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「僕」

 先進魔術学科は魔道具を使う才能に長けた子供の集まりだった。身体能力が高く、魔力量が豊富で異常な子供。彼らは異常なまでに強かった。

 だから帝国は彼らを学生という形で管理した。ルールと環境で縛り付け、一纏めにすることで制御することができた。

 つまり彼らの真の姿は敵国を異常な戦闘力によって蹂躙する「聖騎士団」だった。


「クリス」も例外ではなく魔法を使う才能に長けていたため聖騎士に任命された。

 国に忠誠を誓い、王に仕え、敵を殺す誇り高き騎士となった。


 クリスは戦闘力こそず抜けているが、彼らのような異常性を持ち合わせていなかったため、人を殺すたび大きく心が傷ついた。

 しかし妹と共にこの国で暮らすために聖騎士団に身を置いた。

 聖騎士として国に仕えることが自分にとっても妹にとっても1番安全な選択肢だった。

 そうすることで居場所が得られるのだから。


 だがクリスの心は保たなかった。


 そして、クリスは生きることが嫌になったけど妹を放っては逝けないので自分の体に他の人間を入れることにした。自分の代わりにアイラを愛してくれる人間を。


 つまり、僕のアイラに対する愛情はクリスの呪いだった。





 ――――――――――――――――――――――――――


 僕はクリスの記憶の断片を思い出した。

 クリスは勝ち組では無く負け犬だった。無責任に役割を放棄し、全部を僕に押し付けて逃げた。

 僕と同種の人間だった。


 でも決定的に違う所がある。僕は偉い人とか幸せに生きている人間が大嫌いだから彼のように素直に従ったりしない。


 正義とか悪とか関係なく強い奴が弱い奴を押し潰すのは面白くない。見ていて気分が悪いだけだ。

 弱い奴が強い奴を倒す方がよっぽど痛快だ。


 クリスは才能を持っているくせに、力を持っているくせに、それが出来るかもしれないのに自分の意思を示すことができなかった。僕なんかよりよっぽど勝算は高いのにそれをしなかった。


 だから僕はクリスが出来なかった「本当にしたかったこと」をする。











「アイラ、一緒にこの国を出よう」


 僕は無責任に、裏表なく、純粋にアイラに思いを伝えた。


 アイラは涙を浮かべつつ嬉しそうに頷いてくれた。


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