ヒロインの幼馴染み~ヒロインを完璧にしたら全て解決すると思って~
処女作です。最後まで見ていただくととても嬉しいです!
俺、ロクトが転生者だと気づいたのは、俺が五歳の誕生日だった。前世の記憶が頭に浮かんできたときは、その情報量の多さに耐えきれず熱を出してしまった。
だが、問題なのはそこではない、問題なのは
「おねつさがった? いたくない?」
「う、うん、もう大丈夫だよ。ありがとう。」
銀髪に空のような色をした目の女の子
俺はこの子、ジャンヌを知っている。
俺の前世では『白き城にて銀なる花を』という乙女ゲームがあり、俺の妹がそのゲームが大好きでよく内容を話してくれた。そのゲームの主人公であるヒロインの名前がジャンヌなのだ。
このゲームは元々孤児院で過ごしていたジャンヌがとある事件をきっかけに、実は下級貴族の娘でさらにとてつもない魔力の持ち主だと知られ、貴族たちの集まる白城学園に入学する。
だが、貴族の常識を知らない彼女は様々なトラブルを起こしてしまい、攻略対象を巻き込み、悪役令嬢に目を付けられてしまう。
そしてトラブルに巻き込まれた攻略対象とジャンヌは互いに興味を持ち、惹かれていき、最後は悪役令嬢を断罪してハッピーエンド。
というストーリーである。
この話を妹から聞いた時に俺は思ったのだ。
あれ? このヒロイン疫病神じゃないか? と。
ヒロインがトラブルを起こさなければ悪役令嬢は目を付けなかっただろうし、断罪されなかっただろう。悪役令嬢からしたら急に出てきた下級貴族の娘が婚約者や周りの人ををトラブルに巻き込み、仲良くなっているのだから意味が分からないだろう。
俺は悪役令嬢に同情した。
ここはそんな世界なのだ。
もちろん、俺はジャンヌが嫌いな訳ではない。今の俺は彼女の幼馴染みで彼女の優しさを知っている。今も俺のことを心配してくれている彼女には感謝の念しか出てこない。
俺は、彼女に幸せになってほしい。だが悪役令嬢の彼女も幸せになってほしい。だから決めたのだ。
原作をぶち壊してでも二人が幸せになれる世界を作ると。
そのために何をすればいいのか、それを考え
「どうしたのー? まだあたまいたい? 」
「いや、少し考え事をしていただけだよ。」
「そうなの? 」
「うん、もう俺は大丈夫。」
「じゃあまたべんきょうおしえて! おひめさまみたいにかんぺきなおんなのこになるの! 」
ジャンヌが言っているお姫様とはこの国の妃様だ。文武両道で才色兼備、そんな非の打ち所がない女性でこの国の女性の憧れの的だ。
……いや、待てよ?
「――それだ! 」
「ひゃう!?」
ジャンヌが完璧な令嬢になればトラブルも起こさないし悪役令嬢が目を付け、断罪されることもない。つまり二人とも平和に学園生活を送ることができる!
「ジャンヌ! 」
「ひゃい!? 」
「完璧なお姫様を目指して頑張ろう! 」
「う、うん! がんばりましゅ! 」
……大丈夫かな? 噛んで赤面しているジャンヌを見て少し不安になった。
次の日から俺はジャンヌに勉強を教えた。俺は貴族のマナーなどは知らないので、前世の記憶が戻る前から友達だった、ソフィーに教えてもらった。
彼女は何故か貴族のことに詳しく、どうしてか聞いたら
「家で教わりましたわ。」と言っていたので彼女の家は貴族なのかもしれない。
「ロクト! この問題解けました! 褒めてください! 」
「良く解けたね、ジャンヌすごいよ! 」
そうしてジャンヌの成長を促していた。
そしてジャンヌが十五歳になったとき、ジャンヌはお忍びできていた第一王子と共に事件に巻き込まれてとてつもない魔力があることを知られてしまい、白城学園に行くことになった。
「いやです! 私は行きたくありません! 」
ジャンヌは潤んだ瞳でこちらを睨んでいる。最近見なかった表情だ。
「でも王家からの招待状だからね。行かないとジャンヌが罰を受けてしまう。」
「ロクトは私がいなくなると寂しいですか? 」
「当たり前じゃないか。」
「なら私はここに」
「――でもそれ以上にジャンヌに幸せになってほしいんだ。」
「――!?」
「学園に行けば貴族としての生活ができるし色んな人に狙われることも少なくなる、そして何よりも、君の夢の完璧なお姫様にだってなれるんだよ。」
そう、学園に行けば貴族の勉強を受けることができ、さらに身の安全も確保できる。彼女の価値は、俺だけで守ることが難しいのだ。完璧なお姫様になるためには学園に行くのが一番である。
「……」(私がなりたいのはあなたにふさわしいお姫様なのに)
「? あ、もしかして孤児院のことが心配? 大丈夫。俺がしっかりと見てるから気にしないで? 」
そこまで言うと、ジャンヌは少し拗ねた様子で言った。
「……そうですね、分かりました。私は学園に行きます。」
「そっか! ならよかっ」
「ですが!」
「――た?」
彼女は俺の言葉を遮り言った。
「私が完璧なお姫様になれたときは、またここに帰ってきてもいいですか? 」
彼女は少し泣きそうな顔で俺を見た。
……彼女は貴族だ。貴族としてのマナー等は教えたから立派な貴族になっている。完璧なお姫様になれたのならそのまま貴族としての幸せが約束されるはずだ。それをわざわざ捨ててまでここに帰ってくるのはダメだと分かっているけど
「――もちろん、ここでみんなと待ってるよ。」
そんな顔をされたら、ダメなんて言えるはずがないじゃないか。
「っはい! 必ず完璧なお姫様になって帰ってきます! 」
そうして彼女が笑った顔に俺は少し見惚れていた。
そして、二年が経った。
ジャンヌは帰ってきてないけど手紙は一週間に一度きていて、学園でのことをおしえてくれる。
どうやらソフィーも白城学園に入学していて一緒に過ごしているらしい。
そして、原作が始まった二年生からの手紙でも、気になっていた悪役令嬢らしき人物や攻略対象のことは何も書かれておらず、平和に過ごしているみたいだ。
「ああ、よかった。」
俺は変えられたのだ、悪役令嬢のことはわからないが、ジャンヌに関わっていないので断罪されることはないだろう。
「それじゃあ記念に孤児院のみんなでパーティーでもしようかな! 」
俺がパーティーの準備をしようとして椅子から立った時、コンコンとドアを叩く音が聞こえた。
「(珍しいな、ここに誰か訪ねるのは。)はい。」と言って扉を開けるとそこには
「ロクト! 久しぶりです! 完璧なお姫様になるために帰ってきました! 」
「久しぶりねロクト、あなたとの約束を果たしにきたわ。」
ジャンヌとソフィーがいた。俺は驚いたがそれよりも
「ソフィーのあんなに笑っている姿など初めて見る、あの男一体何なんだ!」
「ジャンヌ様があんな、あんな……くっ、イケメンすぎるだろ!爆発しろ!」
「何故こうもモテるのだ!しかも美少女に、羨ましい!」
……えっと? なんだろうこれは。第一王子に次期騎士団長、そのほかにもここでは会うこともできないような人に囲まれている。
「えっと、後ろの人達はどうしたの?」
「「勝手についてきたから気にしないでいいです(わ)」」
いや第一王子がいるんだぞ? 無理だよね?
「それは私が婚約者にならないと何度も断っているのにしつこくつきまとう害虫なので気にしなくていいわ。」
「がい、ちゅう……」
あ、はい。気にしないです。
「それで、ジャンヌのお姫様にしてって?」
「はい!私は学園に行ってから頑張って全てにおいて学年主席を取ってみんなから完璧な令嬢と呼ばれるようになりました!」
えっ、すごくない? この時点でもうお腹いっぱいなんだけど。
「でも私の夢は完璧なお姫様なので私をロクトのお姫様にしてください! 」
お姫様ってつまり
「嫁にしろってこと? 」
「はい! 」
……落ち着け、まずはソフィーの話を聞こう。
「ソフィーの約束って?」
「あら、忘れたの? あなたと私で小さいときに約束したでしょ?結婚の約束。」
「……俺が三歳ぐらいの時の?」
「ええ。そのために私、この国の三分の一の資産を集めたのよ?」
「……」(絶句)
「安心して。ジャンヌとは話し合ってるわ。だから」
「「私達を幸せにしてね?ロクト!」」
ああ、どうしてこうなった……
お読みいただきありがとうございます!
初めて書いた小説で読みにくさもあるなか最後まで見ていただいて本当にうれしいです!
今回は初めてということで短編で簡素に執筆しましたが、反響が大きければこの話の長編にも挑戦しようと思います。
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追記:続編のことは、活動報告に詳しく書いているのでそちらをご覧ください。