13
和泉伊織はぼんやりとユラユラと流れる川の流れを見つめていた。
(やっぱりか)
あのグールを目にした時、ついに自分の人生が終わる時がきたのではないかと思った。
生まれてから既に700年以上が過ぎている。
いくつかの戦の中で生命を落としたこともあった。だが、その時も数日で甦った。
なぜ、そんな身体に生まれたのかはわからない。いや、何かきっかけがあって不死の身体になったのかもしれない。だが、それがどこのタイミングなのかはわからない。
不死というものは、意外にも大変なものだった。
周りからは奇異な目で見られるし、それを知られてしまうとそこに住み続けることは難しい。
そして、一番の問題が孤独であることだった。どれほどに親しくなった相手でも、自分はただそれを見送るだけだ。どれほどに愛したところで、別れは必ずやってくる。
これまで何度も自ら死を願ったこともある。
そんな時、ある社にいた志乃と出会った。
志乃は実体を持つ死者の魂であり、その存在ゆえに社に封印されていた。
一人で寂しそうに暮らす志乃を見て、伊織は一緒に行こうと誘った。封印をといたことが正しいことかどうかはわからない。ただ、一緒にいたいと思ったからだ。
一条家の存在を伊織は知っていた。
その一条家の人間に志乃が連れて行かれた時、それが彼女のためになるのなら彼らに任せても良いと思った。
(もともと一人だ。戻っただけだ)
自分に言い聞かせるように心の中でつぶやく。
「お兄ちゃん」
その声に振り返ると、そこに志乃の姿があった。以前とは少し雰囲気が変わっているが、それでもそれは志乃に間違いがない。
少し離れて一人の高校生くらいの少女が立っているのが見えた。
「キミは?」
「一条家の……いえ、『和紗』のお嬢様の使いでその子を送ってきました。私は蓮華千波と申します」
少女は丁寧に頭を下げた。
「どういうこと?」
「その子があなたと行きたいそうです」
「でも、俺はーー」
「存じています。いえ、私ではなく、お嬢様から聞きました。あなたは永遠を彷徨うもの。そして、その子もそれに近い存在です。大丈夫です。今回のようなことは二度と起こらないでしょう」
「そう、俺のことは知ってたのか」
「お嬢様はこうも言われていました。永遠は永遠ではない。いつか、その時はくると。共に生きるものが必要なときは、あなたもその子もいつでも再びこの地に戻ってこられるようにと」
「ありがとう」
蓮華千波に頭を下げてから、自らに寄り添うように立つ志乃へと視線を向けた。「一緒に行こうか」
そう言った伊織の手を黙ったまま志乃が握る。
この不死の力がいつまで続くのかはわからない。だが、それまでは生き続けてみよう。少なくても今は一人ではないのだから。
了
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