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 和泉伊織はぼんやりとユラユラと流れる川の流れを見つめていた。

(やっぱりか)

 あのグールを目にした時、ついに自分の人生が終わる時がきたのではないかと思った。

 生まれてから既に700年以上が過ぎている。

 いくつかの戦の中で生命を落としたこともあった。だが、その時も数日で甦った。

 なぜ、そんな身体に生まれたのかはわからない。いや、何かきっかけがあって不死の身体になったのかもしれない。だが、それがどこのタイミングなのかはわからない。

 不死というものは、意外にも大変なものだった。

 周りからは奇異な目で見られるし、それを知られてしまうとそこに住み続けることは難しい。

 そして、一番の問題が孤独であることだった。どれほどに親しくなった相手でも、自分はただそれを見送るだけだ。どれほどに愛したところで、別れは必ずやってくる。

 これまで何度も自ら死を願ったこともある。

 そんな時、ある社にいた志乃と出会った。

 志乃は実体を持つ死者の魂であり、その存在ゆえに社に封印されていた。

 一人で寂しそうに暮らす志乃を見て、伊織は一緒に行こうと誘った。封印をといたことが正しいことかどうかはわからない。ただ、一緒にいたいと思ったからだ。

 一条家の存在を伊織は知っていた。

 その一条家の人間に志乃が連れて行かれた時、それが彼女のためになるのなら彼らに任せても良いと思った。

(もともと一人だ。戻っただけだ)

 自分に言い聞かせるように心の中でつぶやく。

「お兄ちゃん」

 その声に振り返ると、そこに志乃の姿があった。以前とは少し雰囲気が変わっているが、それでもそれは志乃に間違いがない。

 少し離れて一人の高校生くらいの少女が立っているのが見えた。

「キミは?」

「一条家の……いえ、『和紗』のお嬢様の使いでその子を送ってきました。私は蓮華千波と申します」

 少女は丁寧に頭を下げた。

「どういうこと?」

「その子があなたと行きたいそうです」

「でも、俺はーー」

「存じています。いえ、私ではなく、お嬢様から聞きました。あなたは永遠を彷徨うもの。そして、その子もそれに近い存在です。大丈夫です。今回のようなことは二度と起こらないでしょう」

「そう、俺のことは知ってたのか」

「お嬢様はこうも言われていました。永遠は永遠ではない。いつか、その時はくると。共に生きるものが必要なときは、あなたもその子もいつでも再びこの地に戻ってこられるようにと」

「ありがとう」

 蓮華千波に頭を下げてから、自らに寄り添うように立つ志乃へと視線を向けた。「一緒に行こうか」

 そう言った伊織の手を黙ったまま志乃が握る。

 この不死の力がいつまで続くのかはわからない。だが、それまでは生き続けてみよう。少なくても今は一人ではないのだから。


   了


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