《兎の話》始まりはそう遠くないむかし
拙い文ですが楽しんでいただければ幸いです
シャグリラ大陸最大の王国ミリネリア。周囲を国土の半分ばかりの小国達に囲まれている。
王都サリバイトは、シュトラゼ王城を中心にして円上に広がる大きな都だ。その王都サリバイトを筆頭に、、国中に様々な町や村があり、そこでは多くの者たちが生活している。
大まかな分け方といえば、最も数の多い人間、加えて身体能力の高い獣人族や、魔法を得意とする妖人族。さらに細かく言えば、幽鬼族や魚人族など様々な種族があるが、ここは省略させて頂く。
種族関連でミリネリア王国の特徴として挙げられるのは、王族が竜人族のみで成り立っている事だろうか。最も数が少なく、シャグリラ大陸にも数十しかいないと言われている竜人族が立ち上げた王国がミリネリアであり、彼らがその圧倒的な力をもってして、ミリネリア王国を起ち上げたという事実は人々の記憶に新しい。
ミリネリア王国とは、かれこれ三十年ばかり前に出来たばかりの新王国なのだ。
建国したのは、年若き才能溢れた一人の竜人である。
シュバルツという名の彼のドラゴンは、その素晴らしいカリスマ性で数多の人々を従え勢力を伸ばし、旧国軍と決着をつける戦争となった、先の【ミリネリア大戦】にて勝利者となった。
そしてここに、新王国ミリネリアと新王シュバルツが誕生した。
革命軍のリーダーとしてのその指導力は王となった後も遺憾無く発揮され、戦争で疲弊していた国内は確かに回復してきた。
彼は普段を人間族と大差ない姿で過ごしていると言う。なんでも、竜の姿で日常生活を送るのは面倒だとか。
しかしその頭部の左右には、竜の証たる雄々しい二つの角が存在を主張している。
それを目にする度に、臣下達は畏怖の念を抱く。我らが王のその本性は、美しき黄金色の巨大なドラゴンだとという事に誇りを抱くのだ。
しかし、シュバルツ王の古くからの友人達は一人堂々と立つ彼を少し寂しげな感情も混ぜて見守る。
かつてシュバルツ王の片腕として名を轟かせた黒兎の獣人の姿は今はいない。
彼が姿を消したのは、ミリネリア大戦直後の事であった。
その行方は、誰も知らない。
次から物語が始まります。
ヒューとイルダの登場です