第五楽譜:少女の為に
何とか町にたどり着いたロクス…しかしサーナは魔力を使い果たし死を待つだけ…ロクスが取った行動は!?
とりあえず、アシュカーとカナメは詫びてくれた
問題は戦闘馬鹿と普通の馬鹿だ
「…てめえら…謝罪の言葉位言えねえのか…」
俺は怒りで拳を強く握る、思いきり睨む
「うは!ロークス!それじゃあもてないぜ!」
お前はうるさい。黙ってろ
「……貴様も同じ事をしただろうが?…ロクス」
クロが読んでいた文庫(?)本から目をあげ、ロクスを睨んだ
ロクスもクロを睨みかえした
「同じ事だと?」
「……ああ」
「俺は何をしたんだ?」
「……鉱山に…俺と…ピエールを置き去りにした」
クロにそう言われて、ロクスはたじろいだ
「な…確かに…」
俺が動揺するとクロは強い視線で睨みながら続けた
「…貴様がしたことと…俺達がしたこと…何か違いがあるの…か?」
クロの言葉にロクスは落ち込む
―――確かにそうだ―――
「…それは…その…悪かった…」
タジタジである。クロは分かればいい。と言うような感じで鼻を鳴らすと本に目を戻した
「…はあ…はあ…」
サーナは肩で息をしている。
体は寒いのに、汗が止まらない…これは魔力を消耗しすぎた為だ
息が途切れとても苦しい
「ちょっと…サーナ、あんた大丈夫なの!?」
カナメがサーナに駆け寄り体を揺すった
「だ…大丈…夫…です…や、休めば…よく…なります」
魔力は生命の源、これがカラになると人は死ぬ
サーナの状態を見るとそのカラになる一歩手前みたいだ
「サーナ…あんた…凄い熱じゃない!」
カナメはサーナの額に手を当ててすぐ引っ込めた、熱すぎだ
「アシュカー!早く部屋に運びましょう!」
サーナをアシュカーは手早く抱き上げ、部屋に走る。カナメは先回りし、部屋のドアを開けた
すぐさまサーナをベッドに寝かせ、睡眠魔法をかけた
「……ロクス!」
サーナが眠るのを見て、部屋のドアを手荒く開け、ロクスがいる場所までズンズンと進む
「この…大馬鹿!」
カナメはロクスの胸ぐらを掴み、手を振り上げロクスの横っ面を思いきりひっぱたいた
パァーンと軽快な音がなり、ロクスは唖然とした顔でカナメを見つめた
「なんであんなになるまで魔力を使わせたの!サーナ、死んじゃうかもしれないんだよ!?どうして…どうして止めなかったの…」
カナメは胸ぐらを掴んだまま、くずれおちて泣き出した。
俺は顔面蒼白になり、急いでサーナの部屋に駆け込んだ
「ハア…ハア…!」
苦しそうに呼吸するサーナ、顔から血の気が引いていて、サーナの白い肌はもっと白くなっていた
「…嘘…だろ…」
俺はサーナのベッドに近寄りサーナの手を握る
氷のように冷たい
「サーナ…なんで…魔法を唱え続けたんだ…」
俺はサーナの手を額に当てた。小さな少女の綺麗な手は痙攣していた
俺は涙を隠す為にしたを向いた
その時、サーナが何かを呟いた
「!」
俺はサーナの顔を見たが目が覚めた訳ではなく。まだ苦しそうに息をしていた
口が微妙に動いている。俺はサーナの口許に耳を近付けた
「…ロクス…ロクス…」
うわ言で俺の名前を呼んでいた
「…サーナ…」
俺はサーナの手を話すと立ち上がり、剣を背負って宿を出た
「ちょっと!どこに行くの!ロクス!」
俺はカナメの問いには答えなかった