081
山小屋に入ると、僕らは吹雪から解放された。
入る前はそれほど感じなかったが、かなり広い山小屋だ。
僕ら六人は、山小屋の暖かさが身にしみていた。
レンガで作られた暖炉の前に、みんなが集まろうとする。
暖炉のあるロビーでスマホを確認、WIFIが使えるようだ。
最近は、WIFIを使える場所を確認する癖がついていた。まあ、大事なことだしな。
「ふうっ、暖かい」
「はい、あったかいです」
ケンコとチャマは、すぐに暖炉のそばに移動していた。
セレニエルも暖炉のそばで、スライムの如く溶けてだらけていた。
「全くだらしないな」
「セレニエルも、情けないわね」ラジノとサジナエルが侮蔑する。
そんな中、僕はなぜかカウンターで話をする。
「おいでやす、ナジェフ小屋六号へようこそどす~」
そこにいたのは髪の色は黒くて長いけど、耳が尖って、白い肌の若い女。
長袖の緑色のブラウスに、黄色のロングスカートを着ていた。
ただ、発音がちょっと関西弁というより京都弁のようなアクセントだ。
「すまないが、今日はここで暖を取りたい。吹雪も強くなったし」
「分かりました、お食事付きどすか?それとも素泊まりどすか?」
「どうする?」僕は近くにいたラジノに聞いた。
「くそっ、何者だ?」
ラジノが急に身構え、腰にぶら下げた剣の柄に手を添えた。
そこには、一人の男。異様な姿で、フラフラとこっちに近づいていた。
「気をつけろ、そいつおかしい」
よく見ると、その男はプロレスラーのようなマスクをつけていた。
筋肉質の体で、ジャージみたいなものを着ていた。肌は残念ながら露出されていない。
視線を感じた僕は、立ち上がるとその人間がカウンターの方を向いていた。
「なんだ?こいつは?」
「お前か?」マスク越しに僕を見てくる大男。
僕は身構えて、スマホに手をかざす。
「お客さん、どうしたんどす?」
「ここに誘拐に協力した精霊使いがいると聞いたのだが」
「精霊使い?僕のパーティにはいない」
「本当か?」
マスク男は、じっと僕を睨む。
プロレスラーのようなガタイのいい男が、僕に迫ってきた。
すぐさまラジノが剣を抜いた。
「こいつ、悪魔じゃないか?」
そう言いながらラジノは、急いで僕の前に割り込む。
悪魔と聞いて、僕はスカーラでの話を思い出した。
僕は石板の騎士団、団長だ。
ラジノの言葉に、暖房にいたケンコも急いで駆けつけた。
「なるほど、そうか。団長殿を狙いに来たのか、許せん。私が相手になる」
「邪魔をするのか?やるのなら……」腕を振り上げて、僕を殴ろうとする大男。
「しまった」そう言いながらも、僕は右手で顔をカバーしようとした。
そして、ボゴッと大きな音を立てて僕の前で一人の人間が倒された。
「いってえなっ!」僕の目の前で、顔を押さえて剣を手放したラジノ。
そうだった、僕がラジノをリーダー設定しているからラジノが身代わりになった。
鼻血を出したまま大男を、睨んでいるラジノ。
「すごいわ、これが噂の男壁ね」
「ラジノさん、手当しますっ!」
サジナエルが、興味本位で感心する。
すぐさま神官のセレニエルが、倒れたラジノに駆け寄る。
ラジノが倒された恐怖で、一瞬僕の顔が青くなる。
「くそっ、これはやるしかないか」
ケンコと、サジナエルも僕の前に立つ。
流石にチャマの魔法は、属性火なので室内では使いにくいか。
セレニエルは、倒れたラジノの看病をしていた。
敵である大男も、腕をブルブル振り回している。
「おやおや、何をしているのです?」黒髪の女店員が、カウンターからゆっくり出てきた。
肩には、ピンクの小さなゾウのようなものを乗せていた。
大きさはリスぐらいの小動物だ。
「それは、まさか……」
「だとしたら、どうします?」
黒髪の女店員が言うと次の瞬間、ゾウの耳が羽のように飛び上がった。
「やはりそうか」マスク男が、僕にさらに近づいてくる。
格闘近接は得意そうな太った男は、腕をブンブン振り回す。
だけど、女店員はにやりと笑っていた。
次の瞬間、ピンクのゾウは笛のようなものを吹いていた。
その音は、とても心地よい子守唄のようなもの。
女店員は、手にお椀のようなものを持って音を反響させていた。
僕は、なんだか急にまぶたが重くなった。
「なんだ……新手……なのか?」
僕は気がついたら、目の前が真っ暗になっていた。




