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僕がつくる異世界の騎士団  作者: 葉月 優奈
一話:世界の災いと僕の騎士団
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010

その血は、赤くない。緑色の血だ。

生臭い血の匂いは、人間のものと変わらない。

そして、目を見開いた僕の前にはゴブリンが頭を槍に貫通されて横たわっていた。


(な、なんなんだ)

喋ったはずが、声にならない。

ゴブリンが持っていたナイフが、草原に突き刺さった。


「無事か?」背中の方から声が聞こえた。

声と同時に、背中の方から馬の(ひずめ)の音が聞こえてきた。

僕は恐る恐る振り返ると、そこにいたのは馬。


「馬?」

だけど、すぐに馬ではないことに気づいた。

それは上半身が人間の、しかも女性だった。

緑髪が長いおさげの髪、三つ編みに編まれていた。全身を鉄の重そうな鎧が覆っていた。

茶色の馬の大きな毛並みと、美人で華奢な女性の体とのアンバランス感。


「人……いや、違う。ケンタウロス?」

頭に浮かんだのが、ケンタウロスだ。

人間の上半身は、鉄の鎧を着ていて長いポニーテールをなびかせて僕の頭の上を飛び越えて前に立つ。

その姿は、凛としていて頼もしかった。

『ユーベル ファンタジア』のゲーム内なら、ケンタウロスという空想上の生物も存在していた。


「無事か、少年?」

「まさか、マジでケンタウロス?」

「村のものでは……むっ」

少し遅れて近づいてきたゴブリン。

ナイフを持って、こちらに向かってくる。


「クソッ、まだ残っていたとは……」

ケンタウロスの女は、さっきのゴブリンの頭を射抜いた槍を引っこ抜く。

僕のシャツには、抜いて吹き出たゴブリンの緑色の血が飛び散っていた。

腰を抜かしたのか、慌ててゴブリンから離れていく。

その顔は、とても落ち着いていた。

横顔でもはっきりと凛とした美人の顔をのぞかせた。


「逃がさんぞ、今度こそ……」

ゴブリンはこちらを見た……いや僕はもう相手にしていない。

ケンタウロスの女の姿を睨んでいたゴブリン。見て危機感を感じ、背を向けていた。

だけど女は、突風のように素早かった。


「仕留めるっ!」

逃走するゴブリンを見るなり、すぐに槍を水平に向けた。

やり投げの選手の如く綺麗に槍を投げ、逃げ出したゴブリンの背中に命中した。


背中から太い槍が体を貫き、ゴブリンはその場に倒れていた。一撃だ。

僕はその光景を呆然と見ていた。


「これは……」

「怪我はないか?」

倒れたゴブリンに近づき、投げた槍を回収してケンタウロスの女が振り返る。

とても綺麗な緑色の髪と、やはり綺麗な顔立ち。目は大きく、青い。


「ああ、あんたは本当にケンタウロスなのか?」

「そうだ。そういえば見ない格好だな、旅のものか?」

「え、えと……」

僕が喋ろうとしたとき、さっきまで姿を隠していた光の玉が突如出てきた。


「ニクシー……様」

「おお、お主はケンタウロスじゃな。こんな何もない村に珍しい」

「しかし、本当に世界の導きの光がこのようなところにいるとはすごいです」

ケンタウロスの女は、感動した様子で光の玉を見ている。


「そうか、そうか、崇めたてよ。わらわこそが世界の災いを救う光なり。

希望の光こそ、このわらわニクシーなのだ」

「ははっ、ニクシー様。それでこの者が?」

「彼こそが、災いを救う石板の騎士団(ストーレオブラウンド)団長(プレイヤー)なのだ」

「おお、まさにそうでしたか。風の噂で聞いておりましたが、本当にいたとは、なんということだ」

ニクシーに言われ、ケンタウロスの女がゆっくりと上半身を僕の前に向けてきた。


「あなたが団長殿ですね」

「いきなりそんなことを言われても……困る」

僕にはそんな実態はない。

だけど、ケンタウロスの女は礼儀正しく僕を見てきた。


「それがしはケンコと皆に呼ばれています、それがしを自由にお使い下さいませ」

穏やかな笑顔を浮かべて言ってくる、ケンコ。

凛としていた美女は、この瞬間に女性らしい柔らかな笑顔を見せていた。

そして、僕は「ええっ!」と大きな声をあげてしまったのだ。



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