異世界転生テイマー
栗栖川類。
明らかにこの異世界にそぐわない、僕の元いた世界の、元いた国の名前。
まさかこいつも僕と同じ転生者なのか? しかし僕と違い、元の体のまま転生してきているように見えるが……。
「クリスガワ……? 変わった名前だな。君、こんなところで何をしてるんだ?」
「いやあこの子が可哀想でさ、体に付いていたのを剥がしてあげてたんだよ。僕、魔物使いだからさ。苦しんでるこの子が見過せなかったんだ」
「…!? 君、魔力吸収機を何処へやった! 」
神樹の時と違い、「魔光岩」には何も付いていなかった。神樹と同じように魔力を吸収しているのであれば、「魔光岩」にも魔力吸収機が付いているはずだ。恐らく言葉通り栗栖川が剥がしたのだろう。
そして栗栖川は「魔光岩」をこの子と言った。帝国が魔力源としているこれが魔物であると知っているのか?
「魔物使いって事は道中の魔物は君の仕業かい? 」
「え……? いやあ、テイマーって言うのは冗談だよ(笑)。今流行ってるから言ってみただけさ。魔物さんは住処を侵されたから襲ってきただけじゃない?」
むかつくなぁ、こいつ。
しかし、転生者であるからには何かしらの能力があると見ていい筈だ。でなくては、そもそもこいつがここにいること自体おかしい。
得体の知れない強力な能力があるならば、使われない内に片を付けた方がいい。
「そうなんだ、疑ってごめんね。僕も森で似たような子を救ったよ」
「そうなんだ! 君は確か……クリス君だったよね!? スープバーでレストランに長居していた!名前も似てるし、もしかしたら僕たちは気が合うのかも知れないね。よろしく! 」
栗栖川は僕に寄って行き、握手を求める。
「よろしく! 」
僕はそれに応じるよう見せかけ、「時を止める魔術」を使う。
そして、栗栖川に氷柱魔法を放った。
グォン
氷柱が栗栖川に当たる瞬間、彼の手を中心に空間、否、次元が歪んだ。
そして氷柱が異次元へと吸い込まれる。
こいつ、握手する振りをして僕に攻撃を仕掛けてやがった。
見るからに、次元操作の能力って所か?
あんなの食らったら一たまりもない。
「時を止める魔術」が切れ、時間が動き出す。
「……あれ? 握手してくれないのかい?」
「ごめん、ここ暑くて。手汗が凄くってさ。やっぱりやめとくよ」
「そうかい…」
栗栖川は白々しく落ち込んだ(ような)顔をする。
「時を止める魔術」のコンボは通じなかった(というか最近通じる時の方が少ない気がする)が、この時点で僕は二つの情報アドバンテージを得ることができた。
一つは彼が次元操作の能力を持っていること。
もう一つは彼が卑怯で手段を選ばない人間だということだ。
そして、僕がこの情報を得たことを彼が知らないというのは大きい。
栗栖川は僕を自分に近づけさせようとした。
そして次元操作の能力は彼の「手」を中心として発動していた。
つまり彼の能力の射程は短く、範囲が限られてると推測できる。
だから魔法を彼に対し四方八方から放てばダメージが通るかも知れない。そのためには長い詠唱時間がいるが……
「クリス君!何呑気に話してるんだ!…君、クリスガワと言ったか?おとなしくー
よし、ヘンリーが栗栖川の注意を引いてくれた。
この隙に詠唱できる。
「いやぁ、それは出来ないね。僕はこれから此処でする事があるんだから……ってあれ?」
栗栖川の周囲を僕の魔術によって生成された氷柱が囲む。
「栗栖川君ごめんな。死にはしないから、精々半殺しにする程度だから、食らってくれ」
「これクリス君がやったのかい? 酷いなあ。僕たちさっき友達になったばかりじゃあないか」
氷柱が栗栖川を目掛けて放たれる。
「っ!?」
氷柱は突如栗栖川を中心に発生した旋風によって弾かれた。
土煙が治ると、栗栖川の隣に男が立っているのが見えた。
黒い鎧に巨大な槍、ガゼットと同じくらいの年代だろうか、30代くらいの風貌で灰色の髪色をしている。
こいつ、どこから現れた?
栗栖川は氷柱に囲まれていて、入る隙間なんてなかった筈だが。
「じゃあ頼むよカイルさん」
「ああ……」
その男は「魔光岩」に向かい、巨大な槍を突き刺す。男から槍を通し、「魔光岩」に魔力が注がれる。
「あの時」と違う。森ではガゼットが魔力を神樹から吸い取っていた。今は逆だ、魔力を入れている。
どちらにせよ、「魔光岩」が魔物に変化するならまずい。
「みんな! 此処から離れろ!」
「え?」
「いいから早く!」
聖騎士達は僕の呼びかけになんとか応じてくれ、僕たちはその場から離れる。
「魔光岩」は禍々しく光りだし、地面が揺れる。
岩石だった「魔光岩」は姿を変えていき、赤黒い岩石を体表に纏った巨大なドラゴンと化していく。




