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001
――闇が広がる……どこまでも遠く
世界の果てまでも広がる闇
その中にかすかな光。
光が囁く
この世界に三つの災いが起きている
三つの災いは世界を苦しめる
だが心配しないで欲しい
我らには古の騎士団がついている
『石板の騎士団』と呼ばれた最強の騎士団が
彼らが三つの災いを退けるのだ――
災い……ねえ、頭の中でつぶやく。
「起きて……起きて」
女の声が聞こえた。広がる闇から、強い光が差し込む。
差し込まれた光は、僕を覚ました。
「あれ?」
光の先に見えたのは大学の教室。段々に並ぶ椅子で、中央の下に教壇があった。
灰色の長袖のシャツを着た僕は、周囲を見回す。
隣にいる髪の長い女が見えた。長い花柄のカーディガンを羽織った女。
「浩生、起きて。さされているから」
「さされて……」
僕が女の言葉を理解するのに数秒かかった。
下にある教壇を見ると、サラリーマン風の頭の残念な中年男性教師が僕を睨んでいた。
「早く答えなさい。それとも眠っているからわからないのか?」
教壇の教師が、怒りにも似た声に変わっていた。