らしく魔法を使える時が来たらしい。昨日急いで勉強した甲斐があった!しかも授業でお金までもらえるらしい。


「セレナ、終わったらもらった金で豪勢なレストランでも行こうぜ!」


 軽く、セレナに話しかけた。このように教室が盛り上がってる中、様子を伺うだけでなく場に合わせた軽口を言うことでクリスとして自然に振舞うことができる。


「うん!終わった後のデート楽しみだね♪」


♦︎


「おーい、みんな。早速行ってもらうぞ」


「「はーい」」


 先生が教室入り口から僕らに声をかける。

 そしてその掛け声でクラスメイト達が立ち、教室を出ていく。


 僕はクラスメイトについて行く。


 校舎4階まで登り、廊下中央の部屋に彼らと共に入る。


 部屋には巨大なテレスが一機とクラス人数分のロッカーがある。そして僕のロッカーの中には普段使うものより一回り大きな杖があった。これが戦闘用の杖ってことなんだろうか。


 クラスメイトの戦闘用魔道具には各々個性があった。剣や弓、銃の武器の形をしたもの、バネ状の杖、球体など様々だ。僕のシンプルな杖より見栄えがいいのでずるいと思った。


「誰が多く倒せるか勝負しようぜ〜」


「いいね。その勝負乗るよ!」


「下らんな、俺は乗らん」






 クラスメイト達が魔道具を手に取り、和気藹々と話している。


 元いた世界ならこういった場で僕は価値を示せなかった。しかし、このクリスの力があれば価値を示せるかもしれない。クラスメイトの力もクリスの力も供に未知数だが、僕はクリスがこの中で埋もれるとは思えない。体を使っているからこそ、成っているからこそ分かる、クリスは天才だと。


 やってやる


 僕は意気揚々とテレスに乗り込んだ。



 そして場面が変わる









 テレスを出るとそこは戦場だった。

 人対魔物では無く、人対「人」の。数え切れないほどの数のキリシアの兵士と何処かの国の兵士が殺しあっていた。


 僕は体がすくんで動けなかった。


「聖騎士団が来たぞ!全隊撤退しろ!」


 聖騎士団?


 今まで学生だった、子供だった彼らは化け物みたいな強さの「魔術」を行使し始めた。














 セレナは聖騎士であるために、100人殺した


 チェルシーは割り切って、100人を消し炭にした


 サラはゲーム感覚で、100人の体をバラバラにした


 ノアは愛する兄弟のために、100人の体を真っ二つにした


 ヘンリーは忠誠を誓った国のために、100人を土に還した


 ブライは軽く謝って、100人の頭を撃ち抜いた


 リアムは深く考えず、100人の首を刎ねた


 エマは他国の人間をゴミだと思ってるから、100人の心臓を矢で貫いた


 レヴィは快楽のために、100人を窒息させた


 エレンは愛する人以外どうでもいいので、100人の命を蔑ろにした


 アリスはお金のために、100人を報奨金に替えた



 …………




 僕らが来たことで戦争だったそれは「蹂躙」に変わっていた。


 彼らは無感情に、楽しく、お金のために、自分達のために、大義名分を掲げ、人を殺した。


 それが悪いことなのかは分からない。戦争として戦っているからには死ぬ覚悟も云々だとか、国に仕えている以上国のために使命は果たさなければいけないとか、そもそも魔物を殺すのは良くてなんで人を殺したら駄目なのかとか。


 ただ僕は人が人を虫ケラのように殺すのを見ることが耐えられなかった。気持ちが悪かった。


 そして「僕」は何もできなかったので目を瞑ることにした。

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