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卒アル大作戦

大樹視点になります。

 誘われた?


 さっきの恋愛話にも食いついていたしなんとなく恋愛好きそうな感じはしていたけどさ。


 女の子から誘われる事はそんなに回数は無いのだが初めてでは無かった。


 据え膳食わぬはナンチャラ。よっぽどでない限り断る事は無かった大樹は今、愛子の部屋でお茶を飲みながらTVを見ていた。


 しかしTVってつまらないな。普段TVなど見なくなっていた大樹はそう思う。ドラマにしろバラエティにしろつまらない物が多すぎる。PCでアニメを見るだけで十分だった。


 それにしてもまさかこうなるとは思ってもみなかった。送っていってあの台詞って、やっぱりソウイウ事だよね?


 女の子には慣れている大樹は緊張は少ない。多少はあるけど、いつもの良くあるシュチュエーションだった。違うのはホテルじゃない事くらいか。普段は16~22歳くらいの子しか相手にしないので、高校生とはもちろんホテルだし他の1人暮らししている子とも初対面でこういう展開に持っていくためホテルを使う事になる。


 女の子の部屋っていつ以来だろう、答えはすぐ見つかったのだがそれを考える事をやめた。


 違う事を考えたかったので愛子に視線を向ける。うん、可愛いよね。3ヶ月も彼氏いないのか。よくわかんないけど系統でいうとガーリー系っていうの?こういう子。まだまだ高校生で十分いける愛子を見ながら考える。高校の時の制服とかこっちに持ってきてないかな……?


 「これどうなんですかねぇ」


 TVを指差して愛子がこちらを向いた。画面には恋愛バラエティーが映し出されている。全然見てなかったので当たり障りない返事をしておく。


 「ないよねぇ?」


 「ないですよねぇ」


 うまく行ったみたいだ。


 下らない30分番組がようやく終わってくれてニュースになった。ニュースもそんなに興味ないけど。




 「ねーねー、卒アルってある?」


 女子校だと見ごたえあるなぁ。そう思いながら聞いてみた。愛子は本棚をガサゴソしだした。


 「どうぞ」


 卒業アルバムを差し出しながら笑顔の愛子が床に座った。えーとかやだーとか言われなくて良かった。


 ベッドを背もたれにしている愛子の隣へわざわざ移動をした。


 「一緒に見よ?」


 首をかしげながら少し可愛らしく言う。これで愛子のそばに座る口実ができた。


 女の子らしいいい匂いに惹かれつつもアルバムを開いた。教師紹介で愛子が何か言おうとしていたがすぐに飛ばした。生徒全員が写っている集合写真もすぐに飛ばす。ウォーリーを探せごっことか苦痛でしかない。そんなのより早く可愛い子のアップ写真が見たいのだ。


 残念ながら共学だったクラス写真に見入る。


 1組から順に女の子だけ見ていく。うん、いいねぇ。


 3組には愛子がいた。


 「制服似合うね」


 自分は今きっと最高の笑顔をしているに違いない。あんまりこの制服好きじゃないんですよーと愛子の声がする。


 失礼にならないように3組に一番時間を費やしながら、他のクラスの可愛い子のチェックを終えた。


 「可愛い子、いました?」


 さすがに集中しすぎていただろうか。バレていたようだった。少し焦りながらページを戻す。


 「1組の章子ちゃんでしょ、それに4組の由佳里ちゃん、それから5組の奈央ちゃんに、あとは7組の琴音ちゃん」


 ページをめくりながら迷わず次々と指を指していく。隣で愛子が感嘆とも呆れたとも聞こえる声をあげた。


 「すごい速さですね……覚えたんですか?」


 しまった。さすがに勢いが良すぎたか。できるだけポーカーフェイスを装いつつ予定していた台詞を吐いた。


 「でも、やっぱり愛子ちゃんかなぁ」


 名前で呼ばれた愛子は少し驚きながらも、お世辞はいいですよーと言い放った。


 わざわざ他の4人を名前で呼んで複線を張ったのだ。愛子を名前で呼ぶにはいいタイミングだったと思う。


 「いや、お世辞じゃないよー。可愛いっていうか好みっていうか」


 一番可愛いと言うのは嘘くさい。でも一番好みだと言うのはありえない話ではない。普段からよく使う都合のいい魔法の言葉だった。


 「またぁ……」


 愛子は少し照れながらアルバムに目をやった。まあこんな感じかな。心の中で大樹は思った。


 その後、後ろの方の体育祭だとか文化祭だとかの写真を見ながら愛子が説明をしてくれている。もちろん適当に聞き流す。


 時々愛子と肩が触れ合う。行動に出るタイミングを伺い始めた。


 「愛子ちゃん、いい匂いだね」


 鼻をスンスンわざと鳴らしながらさらに近づいた。


 「え?そうですか?」


 愛子は自分の手を鼻の所へ持っていき匂いを嗅ぎつつ、香水ですかねぇ?と言う。


 「髪……かなぁ?」


 大樹は愛子の頭に顔を寄せてクンクンする。


 「あー、髪綺麗だねぇ」


 触ってもいい?と遠慮がちに言いながら返事を待たずにスキンシップを始めた。髪綺麗だねとはよく使うのだけれど、違いなど全くわからない。とりあえずストレートに近い髪の子には全員に言う事にしていた。髪がクルクルしている子には、フワフワでいいねとか言って触るのだ。


 「結構痛んでるとこもありますよ?」


 そんな返事にも慣れている。そんな事ないよ、綺麗だよーと髪を触る事から頭を撫でる事へとシフトチェンジした。


 「頭撫でられてるっ」


 無言で頭を撫で続けるその甘い雰囲気に耐えられなくなった子は冗談めかしてそんな事をいう。嫌がる子はもっとはっきりと拒否感を示すはずだ。


 「なんで?」


 その行為に理由が欲しくなる女の子はこう言う。


 「いいこだから」


 目を見つめながら繰り返し撫でる。愛子の瞳が少し変化したのを見計らって決めに行く。


 「愛子ちゃん可愛いから」


 頭からほっぺたへと手を移動させる。いけるかな?ゆっくりと顔を愛子に近づけていく。


 愛子の顔まであと30cm。


 20cm。


 10cm。



 今にも触れ合いそうな距離で見詰め合うと、愛子はゆっくり瞼を閉じた。


数少ないコメディ?回です。

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