039
僕らの前にはアモンが出てきた。
フクロウ頭の悪魔は、相変わらず腕を組んで余裕の表情。
その表情は、やはり読みとることができない。
その顔だって、本当の顔ではないのだろうか。
「ここまできたあなた方は、本当に素晴らしい」
「何が素晴らしいんだ?」ラジノが毒づく。
「次々と興味が沸くのだよ、君たちの行動は」
「どんな行動だよ?」剣を抜いて構えるラジノ。
「いままで、この砦でやってきた全ての事象だ」
「適当な事ばっかり言って」言葉と同時にチャマを置いて、ラジノが即座に斬りかかる。
それでもアモンは、いとも容易く避けた。
直線的な剣に、アモンでなくてもよけられそうな大振りの太刀筋だ。
「そんな君らには、新しい設問を用意せねばならないな」
「設問?」その言葉に反応したのは僕だ。
顔を見上げた僕に、アモンは首をプルプル振っていた。
だけど表情は全く変わらない。
「あなたは、何をやっているんだ?」
「何って、ここの砦の主ですよ」
「その割には、まるで僕らを挑発しているかのようだ」
「そうかもしれませんね」
「ならば、君の本当の目的がわからないのだが」
僕の言葉に、笑い声が聞こえた。ケラケラと笑う声だ。
その声は、明らかにフクロウ頭の口が動いているものではない。別のところから聞こえてきた。
「なるほど、なるほど、君は聡明だね。そうか、そうだよね。
随分とわしは、露骨なことをしていたようだ。
なら、そろそろ熱いことをしようじゃないか」
次の瞬間、アモンの背中の方で音が聞こえた。
何かが崩れる音だ。
「う、後ろ」
「げっ、崩れている」
後ろの方の床が抜けていた。床がはっきり崩れているのがわかった。
「さあ、逃げよう。下に落ちれば死ぬよ」高笑いのアモン。
「急げっ!」
「うん」だけど僕は普通の大学生だ。決して恵まれた運動神経を持ち合わせていない。
「後ろを振り返るな、走れっ!」
ラジノが仕切る。だけど崩れる足場が、僕のすぐ後ろに迫っていた。
「ダメだっ、間に合わないっ!」
僕はもがいた。もがいて足を一生懸命動かした。
だけど、最後は間に合わなかった。
僕の出した前足には、足場がなかった。
「浩生っ!」前にいたラジノが僕に叫んだ。
そして、僕の体はセレニエルと一緒に奈落へと落ちていくのだった。




