一子が言うことを聞きません。
漫画やらゲーム機やらで散らばった部屋の中、ノブ夫は大の字で寝転がっていた。
隣で一子が兄のテレビを借り一人でバトルゲームをしている。
「ぶぇっくしょーーーいッ!!!」
ノブ夫が盛大なクシャミをすると、一子が嫌そうな顔をして振り向く。
「うっさい」
「静かにクシャミできますか…うわ、冷たっ!唾、散ってきた!」
「上向いてするからだよ。きったないの~」
一子は嘲笑った。
「寝ながら奥義、唾め返し」
「うまくないよ、お兄ちゃん」
「なぁ、そこのティッシュ取って」
ノブ夫が一子のそばのミニテーブル上にあるティッシュボックスを指差す。
「やだ。自分で取れば?」
「頼む。奥義のダメージがまだ」
「ぐうたら」
言いつつ、一子はティッシュボックスに手を伸ばす。
が、手に取ったまま、動かない。
「一子ちゃん?」
「ハイ、取った」
「いや、取った、じゃなくて、こっちによこしてくれない?」
「ほらよ」
一子はティッシュボックスをノブ夫の顔面に思いきり投げつけた。見事ヒット。
「いってぇわ!! 誰が投げろっつった!」
「アンタがよこせっつったんじゃん」
「いや、だからって、投げてよこすなや!」
「うっさいよ。なら自分で取れや」
凄みのある目で妹に睨まれると、ノブ夫は何も言えなくなった。