008
それからしばらくして僕は目を覚ました。
目を覚ますと、まず視界が眩しかった。
光の球が、目の前でゆらゆらと揺れていた。
屋外だろうか、風をはっきりと感じた。
体を起こすと、僕は首をかしげた。そして僕は驚いた。
「どこだよ、ここ?」
当然叫んだ。僕の目の前には、草原が広がっていた。
普段の生活なら、見ることはできない草原の地平線まで見えた。
広がる草原に見覚えがない。
田舎の新潟にどこか似た光景だ。
だけど、それよりも何よりも目の前がチカチカした。
「なんだ、この光の玉は?」
「光の玉じゃないのじゃ」
そう言いながら、光の玉から甲高い声が聞こえた。よく聞くと、光の玉の正体は小さな人形。
僕の拳ほどの小さな女の子が、全身を光らせていた。
でも、どこかで見たことのある女の子。
「ええっ、これってまさかニクシー?」
「そうじゃ、知っておるのか。『ユーベル ファンタジア』のことを」
ニクシー、それは世界に住む光の精霊だ。
全身が光り輝いていて、透明な羽根を持ち空が飛べる女の子。
ゲームの進行をサポートする役目を担っていた。
「にしても変な喋り方。ゲーム内だと、声優さんが当てられていたと思ったが声が違うな」
「うるさいのじゃ。その証拠に、ホンモノがここにおる」
小さな胸を張った、光の玉の小さな女の子。
「でも、ここはやっぱり?」
「ユーベル ファンタジアの世界じゃ」
「ということは、これってもしかして異世界転送系?」
「ああ、そのようじゃな。つまり……」
「つまり?」
「そこにおるじゃろう」
ニクシーが指差すと、そこにはこちらに気づいたのか二つの人影が見えた。
それは人型だけど、緑色の肌をしていた。
二足歩行で、猫背、おまけにナイフのようなものを持っている。
「ゲゲッ、あれはモンスター」
「正しくはゴブリンじゃな、世界でも最弱レベルのモンスター」
「ああ、知っている」
緑肌の亜人が、僕を見つけるなり猛ダッシュしてきた。
手に、刃物を持って襲いかかってきた。
「じゃなって、どうやって戦う?こういった異世界転生モノなら……」
「お主、運動は得意か?」
「普通だと思う」
「頭はいいか?」
「普通だと思う」
「なにか超能力を持っているか?」
「そんなものない」
「だったら……」
「だったら?」
「逃げるのじゃ」
そう言いながらニクシーが僕を置いて、一目散に逃げ出した。
「ニクシー、置いていくなっ!」
一瞬にして血の気が引いた僕は、逃げ出すニクシー叫んだ。
すぐ後ろの緑肌のゴブリンが迫っていたので、僕は必死に走り出していた。