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俺が妹とイチャイチャしてたらメイドさんブチギレて修羅場になった件について

 この国を出るための準備を始めた。


 今住んでいるこの町はビロン。首都アテネを中心とする首都圏内の内の1つの町だ。首都圏内の移動は「テレス」を使えるが、圏外までは行けない。

 圏外に出るにはタブロスと言う町から首都圏外のアケドニアに行くのが1番近い。

 首都圏外はキリシアの領土ではあるが、元々他の国であったため首都圏を抜けることがこの国から脱する最初の一歩だ。


 明日の授業後アイラと共にタブロスに行くことにした。


 自室で旅支度をする。

 必要最低限の服と魔道具を鞄に詰める。

 またアイラにも旅支度するよう伝えた。


♦︎


 僕はクリスとしての役割を放棄し自由になる。

 大好きなアイラと一緒に何者からも支配されない居場所に行き、そこで幸せになる。

 そう決意し僕は眠りについた。






 翌日、旅立つ前に僕は戦闘用の杖を取ろうと戦闘準備室に向かった。今後戦う機会が訪れた時、今ある杖では心許なかった。しかし準備室には鍵がかかっており、入ることができなかった。無理に入ってしまうと騒ぎが起きてしまう可能性が高いため、諦めた。



 そしてテレス前でアイラと落ち合い、タブロスに向かった。テレスを3回ほど乗り換え、一瞬でたどり着いた。首都圏内であれば誰もが何処にでも一瞬で行けるというのは凄まじい。


 タブロスの街中からアケドニアまでは5kmほど歩かなければならない。


「アイラ、ここから結構歩くけど平気か?」


「大丈夫ですよ、お兄様。体力には自身があります! なにせ私はお兄様の妹なので」


 アイラはどこまでを知っているのだろうか。クリスが戦っていることは知っていたのか。学校や聖騎士について知っているのだろうか。そういえば、僕が見たクリスの記憶の断片では両親のことを知ることができなかった。結局会うことは無かったが死んでいるのか、あるいは何か違う事情があるのか。


 歩いて行くにつれ、景色が今まで住んでいた「都会」らしさが薄れていき「郊外」感が高まって行く。いよいよ首都圏を抜けることが出来そうだ。


「もうすぐアケドニアですね。お兄様」


「なあ、アイラ大事な話があるんだけど」


「何ですか?お兄様」


「僕、君のお兄さんじゃあ無いんだ」


「え?それってどういう‥‥」







「クリス様、どこに行かれるおつもりですか」


 背後から声がした。僕とアイラでなく第3者の。


 そこにはミツェルが剣を携え、冷たい表情で立っていた。


「ちょっとした旅行だよ。どうしてミツェルは付いて来てたのかな?」


「クリス様を管理するのが、私の役割なので」


 その瞬間、剣を振りかざしミツェルはこちらに向かってくる。

 僕は咄嗟に杖を取り出し、詠唱した。

 魔防壁とミツェルの剣がぶつかる。


「管理するって、僕を殺すことなのか?」


「はい、クリス様が国の命に背く行動をとれば暗殺するよう命じられています」


 魔防壁にヒビが入る。

 僕は詠唱し杖を振りかざして、「火」属性魔術をミツェルに放った。

 ミツェルはそれを避け、後ろに下がる。

 一旦距離を置くことが出来た。




 間髪を入れずミツェルが飛びかかる。

 僕は詠唱を繰り返しミツェルに攻撃したが、悉くを躱されるか弾き返された。


 剣が魔防壁を破り、僕の胴を切り裂く。

 腹に焼けるような痛みを感じ、杖は僕の手から離れ転がり落ちる。

 ミツェルは僕を押し倒し馬乗りで押さえつける。


「ぐぁっ!」


「クリス様、戦闘のキレが全くありませんね。如何されました?私如きでも全く脅威に感じず、倒せてしまうなんて」


「お兄様!」


 アイラがミツェルに魔法を放つがミツェルの一振りで容易く弾かれる。


 今までこの世界に来て戦う事なんてなかった。

 いくら強い魔法が使えても、使いこなせなければ意味がない。僕は弱かった。あるいはミツェルが強いのか。


「負けを認めるよ、ミツェルさん。もう殺してくれ」


「そう致します」


 ミツェルは剣の切っ先を僕の喉元に向ける。



「最後にその可愛らしい顔をよく見せてくれないか?」


 僕は右手でミツェルの頬に触れる。そして、詠唱する


「…?杖が無いのに何を詠唱して‥‥」


 そう言いながらミツェルは眠りについた。

 

 僕はミツェルに寝なくていい魔法を逆に作用させ、眠りにつかせた。

 ミツェルが油断してくれて良かった。杖を持たない人間は魔術を使えない。

 だから警戒するに値しない。


 だが僕は2本目の杖を背中に隠し持っていた。

 態とらしく1本目の杖を振りかざし、さもそれで戦っているかのように見せていたが、使用していたのは背中の杖。

 こんな小賢しい手が通用するかは賭けだったが、通用した。僕からすれば戦いで杖を手に持つなんてありえない。

 しかし、この国の人間は杖を手で振りかざす事が隙に成らないくらい強いからこんなコスい手を使わないのだろう。


 僕は自分に傷修復の魔法をかける。


「お兄様、大丈夫ですか!?」


 心配そうにアイラが駆け寄る。


「大丈夫だよ。僕がやられるわけないだろう」


 僕は強がりを言う。


「ですね。お兄様は最強ですから」


 涙を浮かべながらアイラが微笑む。

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