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陽キャラバイト特有のうざいノリ

 

「お兄様起きてください! 着きましたよ!」


「んが……?」


 乗客が降りている。


 僕は現実世界で乗り物に乗っている時、特に夜行バスなんかでは一睡もできないくらい神経質だったけど、すっかり寝ていたようだ。


「おはよう!クリス君」


「うわっ」


 座席の後ろからリザが顔を出し、僕の耳元に声をかけた。


「おはようリザ」


「ところでクリス君、私今横で眠っている天使の寝顔を一生見ていたくて、起こすことができないんだけどどうすれば良いかな?」


 リザの横でレナがまだ眠っている。


「すやすや」


「確かに、これは由々しき事態だね。このままだと僕たちはバスから降りることができない。もしレナちゃんが目覚めなかったら僕たちは一生このバスでレナちゃんの寝顔を眺める事になるかもしれない。でもそれで一生を終えるのも幸せなことかもしれないし、僕たちは今人生の重大な選択を迫られているね」


「お客さーん、着きましたよー!早く降りてくださいーい!」


 バス内を確認する係の人に怒られる。


「むにゃ、おはよう。お兄ちゃん、お姉ちゃん」


「残念だけど、起きてしまったね。じゃあみんな行こうか!」



 僕たちはバスを降りる。


「おお、お洒落な場所だなぁ。景観がいいね」


 西洋風でお洒落な建物と川、水路が一体となった町並み。水路にはゴンドラが流れている。

 暑いけど風が涼しいし、水路を太陽が照らし、水が輝いているのがなんだか綺麗だ。


「レナ、あれ乗りたい!」


 レナがゴンドラを指差す。


「いや、まずは宿の確保をしないと……」


 すると僕たちの会話を聞いていたバスの係のお姉さんが話しかける。


「それでしたらお客様、あちらの3番停のゴンドラに乗りますと町の中心部に行く事が出来ます。そこにいい宿やお店が揃っているのであちらのゴンドラに乗るのがよろしいかと」


 うお、すごい親切に誘導してくれた。しかも手慣れているというか「待ってました!」といった具合で。

 なんだろう、このバス会社とゴンドラとか宿とかが提携してるのかな。マニュアル感があるぞ。


「あ、ありがとうお姉さん。じゃああのゴンドラ乗りに行こうか」


「やったー♪」


 僕たちは3番停のゴンドラ乗り場に向かう。


 僕は事前に両替しといたお金をそこにいたお兄さんに払う。


「毎度あり。じゃあ嬢ちゃんたち、ゴンドラに乗ってくれ!」


 レナちゃんが率先して乗っていく。それに続きリザ、アイラと乗っていく。


「お兄様、足場に気をつけてください」


 アイラがゴンドラから僕に手を差し出してくれる。


「ありがとう、アイラ。……うわっ!とっと」


 ゴンドラは中々揺れていて、バランスを保つのが難しい。

 ゴンドラ怖っ!


 僕は慎重にゴンドラ内の席に座る。


「それでは行きますね!しゅっぱーつ!!」



 ゴンドラのお兄さんが櫂を使って漕ぎ出し、ゴンドラが進む。


「わー、すごーい!」


 レナちゃんがはしゃいでる。

 僕は揺れるし、水が近いしでちょっと怖かった。


「嬢ちゃんたちは旅行かい? みんなすごいべっぴんさんだねぇ! 兄ちゃんが羨ましいよ!」


「あ、あはは」


 観光地陽キャバイト特有のノリで絡まれる。


 なんでこういう人たちってお客さんに話しかけるんだろうね。


「あははそんな〜。褒めても何も出ませんよ!」


 リザがババくさい返しをする。


「それにしても凄いですね! 手漕ぎでこんな大きい物が動いちゃうなんて」


 アイラがゴンドラのお兄さんを褒める。


「あ、これねぇ実は魔力で動いてるんだよ。別に漕がなくてもいいんだ。ほら」


 お兄さんが櫂を水から出す。


 ゴンドラはスピードを落とさず進んでいった。


 その櫂はフリかよ! 雰囲気作りかよ!


 そしてそれを聞いてレナちゃんが悲しそうな顔をしている。


「それにしても嬢ちゃんたち大変な時に来たねぇ」


「大変?」


「うん。近々この国で大きな「布告」があるらしいんだよ。なんの布告かは分からないけど、国を揺るがすくらい重大な事らしいから、結構みんな不安なんだよね」


「へえ、そうなんですね」


 布告って何? まあよく分からないけど僕たちには関係ないだろう。


「お兄さん、着いた先でおすすめの宿とかお店とかってあります?」


「おっ、いい質問だね〜。 そこら辺のマニュアルは叩き込んであるよ! ってあれ、言っちゃった。まあいいや。 おすすめの宿はー


 僕は「おすすめ」の宿や店を聞く。

 まずはこれで一安心だ。


 やっぱり旅は行く先々で自分で決めるような博打を打つんじゃなくて、決められた、安全なルートでするのが一番だよね!

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