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真夜中の女子会

私も女子会好きです。美味しい紅茶とお菓子があれば最高です!

(蜂蜜色の氷が溶けるより早く術が溶けたか。ティターニアの力も覚醒してないしアキナは魔力のストックも少ない。力を使い果たしたんだろうな。だが、この魔法に耐えられたのだから上出来だ)

彼女の部屋を見渡せる樹木の間に陣取りことの成り行きを見守る、妖精王カティスの姿が。

チークは満足気にコロコロと王の膝の上を転がり(やっぱりアキナはスゴイ)

(そうだな。現世に術を結ぶには、どうあっても人の力が必要になるからな)

(何も知らないから、アキナの力は借りやすいもんね)

(生まれたばかりの赤子と同じだ。あまり無理をさせるな、影響がでるぞ)

(人は弱いからねぇ、アキナもきっと明日は起きられないだろうなぁ)

(そうだな)何か思案して(アキナに花でも贈ってやれ。昔好きだった青い薔薇をな)

(うん、ほかの子にも手伝って貰ってカティス様のお庭から摘んでくる)

(あぁ、そうしてやれ。精霊守護者のテリトリーには近づくなよ)

(はーーい!)コロコロと楽しそうなチークが姿を消すとカティスも名残惜しそうにその場を離れた。



ダンっと大きな音を立てて私室の扉が開かれ険しい顔をしたエンジュが飛び込んで来た。


「あぁ、良かった。ご無事で。」

言葉短く安堵する彼女にヴィクトール様と顔を見合わせた。

「ヴィクトール様?なぜこちらに?」

戸惑う彼女に何が起きたのか聞いてみると

「夕食の時間なのでお声を掛けたのですが、お返事もなかったので部屋に入ろうとしたら

魔法で結界が張られていました。こんな複雑な術式を発動できる者はこの館にはおりませんので…

アキナ様の身に何か起きたのかと……ヴィクトール様も行方知れずと聞いたもので」


「そ、そうでしたか……」

「すまない。彼女とともに妖精の気まぐれに巻き込まれた。」

何事もなかったかのように答えるヴィクトール様。

「まぁ、そうでしたの……お気の毒に…アキナ様、お変わりありませんか?」

心底気遣ってくれる空気がひしひしと伝わる。

「ご心配をおかけしました。ヴィクトール様もいてくださったので何事もなく」

「よろしゅうございました。妖精の気まぐれに巻き込まれる人間は時々居るのですが、まさかこの館でも起きるなんて…ユリウス様にお伝えして何か対策を練らなければなりませんね。何度もアキナ様を隠されては警護できませんもの」エンジュが少し怒った様に言ってくれたのが嬉しかった。

「その事は、オレから殿下にお伝えしておく。それではアキナ様、失礼します」

「はい、ヴィクトール様。あの、色々とありがとうございました」

エンジュ背を向けて、私にだけ見える様に優しく見つめてくれると、キリッと表情を変え

「外の警護は増やしておきますので安心しておやすみください」と言い残し部屋を後にした。


「遅めの昼餐とはいえもう10時、アキナ様もお疲れでしょう」

「……え??そんなに時間が経っていたのですが……最後にみたときはまだ夕方くらいだったのに」

「妖精の気まぐれに巻き込まれると実際の時間では年単位という事もあるのですよ」

「年単位……直ぐに解放されて本当に良かったです……」あわわとアキナは表情を変えた。

そんな私を見て「お腹は空いてらっしゃいますか?何か軽くご用意しますか?」とエンジュが気遣ってくれた。


「そうですね、昼餐で頂きすぎたのでお腹は空いていません…あ、でもお茶をいただけますか?色々とありすぎて…」

「かしこまりました。では甘いものも少しご用意してまいりますね」控えていたメイドさんに目線を送り

「お茶の支度が整うまで軽く湯浴みなさいますか?」と気遣ってくれた。

「そうですね。お願いします」


浴室には沢山のキャンドルが灯されてとてもロマンチックだ。

先程とは違う薔薇の香りの入浴剤、しゅわしゅわと泡を放ち湯船を桃色に染める。

(ふぅぅ、生き返るー)

髪と身体を洗ってもらい、ゆっくりと湯船に浸かりたいからと1人にしてもらった。

(なんだか疲れたなぁ。こんなに色濃い1日は初めてだよ……ねぇ、ティターニア…お願いだから少し自制してね。妖精である貴方には難しいかもしれないけど、共同生活するなら相手への配慮も忘れない事が大切だよ?)お願いねと返事があるわけでない自分自身に問いかける。

特に何の変化もないか……

(子供こと旦那様のこと、諦めなくちゃいけないのか……大人になったあの子達見たかったなぁ。旦那様とも一緒に年を取りたかった…)

昔から諦める事が多かった人生のせいか、どこか客観視しているからか涙は出なかった。

冷たい女…そう言ったのは、誰だったかしら……


物思いに耽った私を心配してエンジュが呼びに来てくれた

髪を乾かしてもらい、顔とボディの保湿を済ませて部屋へ戻ると紅茶とお菓子が用意されていた。

「いい香り。フルーツとお花、、、かしら。ありがとうエンジュさん」

「エンジュで結構ですよ。アキナ様…」でもと返そうとしたら「そうしてくださいませ」にっこりと笑顔を返された。美人の笑顔は凄いなぁ。

「分かりました。エンジュ。もしよかったら少しお茶に付き合ってもらえますか?」

「はい、私もアキナ様とお話したいと思っておりましたので」

紅茶とお菓子を頂きながら、真夜中の女子会。

この世界の女の子の色々を教えてもらい、私のことも少し話した。


女同士のおしゃべりはとても楽しい。

「アキナ様、お茶のお代わりは?」

「えぇ、お願いします。このお茶とても良い香りですね」

「街で有名なショコラティエがおりまして、彼が花やフルーツをブレンドした人気の紅茶なのです」

「そうなのですか、いつかその方のショコラも頂いてみたいです」

「えぇ、是非是非。私がご案内いたします。他にもたくさんお連れしたいところがありますもの」

お代わりの紅茶をもらい飲み込むタイミングで「あの、伺ってもよろしいでしょうか?」

エンジュが改まった、だけれど何か期待した瞳でぐっと距離を詰めてきた。

「えぇ、何かしら」

「ヴィクトール様と2人でいらした間に何かございまして??」

「え??」

まさか会話が丸聞こえだったの?ちょっとチーク、なんで穴だらけの魔法なの!

「唐突にごめんなさい。私、妖精女王の物語が幼い頃より大好きで何度も読み返していますの。騎士様との悲恋のお話は創作されて何百とあるのですが全部読んでいます」

「え、そんな事になっているので………」

「えぇ、貴族平民問わず女の子に大人気なんですよ。みんな妖精女王に心を寄せておりますの」

「こんなに苦しくて切ない想いを抱えたまま、離れ離れになってしまった2人ですもの。どんな物語も霞んでしまうくらいです」エンジュの熱のこもった視線にたじろぎながら

「そ、そう。いつか私も読んでみたいわ」

「では明日、図書室より何冊かお持ちしますね」

「ありがとう」

「アングラウス家は、帝国創設時よりある古い名家ですから、もしかしてその騎士様の末裔なのではと私思って居まして、伝説的な華客であるアキナ様がこの世界に現れたんですもの…これはもしやと思いまして」

キラキラと瞳を輝かせるエンジュに苦笑しながら私も良くはわからないのだけどと前置きをして

「出会ったばかりだしホントにわからないの。でも、私の心にはティターニアの恋心が住んでいて、ヴィクトール様に会えた事をとても喜んでいたわ」

「まぁ!」少し興奮したエンジュに「でも、何かあった訳ではないしヴィクトール様の名誉にも関わる事だから、誰にも秘密ね」と念を押した。

「私、陰ながらですが応援いたしますわ。物語の続きが間近で見られるなんて、幸せです」

あんなにも落ち着いた完璧美女なエンジュをここまで興奮させるなんて、妖精女王物語恐るべし。

ふと時計に目をやったエンジュが慌てて「まぁもうこんな時間に…アキナ様とのお喋りはとても楽しかったもので…そろそろお休みくださいませ」

ベッドに促され横になる。

カーテンを閉じられ部屋の明かりが消された。


シンと静かになった空間に居るのは、久しぶりだ。

いつもは子どもたちがはしゃぎまわって、こんな静寂に包まれることもなかったから。


うつらうつらと睡魔に襲われて、明日は物語を読んでみようと思ったところで意識を手放した。



事件までたどり着きませんでしたね。

すみません、、、美人と女子会したかったんです。そういう奴なんです。私。。。

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