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虹のたもと  作者: ミズノ
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ミキト

 虹は、大気中の水滴によって太陽光が反射・散乱されることで発生する光学現象のひとつだ。

 朝顔に水をやるときや、滝のそばで涼んでいるとき、ふっと空高くに現れて、僕らの心を奪い去る。雨上がりの青空をつい見上げてしまうのは、いつも僕らが鮮やかな虹を求めてしまうことの表れだ。

 子供のころ、こんなことを考えたことがある。天駆ける虹の、そのたもとまで歩いていったら、いったい何があるんだろう、と。

「虹色の階段があって、上に登っていけるんだ。高性能の望遠鏡があって、街の隅々まではっきり見えるんだ」

「違うよ、近くまで行くと消えちゃうんだ。虹が消えるのは、誰かが虹の近くを通ってしまったからなんだよ。だから、遠くから静かに眺めているのが一番いいんだ」

「虹のたもとには宝物が埋まってるんだ。虹が消える前にたどり着けば、自分のほしいものが手に入るって言ってた」

 小学校の帰り道、街の空に浮かんだ虹を指差して、皆が口々に自説を並べ立てる。けれど、小学生の足にとって、虹の端っこはあまりにも遠い。

 宿主が何も知らないからこそ、想像の翼は自由に羽ばたける。光学の知識は、ひとときの感心と職業的報酬を引き換えに、僕らから翼を取り上げた。

 けれど、小賢しくなった今になっても、説明ができないことがある。誰にも話したことがない、なぜなら、分別のある大人が聞けば、鼻で笑って流してしまうような出来事だったからだ。

 それは、僕の初めての転校が決まった日のことだった。

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