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300年後に目覚めたら、その日が罰の終わりです

世界の危機が過ぎ、国も安定し始めたある日のこと。

白銀の毛色を持つ愛馬と日課の散歩に出かけた折に、黒蛇を助けた妖精女王のティターニア。


黒蛇が言う、お礼に私の未来を見通す力を分けましょう。

その先見(さきみ)の力で、そう遠くない未来を見たティターニア。

愛しい彼が皇国の末の姫に恋をする。

ティターニアは運命を変えようとするが

先見の通り2人が両想いになったのが我慢できず

黒蛇の得意とする禁呪、人を呪う魔術に手を染めた。


<でもその時、私は知らなかった。この嘘みたいなストーリーが強ち嘘ではなかったこと。

人々から愛された妖精女王の最後を>


国に住む妖精は禁呪を忌み嫌う。全ての妖精にそっぽを向かれたティターニアの

術は発動せずにその罪はティターニアを襲った。

身体中に這う茨の様に巻きつく黒蛇の痣。


妖精としての力を失い、醜く変わり果てたティターニアを不憫に思った

妖精王の3人が旅立ちの儀式を行う。


「全く、バカな子だわティティ。黒蛇なんかに騙されて」

「可愛いティティ。安心しろ。もう苦しまなくて良いんだから」

「そうだ、ティティ。次の世界では幸せにおなり」

「罰が終わるその日にまた、こうして君を迎えるよ」

「みんな、ありがとう。。。世界を汚してごめんなさい。」

もうティターニアの姿を為して居ない黒い毛玉の様なその生き物は

涙を流す。愚かな自分を見捨てずに封印してくれる仲間の優しさに。

「国とあの人を守れるならこの結末に悔いは無いわ。」


静かに目を閉じたティターニアを見て、3人の妖精王は言祝ぎを唱える

空と海と大地の王の名において、可愛いティティを安息の眠りへ

その魂に安寧を

その心に掛かる呪いの鎖を断ち切るために。


淡い光がティターニアを包みゆっくりと周りの精気を取り込んで

結晶を形どり始めた。


影から様子を覗いた黒蛇は

(バカなティティ。オマエの力を逃すものか)

その瞬間、パキンと何かが砕ける音がしてティターニアの体から

抜け出たその光を咥えた黒蛇は、そのまま持ち去って逃げようとした。


空の妖精王は蛇を風の鎖で縛りティターニアの半身を取り戻そうとしたが

蛇は大きく口を開けて光を飲み込んだ。

そのままシュウウウと音を立て、大気に溶けて消えてしまった。


花畑の中にある天蓋付きの豪奢なベッドには、黒く輝く宝石が

残るだけだった。


ティターニアは次の世界に飛べたのか、あの蛇はどうなったのか。

3人の妖精王は彼女の無事を願い、この厄災が目覚めぬよう、己が身をその洞窟に

封じた。いつか戻る彼女の為に精霊守護者を創り黒い宝石をその身に

抱かせて。


人々はティターニアの死を痛く悲しみ、世界が喪に服した。

その後彼女の生きた証にと、改変された後の書物には、愛された妖精女王と騎士の悲恋が伝わるのみ。

300年後に彼女が戻るまで、そう長くない時を指折り数えて。



それが私、紫藤秋菜が目覚める直前に見た夢。

「ようこそ、妖精の華客。私はユリウス・オフィーリア。この国の皇太子です。幼き頃より貴方に憧れていました。どうぞユリウスとお呼びください」


金色の髪と紫色の瞳を持つ、イケメンからの眩い笑顔と夢うつつの頭で咄嗟に出た言葉が

「しょーちゃん、オムツ履いて!ルリはトーストしっかり持って!」なのは、子持ちの性だと思いたい。

毎朝起きた瞬間から繰り広げられる仁義なきお着替え戦争。

そう、いつもの朝ならバタバタと子供たちを送り出す準備をしてるから。


多少面食らったようだが、イケメンは

「妖精の華客のお言葉を理解できぬ事、お許しください。私の言葉でお気を悪くされたのならば、どのようにでもご処分を……」

「あの、いえ、、違うんです、、、いきなりおかしな事を申しあげて、、、

私こそご無礼をお許しください、皇太子殿下」

普段から主人の仕事柄、王室とも関わりのある私は皇太子という単語に身体が反応する。

すぐさま謝罪をしたのが良かったのかイケメンは笑顔を取り戻した。


「いきなりのことで戸惑われたと思います。先ずは場を変えてゆっくりとお話しさせてください」

天蓋付きの豪奢なベッドから起き上がり、周りを見渡すと不釣り合いな花畑と小川を不思議に思う。

「あの、ここは………」と声を掛けると皇太子に目を背けられた。

「も、申し訳ない。その、、、シーツを纏ってはもらえませんか」

目線を落とすと、見慣れたお胸がこんにちは!

慌ててシーツを引き寄せて「、、、お見苦しゅうございました」


着替えを直ぐに用意したいが、ココは皇宮はなく帝国領内の北端にある願いの洞窟だと聞かされた。

「そのお姿のままでは、お労しいので僭越ながら私が抱き上げてお連れいたします」

目を反らしながら、シーツを纏ったアキナに皇太子は羽織っていたコートの様な衣で包みサッと抱き上げた。


「先ずは、近くの私邸に向かいましょう。衣服を用意させます。」

こんな風に抱き上げられたのは、生まれて初めて。でも、重くないかな……

3人の子持ちの私はベスト体重より6キロは太った……イケメンに申し訳ないと思いつつ、

洞窟の入り口には鎧を纏った男性騎士が5、6人控えているし、こんな姿を晒せない。

大人しくしていよう。今のところ悪意や憎悪は感じないし。


抱きかかえられて洞窟から出てみると、知らない匂いだった。

緑も空もあるのに、私が知ってる土地の匂いじゃない。

見知らぬ相手だけれど、一縷の望みで地球の、海外のどこかだったらと願ったんだけど。


「まぁ、いいお天気だこと」不安な思いにもかかわらず、天気が良いだけでお洗濯や子供と散歩

の習慣がある身としては、ついつい呑気な言葉が口から出てしまった。

「オフィーリアは気候に恵まれた常春の国です。気に入っていただけそうですね」

殿下は私に笑顔を向けると、待機していた馬車に乗せ扉を閉めた。


不安になり耳を澄ませると

「先ずは私邸へ向かう。ヴィクトールは私と共に、ダレスは皇宮へ妖精の華客がいらした事を伝え、彼女が不自由なく過ごせる様、手配を頼む。」

「承知いたしました」と手短に告げると馬に乗りかけて行くような音が聞こえた。

その後何か指示を出し馬車に乗り込み合図をだした。


何を話すべきか思案して、大変な事に気づいた。

王族からの挨拶を受けたにもかかわらず、名前すら告げていない。

友好的な態度だから良かったものの、罰せられるくらい無礼なことだと反省し

「皇太子殿下、先程は名前も告げずに申し訳ございません。わたくしアキナシドウと申します。」

「…ではアキナとお呼びしても?」優しい面差しに好奇心を隠しきれない皇太子殿下に

「もちろんです。そして、この様なお計らいありがとう存じます」

座ったまま、頭を下げると、そっと肩に手を置かれ「顔をあげてください。アキナ、貴方の方こそ

驚かれたのでは?」先程、出会って数分で裸を見られた事か!?と邪推してしまい…

「……そ、それは、あの、、、お見苦しいものを」と言葉にすると、皇太子殿下の方が真っ赤になって目を

伏せてしまった……え?あ、異世界に来ちゃったって事かぁ。


私も恥ずかしくて顔を下に向けると、薄紅色のフワフワした生き物?毛玉?が膝の上にちょこんと

乗っていた。驚いて殿下にコレが何か尋ね用にも、未だ顔を背けてブツブツと独り言を。

皇太子って言うくらいだから、結婚して王妃様も側室だって居るだろうに……なんでこんなに初心なの?

(ママってば本当に、おっちょこちょい!でも僕はそんなママが大好きだよ)

薄紅色の毛玉は膝の上でコロコロと楽しそうに転がりながら、好き好きと何度も呟く。

(ねぇ、君は誰?お名前は?)

(僕?僕は大地の妖精名前は無いよ。ママがつけて)

(…?うん、そうなの妖精さんなのね?名前、、、私がつけていいの?)

(ママがいいんだよ、ねぇ早く早く)コロコロと転がる毛玉をそっと手のひらに乗せて

(んーそうねぇ、薄紅色の可愛いモフモフ…コレはもう、、、アレにしか見えないわ…チークでどうかな?)

(わーい、チーク、僕は大地の妖精チーク)

気に入った様でチークはピョコピョコ跳ね回る。

その様子が愛らしくて笑みが溢れる。

そんな私をじっと皇太子殿下が見つめていた。


「殿下。ご覧ください、この子可愛いですね。妖精のチークです。馬車に紛れ込んでしまった様で…」

手の中のチークを殿下に見せようとするも少し悲しそうな顔をした。

「そこに妖精がいるのですか?私には見えないのです。妖精王を除けば、数多にいると聞く妖精の姿を見た事は一度も」

「そうなのですか?」

「えぇ、我が国で私を含め声を聞ける者が数名いる程度で姿を見られる者はおりません。貴方は本当に愛されているのですね」

「愛されている?妖精が見えるからですか?」

「妖精は祝福した者に力を貸してくれますが、自分から話しかけたりはしませんし、まして自由気ままに生きる彼らは縛られるのを何より嫌います。名前を付けろなど決して言いませんから」

「そうなのですか…妖精はこの子以外にもたくさんいるのでしょうか?」

「ええ、空と海と大地、それぞれに妖精王が居て数えきれない程の妖精が居ると言われています」

「まぁ、それは賑やかですわね。素敵なことと思います」

「妖精が多いと言うことは住みやすい環境があり平和だと言うことですからね」

窓に視線を向ける殿下の視線を追う様に景色を見れば、大きな湖が見える。

その水面がキラキラ光り、何かが跳ねている。

(あの子達は水の妖精、ママが戻って嬉しいんだよ。近いうちにきっと会いに来るよ)

(会いに来てくれるの?)

(うん、でもママはまだ魔力も弱いし僕とママの中にいる子くらいしか見えないけどね)

(私の中に居る??)

(ママの中には、片割れがいるの。ティターニア様の心の片割れが)

(あ、その名前なんだか知ってる気がする…)

(ゆっくり思い出して、ぼくたちはいつまでだって待っててあげられるんだから)

ポンと手のひらからチークは消えてしまった。

「妖精は気まぐれですから、またそのうち現れますよ」

会話を聞いていた皇太子殿下はビックリした私に妖精がどういう性質のものか教えてくれた。


「見えて来ました。私の邸です。寛いでくださいね」

窓を覗くと、別荘というには立派なお邸が。

「立派なお邸に気後れいたします」

「そうでしょうか。だいぶ質素な館ですから、お気をつかわずに」

コレで質素なの?皇宮が想像できない……。

それと同時にこの国の文化レベルの高さ財政的にも豊かなことが察せられた。




最近、異世界モノを読みすぎてついつい書きたくなってしまったので

頭ファンタジーモードで必死に書いてます。


さてさてこれから妖精に愛される子持ち主婦が女王になるまでお付き合いくださいまし。

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