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月の差すバルコニー

あの後、どのくらい眠ったのだろう。まだ起こされては居ないけれど、なんとなく気分が高揚しているのか目が覚めてしまった。部屋に人の気配は無いので、夜もだいぶ更けたのだろう。

ベッドから抜け出し、まだ月の差すバルコニーからお邸の庭を眺める。


手入れされた木々に元の世界のでは見たことがない青い灯のアンティーク調の街灯、湧き出る噴水はキラキラと月光で輝いている。ファンタジーな映画の一コマを見ている様な気分だ。


「どうした?」不意に背後からの声に驚いた。

「ヴィクトール様、こんな時間ですのにどうされました?」そう言いながらも声が弾んでしまう。

きっと、恋心が会いたかったんだろう。


「カティス様と交代で護衛中だ。この広いバルコニーは少々な」

「そうでしたか。寒くはありませんか?良ければ暖かい飲み物でも」

「いや、大丈夫だ。それより眠れないのか?」

「早寝したいせいか、目が覚めてしまって。良ければ少しお話ししませんか?」

そう言ってバルコニーに設置されている半ドーム状の椅子に腰掛ける。

開口一番ヴィクトールは薔薇のお礼を伝える。

「青薔薇をありがとう。あんなに貴重なものをたくさん貰っては返って申し訳ない」

「いいえ、ずっと私を守ってくださったお礼です。ヴィクトール様が気に入ってくだされば幸いです」

「妖精の青い薔薇。その価値を知らぬからと、、、心配して居るんだが」

「エンジュから多少は聞きました。持ちきれないくらい沢山ありますし、何も持たない私が出来る数少ない事ですから」

そう言って目線を合わせたヴィクトールは酷く顔色が悪い。

どこかピリピリした空気に、何か話題をとヴィクトールが好きそうな……

「そ、そう言えばあの青薔薇は砂糖をまぶして乾燥させてお酒に混ぜるととても美味しいそうですよ」

「そうか、我が家でも作らせてみよう」「あ、あの、、、私も作ってみます。完成した暁には召し上がってくださいますか?」「勿論だ。アキナの手作りだからな。楽しみにしている」

緊張した糸がふっと緩むのを感じた。

今回の事件を知って、ヴィクトールは一分の隙も無いくらい張り詰めていた。

カティスと交代して居る間も、休むのは2時間程度でそれ以降は邸をくまなく巡回していた。

そっとヴィクトールの頬に手を伸ばす。「ずっと険しいお顔をされてますね。大丈夫ですか?」

「すまない。どうにも落ち着かなくてな」言葉少なく不安に思うけれど重ねられた大きな掌の体温を感じるとお互いの不安も溶けてしまう。少し熱の籠もった瞳がアキナをじっと見つめ

「この先も、ずっとアキナを守る。だから心配するな」そう言いながら額にキスをしてくれた。

そっと離れたヴィクトール様に笑みを返す。

「さて、そろそろ部屋へ戻るんだ。冷えてしまう。今日は慌ただしい一日になるから少しでも身体を休めておけ」「それは、ヴィクトール様も同じでは?」と返すとバツの悪そうな表情で「今日が終われば、少し休む。何事もなくお前を送り届けるから安心しろ」手を取られ立ち上がる様に促された。

「私、ちっとも不安になんて思っていませんよ、ヴィクトール様」

「そうか」先程までの空気が消え、優しいヴィクトールの瞳に戻って居た。

部屋へ戻りもう一度ベッドへ潜り込んだ。

少し気持ちを沈めなくちゃ。

恋心は嬉しくて仕方ない様で、胸が高鳴りっぱなしだ。


恋心。貴方も実体化できたら良いのにね。

そうしたら心置きなくヴィクトール様と触れ合えるのに……

私は紫藤秋菜として自我を保っていて、恋心が心の片隅に住んでる。そんな感覚だ。

いつか私たちは一つになれるのかな?ティターニアの半身が見つかれば?

でも、そうしたら…誰の意識が残るんだろう…?


変なこと考えてるわ。だって元々一つじゃない。

元に戻るだけ…それだけよ。


…ホントにそれでいいの?



いよいよ本章が始まる感じです。


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