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学校と目の鼻の先、その家はあった。
何度か亘と一緒に帰ったが、いつも駅近くで分かれていた。
まさか、果穂の家が学校から徒歩一分圏内だったとは。
立派ではないが、寂れてもいない普通の鉄筋住宅。
インターホンを押したのは神崎だ。いつもひきこもりだけど、意外と積極的だ。
まもなくして、亘の母親らしき人が出てきた。
なにか言われることもなく、母親は僕らをリビングに通してくれた。
「あら、美幸ちゃん。果穂がお世話になっているわ」
「いえ、おばさま。お久しぶりです」
「その子は……誰ですか?」
「初めまして、鈴木 浩生です」
僕は、礼儀正しく挨拶をした。
「あらあら、そうなの。果穂が言っていた鈴木君は、あなたなのね」
「はい……あの果穂さんは?」
「果穂はね、ちょっと起こしてくるわ」
「あ、いえ……あの話はありましたか?」
「話?なんのことですか?」
母親が首をひねっていた。
「今日実は、果穂を夏祭りに誘おうと思ったのだけど」
「あら、そうなの?」
母親は、まるで初耳というようなリアクションを見せた。
「はい、果穂は両親と話すといって昨日僕に連絡をするって」
「ああっ、浩生君!」
声を上げた神崎。
リビングには、パステルカラーのパジャマ姿の果穂が出て来た。
「果穂っ、来たよ!」
「ええっ、でも……私は」
「果穂、何か話そうとしたでしょ。昨日」
母親が出てきて、亘は照れ臭そうにしていた。
「えと……その夏祭り……今日」
「今日の夏祭りに行きたいの、果穂?」
「う……うん」
「あら、それならそうと言ってくれればいいのに。浴衣もちゃんと用意するわ」
「行っていいの?」
「当たり前でしょ、行きたいのでしょ。わざわざ友達が誘ってくれたのだから」
「えっ、ありがとう」
亘は、恥ずかしそうな顔を見せていた。
そして、急に泣き出しそうな顔に変わった。
「よかったな、果穂」僕は亘の頭を優しく撫でた。
「うん、ありがとう。浩生……美幸」
「えと……まあ、これで三人そろったわね」
「そうだね。心配したよ、果穂」
僕と神崎は、単純に喜んだ。
最悪、喧嘩しても説得するつもりで来たので、余りにも拍子抜けでもあった。
だけどそれならば、昨日のことを単純に疑問に持つ。
「それにしても、昨日連絡入れなかったのは?」
「えと、恥ずかしかったからです」
「恥ずかしかった……どうして?」
「な、何でもないっ」なぜか急に果穂は、僕に対して怒り出した。
顔を真っ赤にして、リビングから出て行ったのだった。
僕と神崎と、亘の母親の三人は理解できず、その場に取り残されたのだった――




