ここが正念場か。まあ美少女たちにカッコいいとこ見せてやるか!
1話に妹とメイドと一緒にお風呂に入る描写を追加しました。
「ここで番人をするのにぴったりの魔道武器だろ? 「神樹」さえあれば俺は「聖騎士」よりも強い」
男は魔力を充填し、巨大な斬撃を放つ。
僕は時を止め、それを避ける。
「おお、今のを避けるのか。いや、こんな辺鄙なところに出向させられてクソ退屈だったが、久々に楽しめそうだ」
男は再び大剣を刺し魔力を充填する。
「よくしゃべるね、おじさん」
「ああ、君のおかげで楽しくてな。君を虐めて、ストレスを発—
突如巨大な氷柱が現れ、魔防壁ごと男を貫く。
「ぐはっ!」
男はその場に跪く。
「おじさんが「聖騎士」より強い? なんの冗談だい?そんな強欲大剣でこの僕に勝てるわけないだろう。その程度の防壁なんかその気になればいつでも破壊できる。無駄に魔力を使うし、おじさんを殺しちゃうかもしれないから、今までしなかっただけだよ」
僕は男に詰め寄る。
「ガ…ガキがっ…!」
「ばいばいおじさん」
僕は男を眠らせ傷を回復させる。
「じゃあ剥がそうか、「神樹」の魔道具を!」
僕は笑顔で振り向きアイラ、リザに呼びかける。
するとリザが怯えた様子で「神樹」を見ていた。
「クリス君、何か「神樹」の様子がおかしいよ」
「神樹」が禍々しく光っている。
森はざわめき、鳥は騒がしくなり、小動物たちは逃げ出している。
禍々しい光を放ちながら大樹だった「神樹」は姿を変えていく。根が抜け、その幹から腕と足を生やし、枝葉だったそれは強大なツノを持った魔物へと変貌する。
大樹に絡みついていた魔道具は引き剥がされ、粉砕され、地面に落ちていく。
大きさは大樹だった頃と同じく50mを優に超える。
「神樹」は木の巨人と化した。
「ヴォオオオオ!」
木の巨人が轟く。
「リ、リザ……。あれなんだい?」
「わ……分からないけど、やばいよ!逃げよう!」
巨人は強大な腕を振りかざし僕を攻撃する。僕は走り、それをすんでのところでかわす。
巨人の拳が地面にめり込む。
とてつもない破壊力だ。まともに食らえば魔防壁を張っていたとしても押しつぶされるだろう。
僕たち3人は走った。木の巨人は最初は追って来ていたが僕たちを見失うとその場で暴れ出した。
僕たちは木の陰に隠れ、一息つく。
「あのまま放置するのは駄目かな?」
僕が「神樹」に来た目的は帝国への嫌がらせだった。森やエルフ達がどうなろうがどうでもいい。帝国兵を制圧し、「神樹」の魔道具を破壊して一矢報いることが僕の目的だった。そしてその目的は達成された。
「でも…あのままだとこの森が」
「神樹」が巨人と化してから、森の生命力が弱々しくなっている。
アイラはこの森のことを憂いていた。
僕の魔力残量は残り少ない。今の魔法の出力であの巨人倒すことはできないだろう。いや、万全の状態であってもあの巨人を倒すことはできないかもしれない。それほどにあの巨人は「巨大」だ。
僕は俯くアイラとリザを見る。
「クリス」だったらここで諦めていたかもしれない。妹を危険に晒す事を避け、妹と共に逃げることを選択するだろう。
でも「僕」は違う。
「分かった、じゃあ作戦を立てよう」




