美少女たちが温泉でえちちちちち
カレー授業が終わった後クラスは男女で別れ、山中の保養所のような施設(以下保養所)の客室(泊まる部屋)に向かった。
クラスは男子10人女子10人の計20人で、客室には5人ずつ泊まる。
つまり僕はノア君を含む4人の男子と共に夜を過ごす。
何故か部屋長に任命されていて、鍵の管理を任された僕が客室の扉を開ける。
「お〜結構立派な部屋だなぁ」
客室は広く、清潔な印象を持った。
ベッドも2段ベッド、3段ベッドに押し込められて窮屈に寝る事になるんじゃ無いかと思っていたが、スペースを贅沢に使いしっかりと横に並んでいる。
「ここは普段、上級騎士が訓練で使う場所らしいからね。中々に豪華だよ」
僕の呟きにヘンリーが返してくれる。
ヘンリーは緑色の髪をした超絶イケメンでガタイは良く、180cm以上の背丈がある。
話し方や顔付きは真面目で優しそうで紳士って感じだ。
「あ、おい! ブライ! 勝手にベッド取るなよ!」
「…………早い者勝ちだ」
早々と窓際のベッドを確保したブライもまた金髪で短髪の超絶イケメンで、ハリウッド俳優のような顔付きと体付きをしている。
言動と雰囲気から、寡黙系で何考えてるかよく分からない奴感を感じる。
対して、ブライに突っ込みを入れたのはリアム。
リアムは赤髪の超絶イケメンでノアと同じく身長175cmくらい。
この4人の中で一番陽キャ度が高そうである。
キャラが増えて頭が混乱しそうだがノア、ヘンリー、ブライ、リアムの4人の超絶イケメン達と共に僕はここに泊まる。
僕の転生前が女子だったら相当嬉しい展開だったろうに。
「早い者勝ちって事なら、俺はここもーらい!」
陽キャリアムは残り1つの窓際ベッドを確保する。
ああ、僕も窓際が良かった。
「下らんな、ベッドなんてどこでもいいだろう」
そう言いつつノアはブライの隣のベッド横に荷物を置く。
「あ、私は頻尿だから一番手前(部屋入り口側)のベッドをもらっても良いかい?」
頻尿という謎のカミングアウトをしたヘンリーがノアの隣の一番トイレに近いベッドを確保する。
「じゃあ僕はここだね」
そして僕は余りの、リアムの隣のベッドとなった。
一旦会話が途絶え、場が落ち着きそうになる寸前のところでリアムが切り出す。
「取り敢えず温泉行こうぜ! ここに居ても暇だしよ」
温泉!?
温泉なんてあるのか!?
しおりには「大浴場」と書いていたけど。
いやあ、テンションが上がるなぁ。
「いいね。私は賛成だよ。君たちはどうだい?」
「…………ああ」
「いいぞ。断る理由も無いしな」
「僕も僕も!」
全員が同意する。
個性がバラバラな割に何だかんだ統率が取れている。
「じゃあ早速いくか!」
僕たちは着替え等を携え、3階の客室から1階の温泉へと向う。
温泉はこの広い保養所の端に位置しており、辿り着くのに少し時間が掛かった。
そして僕は密かに混浴を期待していたが、しっかりと男女で別れていた。
脱衣所に入り、彼らは服を脱ぎ始める。
「おおおっ!」
「!? クリス、どうしたんだ!?」
驚いたことに魔術師のはずの彼らは皆、筋肉が良い感じに付いており良い身体つきをしている。
男の僕から見てもかなりセクシィだったのでつい興奮してして声が出てしまった。
僕は別に男性を性的な目で見ないが、こうも高スペックなイケメン達に裸で囲まれると、なんとなく「僕が女の子だったらこの状況滅茶ええやん!?」みたいな謎の女目線が発動する。
心配(?)してくれたリアム君に何か返事をしなければならないが、
「いや、みんな良い体付きしてるなぁって思って」
なんて事を言えば気持ち悪がられてしまうので、
浴場入り口辺りを指差して
「あ、ごめん。ウォーターサーバー(魔道具)が有るのに感動して」
と返す。
「いや、そんなに珍しく無いだろ」
浴場にウォーターサーバーはこの異世界では標準装備らしい。
各々真っ裸になり、タオルでさり気なく股間を隠しつつ浴場に入る。
浴場は2部構成で建物内に主浴槽とシャワー(体を洗う場所)、外に露天風呂があった。
この世界でも、湯に入る前に体を洗うのはマナーであるらしく、それぞれ絶妙な距離を取りつつ(男同士が並んで身体を洗うのは気持ち悪いので、シャワーを1つか2つ空ける)体を洗う。
そして若干の個人差はあれど、大体同時間で身体を洗い終え、示し合わせた訳でも無いが皆露天風呂の方へ行く。
僕は若干潔癖症で入念に体を洗うので、一番最後に着水した。
露天風呂でも、僕たち5人は男子特有の間合い(近すぎると気持ち悪い)をはかり、一定の距離を保っている。
特に会話も無く温泉に浸っていると、露天風呂仕切りの向こう側から、声が聞こえた。
「すごーい! 立派な温泉!」
「チェルシーさん、走ると危ないですよ!」
なんと、仕切りの向こう側に女子達がいる!
露天風呂は仕切りで男女に分けられていたのか。
声はチェルシーちゃんと……あと1人は誰だろう、まだクラス全員の名前と声が一致していない。
女子達の温泉に入る音、足音から察するに僕らと同じ5人くらいだろうか。
「ほほう、セレっち。これは良いものをお持ちですなぁ!?」
「きゃっ。 も〜チェルっちやめてよ〜」(パシャ)※水が跳ねる音
セレナ(2話のクリスの彼女っぽい人)だ。
あだ名で呼び合っている事から察するにチェルシーと仲がいいらしい。セレナも陽キャっぽいから、まあ合うんだろう。
それよりチェルっちはセレっちに何をしたんだ?
気になってしょうがないぞ。
「んっ……もう! 仕返し!」
「きゃっ、セレっち、止め……あんっ!」
チェルっちの嬌声は止まらない。
「あっ……ああっ……んっ、ああ……あっ」
チェルシーはとても色っぽい声を出している。
「セ……セレナさん、止めてあげて下さい! チェルシーさんとろとろになっちゃってます!」
「はあっ……はぁっ……。もう、お嫁に行けない……」
「〜〜〜〜〜」(小声)
あ、サラちゃんもいた。
小声で何言ってるか聞こえないけど。
「え? サラちゃんまで!? ひゃっ」
様子は見えないが、向こう側でこんなやりとりが10分弱繰り広げられ彼女達は去って行った。
その間、僕たちは誰一人として言葉を発さず、その場を立たなかった。
というかみな、最初入浴していた時の体勢から「体のある部分」を隠すような若干不自然な体勢に変わっていたので、立てないのだろう。
「…………最高だな」
入浴場に来てから一言も言葉を発さなかったブライがそう呟いた。
「ああ、そうだな!」
「違いないね」
「……まあ、否定はしない」
「最高だね」
「何が」とは言わなくても僕達は通じ合っていた。
この時「僕」は彼らと出会って1日も経っていないが、彼らとは一生涯の親友になれる事を確信した。
「あ、クリス君達もお風呂入ってたんだ!」
風呂上がり、浴場入り口前でたむろって瓶牛乳を飲んでいたチェルシー達に遭遇する。
「えっ!? あっ……ああ! うん!」
湯上りでただでさえ色っぽいのに口元に牛乳が付いてるもんだから、やばい。
「? どうして目を逸らすの?」
「えっ? 逸らして無いよ? うん」
無理やり目線を彼女の顔に合わせる。
「あそこに牛乳があるからみんなで飲んで良いんだって!」
チェルシーが透明の冷蔵魔道具(以下冷蔵庫)を指差す。中には瓶牛乳が並んでいる。
僕達は冷蔵庫から瓶牛乳を取り、側にあったベンチに並んで座りながら飲んだ。
「みんな、この後どうする?」
僕は切り出した。
「夕飯まではまだ時間があるし、かと言って何か大きな事をする程の時間も無いよね」
「ならトランプだな。 部屋に戻ってトランプをやるぞ」
ノア君、どんだけトランプがしたいんだ……。
「ぷっ。 ノア、お前ってそんなキャラだったか?」
リアムが吹き出して笑う。
確かにノア君の印象はバスで出会った時から、大分変わった。
リアム君に笑われる程のキャラ変を果たしているという事はノア君はこの林間合宿をはしゃいでいるのかもしれない。
「何がおかしい?」
「いや、別におかしかぁ無いけどさ。ギャップに笑っちまったよ」
「あれ、そういえばヘンリー君は?」
浴場から出るときは居たはずのヘンリーが居なくなっていた。
「……さっきトイレに行くと言っていた」
ブライが返す。
何の事件性も無い、大したことのない理由だった。
その会話の直後、ヘンリーが小走りで帰ってくる。
「みんな、大変だ! 」
どうしたのだろう。
まさか敵襲か!?
ここに来てようやく「異世界」らしいイベントが発生したのか?
「あっちに「ポンク台」があるぞ!」
……ポンク台?
聞きなれない単語だから「異世界」要素ではあるのかも知れないけど敵襲では無いようだ。
「ヘンリー君、それ本当!?」
女子達もそれを聞いていたらしく、テンションが上がる。
僕達はヘンリーに連れられ、「ポンク台」のある場所に向かう。
30秒ほど歩いた先に卓球台の様に真ん中をネットで区切られた卓球台くらいの大きさの台が有り、その上に卓球ラケットの様な形状の物とピンポン玉くらいの大きさの玉が置いてあった。
「どうする? 1台しか無いけど」
ヘンリーが問う。
今この場にいるのは男子5人、女子5人の計10人。
僕は卓球の様な卓球では無い(と思っている)この競技の内容はまだ分からないが、10人で遊べる感じはしない。
「男子対女子のチーム戦にしようよ! 一人ずつ戦っていくの!」
チェルシーが元気よく発言する。
どうやらこの競技は1体1で戦うものらしい。
「いいのか? 女だからって手加減しねえぞ?」
リアムがよくいるかませ犬の様なセリフを吐く。
けど体を使う競技であるなら、彼の言う通り男子に分が有りそうだが。
「構わないですよ。 リアム君に負ける気はしないので」
「なんだと!」
この声は確か、温泉で走っているチェルシーを注意していた……。エマちゃんだったのか。
エマは黒髪ボブで気が強そうな感じの超絶美少女だ。
しおりで得た情報から、顔と声と名前が一致していく。
勝負は星取り戦形式、男子対女子でそれぞれ戦う事になった。また負けたチームは勝った方の掃除当番を代わりにやるという健全な賭け事が追加された。
「エマ、俺は先鋒でやる。 だからお前も最初に来いよ」
「いいですよ。 返り討ちにして上げます」
先鋒が自動的に決まる。
他の面子も順番を決めないといけない訳だが……。
「先鋒がリアム君ね。 じゃあ僕は大将をやっても良いかい? ポンクには自信があるんだ」
僕は大将を名乗り出る。
もちろん、ポンクなんてやったことは無いので「自身がある」と言うのは嘘だが、何しろルールや勝手が分からないのでみんなの対戦を見て学ぶ必要がある。
「おお、頼もしいね。 じゃあ大将はクリス君だね。後は適当に決めようか」
ヘンリーが上手いこと仕切ってくれ、順番が決まる。
「先行のサーブ権はお前にやるよ」
「……後悔しないでくださいね?」
そしてリアム、エマの両者が卓球ラケットの様な物を手に取り、エマがピンポン玉の様な玉を持ってゲームが開始した。
さて、この「ポンク」はどの様な競技なのだろうか。まさかこの「異世界」で、そのまま卓球と同じ事をするなんて思えないので色々妄想が膨らむ。例えばあのラケットやピンポン玉が実は魔道具で、魔術を使いながら玉の軌道を制御したりするのではないか。あるいはあの「ポンク台」から魔術陣が発動して立体的で魔術的なオブジェが出現し、想像もできない様な戦いが始まるのだろうか。
「では、勝負開始!」
「……ふっ!」
審判のヘンリーの掛け声とともに、エマはピンポン玉を宙に投げ、それをラケットで打つ。
放たれたピンポン玉は台をワンバウンドしてネットを越え、リアム側の方でまたワンバウンドする。
「はぁっ!」
バウンドしたピンポン玉をリアムが打ち返す。打ち返された玉は今度はそのままエマ側の方でワンバウンドする。
「ふっ!」
それをエマが打ち返した!
そして以後同様にラリーが続いていく。
彼らに魔術を使っている様子は無く、現実世界での卓球と同じ様にラリーをしている。台も何か特別な仕掛けがある訳でもなさそうだ。
つまり、「ポンク」(以下卓球)とは卓球の事だったようだ。
ただ、僕のがっかりを帳消しにする程彼らのラリーは凄まじかった。魔術を使っていないにも関わらず、卓球プロにも劣らないかも知れない(卓球プロを生で見たことは無いが)動きだ。
「くそう! あのミスがなければ勝てたのに!」
「思ったよりやりましたね、リアム君」
しばらくしてリアムが惜敗する。
実力は同程度でどちらが勝ってもおかしく無かったが、リアムの動きの荒さがミスを引き起こしてしまった。
「……じゃあ次は私だね。自信ないけど頑張ってくるよ」
リアムに続き、ヘンリーが台前に立つ。
…………
その後ブライとノアが勝利、ヘンリーが敗北し、勝負は大将戦までもつれ込んだ。
どの戦いも初戦に劣らないくらい高レベルで、白熱した物だった。
ので、僕は必死にみんなの動きを見てイメージトレーニングをしたが果たして通用するかどうか。
僕は台前に立つ。
そして対面には彼女がいた。
「そう……クリス君が大将なんだね……」
「セレナ……」
セレナは仰々しい風格の圧を放つ。
「私、ポンクで負けたこと無いんだよ? 昔温泉ポンク大会で優勝したこと事もあるし」
「僕だって、一番得意なスポーツはた……ポンクさ。 悪いけど勝たせてもらうよ」
僕は陰キャラなので一番得意なスポーツは卓球だった。まあ、他のスポーツに比べれば、だけど。
「じゃあ、いくよ!」
セレナが鋭いサーブを放つ。
僕は先ほど見たみんなの動きをイメージし、その通りに体を動かす。
ラケットにピンポン玉が当たり、軌道も狙い通りになったが、台スレスレの所に落ちてしまう。
アウトだ。
イメージと体の動きに若干のズレがあるけど何とか戦っていけそうだ。
やはりこの「クリス」の体の学習能力、運動神経は異様なまでに高い。
…………
「これで終わりだよ!」
「ぐはぁ!」
健闘はしたものの、敵わなかった。
卓球の経験値の差が決め手となった。
「やったねセレナちゃん!」
「みんなの応援があったからだよ!」
女子達が勝利を讃え合っている。
「ごめんね、みんな。勝てなかったよ。掃除当番することになっちゃったね」
「しょうがないさ、私も負けたし。惜しかったよクリス君」
「そうだぜ、あいつ間違いなくこのクラスで一上手いぜ。あんなのだれも勝てっこ無いだろ」
「ふんっ……まぁ、俺なら倒せたがな」
なんて気のいい奴らなんだ。
お遊びとは言え、負けて少しもギスギスしないなんて。
高校生にしては大人過ぎはしないだろうか。
やはり、「持ってる人間」は心にも余裕があるのか。
「おっ、もう夕飯の時間だな。同じ1階だし、このまま行くか!」