006
郊外にあるのは、一軒のシェアハウス。
そこには、四人の学生が暮らしていた。
言ってしまえば、地方出身者が集まるシェアハウスだ。
リビングを抜け、僕は自分の部屋のドアではなく一つ前のドアを開けた。
それはシェアハウスの美幸の部屋だ。
そこには、白いパジャマ姿の美幸がいた。
「おかえりっ」表情がどこか嬉しそうだ。
「ただいま」
「今日は早いわね、サークルの飲み会あったんでしょ」
「そうだな」そう言いながら、僕は美幸の前に買ってきたデパートのビニール袋を前に突き出した。
それを見て、美幸が驚いた顔を見せた。
「あれ、才賀先輩は?」
「二人共、出かけて行ったよ」
「あっちもカップルだしな」
「まあ……そうよね。でもカナちんにはちゃんとプレゼントもらったよ、前日に」
カナちんこそ『米村 加奈子』とはシェアハウスで美幸と仲のいい女子。
大阪からこっちに来た関西系の女子で、僕らとは一個下だ。
加奈子は僕らと違って、近くにある別の短大に通う。
このシェアハウスで、さらに別の大学に通う男子とカップルになったわけだが。
「それより、誕生日プレゼントだろ」
「うん」
美幸は、じっと僕が差し出したデパートの袋に恐る恐る手を伸ばす。
「これ本当に欲しかったのよ、ありがとう」
「よかった、彼氏として……」
「でも、あたしの誕生日ってことは……わかるでしょ」
「そうだな、その話は……中でしたい」
「うん」美幸が僕を部屋に通す。
「じゃあ、二十歳を祝って飲み会ね。あたし、ビール飲みたかったんだ。
浩生は八月生まれだから、もう飲んだのでしょ?」
「お、おう」
「うまかったの?」
「いや、苦い」嬉しそうな美幸に、僕は首を横に振っていた。