097
僕の頬に、痛みがあった。
なぜかサジナエルが、僕の馬乗りをして強く平手打ちをしていた。
ぼんやりとした僕が、ゆっくりと目を覚ます。
「あら、やっと起きたのね」
「おおっ、さすが剣士殿」
サジナエルのキュートなお尻が、僕のお腹に乗っているのを気づくと、急に顔が赤くなった。
隣のベッドでは、いつもどおりにケンコがいた。
元気そうな顔で、とても穏やかだ。そしてその目で僕を見ていた。
「ふぅ、ギリギリでしたな」エールニヒが懐中時計を持っていた。
「ギリギリって?」
「あと一分遅かったら、完全に幽体離脱で戻れませんでしたよ」
「マジか、それはやばかった」思わず冷や汗が流れた。
「ええ、ケンコ様が戻ったのに、お客様がなかなか起きなくて」
「それで頬がこんなに痛いのか」
僕はほほの痛みが、時間差で襲ってきた。赤く腫れるほどサジナエルが……針玉かよ。
「全く、起きなかったら今度はハルバードが唸りを上げるところだったわ」
「それは、遠慮しておく」
背中にあるハルバードの刃が、キラリと光らせていた。
サジナエルは、本気でハルバードを使う気だったらしい。
「団長殿、助かったぞ!本当にありがとうだ」そう言いながらケンコが、僕に抱きついてきた。
だけど、馬足なので思い切り膝蹴りを食らった。
僕は結局、このあとしばらく再び気を失うのだった――
――それから、すこしたって目を覚ます。
顔の頬が赤く腫れ、頭を打った僕は残念な顔になっていた。
今度は僕の体に、ケンコの大きなお尻が乗っていた。本日、二度目のマウントポジションだ。
このケンコの圧力は、天使のサジナエル以上に重い。
ベッドに寝かせる建前上、彼女は人型に戻っていた。
「ああっ、すまない団長殿」
「ケンコは力があるから、脚力が」
「そういうのは慣れていないので……すまん」
「まあ、徐々に分かればいいよ。それよりも窓の方が、明るくないか?」
すると、いつの間にか山の切れ目から光が漏れた。
そう、いつの間にか朝になっていた。
「朝か……どうりで眠いわけだ」
いろいろあった夜で、ほとんど寝むれなかった僕は、どっと眠気が襲ってきた。
それは夜通し戦ってきた、サジナエルもケンコも同じだった。
そのまま、僕ら三人は眠りについた。




