第四楽譜:おいてけぼり
「…ガッデム!」
訳のわからないセリフを吐いて目覚めた俺、鉱山から運び出された事はわかった
「ロクス!!」
サーナが首にしがみついた、柔らかい、少女の匂いが俺をつつんだ
「…さ、サーナ?」
痛みに顔をしかめながら、サーナの頭を撫でる
「もう…目が覚めないかと…思った…」
声が震えている、俺は安心させるようにサーナの頭をもっと撫でた
「大丈夫だ。俺は死なない、君を守るために…何度でも立ち上がるよ」
俺は一体何恥ずかしい事言っているんだろう…
そんなことを思いながら室内を見渡した。不思議な事に部屋はツインで二人しかいない
「…皆は?」
サーナに聞いてみた、サーナは顔を引きつらせるとこう言った
「みなさんは…先に行きました…」
俺はそうか…と言ってベッドに身を倒してからまたバネのように起き上がった
「先に行った!?なんで!?」
「なんだかロクスが目覚めるの待つのは面倒だって…」
「…酷い…」
俺はベッドでふて寝した
「やっぱり待っていた方が良かった気がするわ…」
カナメは少し後悔した。回復役がいないから皆ボロボロだ。
今は村から歩いて三日の町にいる
「…問題ない…」
クロは読書しながら答えた。コイツは対した怪我はしてない
「貴様は対した事なくとも、私やピエール、カナメは疲れている」
珍しくアシュカーが目尻をあげていた。
なんだか…アシュカーの口数が日に日に増えている
「僕はアシュカーたんが添い寝してくれたら一発で…がふぅ!」
とりあえず分厚い魔導書でピエールをぶっ叩く
ゆっくり崩れ落ち床で動かなくなる
「…死んでなさい」
カナメはため息をつくと席に戻り、本を広げると町中から怒号が聞こえた
「ジッパーが逃げ出した〜!」
最悪なヤツの名前が聞こえた。猟奇連続殺人魔導士だ
みんな一斉に立ち上がった、ピエールはまだ延びていたが
「いくよ!」
カナメの号令で外に出ると2mはある黒いフードを被った一つ目の男がいた体には鎖でフェアリーの少女を縛り付けている。あのままだと少女は内臓を抜かれ、皮だけになって町に帰る事となる
「みんな!ここで食い止めるわよ!」
カナメが号令をかけるとアシュカーがカナメの前に出てジッパーに切りかかる、が、広い袖のコートから現れた巨大な手に刀は弾かれた
「な!硬い!…きゃあ!」
アシュカーが捕まれ、身動きが取れなくなった。
カナメはアシュカーを助けようと火球を複数撃つが反対側の袖から出てきた、無数の触手に全てうちおとされ、自分も吹き飛ばされ壁に叩き付けられた
肋が砕け、脳が揺れた
なすすべが無くなったかに思えた
「ぎゅおおお!?」
ジッパーが横に吹き飛んだ
そのジッパーの居た位置に立っていたのはクロ、フェアリーの少女とアシュカーを両腕に抱えていた
「…降りろ」
と二人を下ろすとジッパーに手招きをした
ジッパーは挑発にのり無数の触手を伸ばしてきたが、クロは向かってくる触手の間をすりぬけ
なんなくジッパーの前までいった
「…とろい」
ジッパーの触手を左肩から引き千切った
「グガアアアアア!!」
痛みでジッパーが悲鳴をあげ、膝をついた。
そこに回し蹴りを食らわし、また吹き飛ばす、ジッパーは残った巨大な手で口のジッパーを開けた
口から閃光が飛び出てクロを直撃した…はずだった
クロはその閃光の元である大砲の弾をキャッチしていた
「…この程度だったか…あばよ」
クロは大砲の弾をボトリと落とすとジッパーの頭上10mに飛び上がった
「聖なる十字架よ…悪しき者に裁きを…【グランドクロス】!」
両腕をクロスさせ、空中を蹴った
まるで隕石のようなスピードでジッパーにつっこんだ地震のような衝撃が皆を襲った
折れた肋に響き、カナメはうめいた
「……大丈夫か?」
クレーターの中心からクロが上がってきて、ポツリと呟いた
「…だ、大丈夫よ…」
なんとか立ち上がるとアシュカーに肩を貸してもらった「私達…しばらく動けなさそうね…」
一方ロクス達
「あー…クソ…」
下品な言葉を吐きながら立ち上がるロクス
今までは仲間がいたらから戦闘は楽だった
が、今ではロクス一人だ、サーナを守りながら一人で戦うのは辛すぎた
「【癒しの雫】…ロクス!大丈夫?」
サーナが治癒魔法をかけてくれ、走ってこちらに向かってくる
「大丈夫だ。これ位なら…さあ、先を急ごう」
この後の旅路は辛い物だった。二人がカナメ達のいる町につく頃には、サーナは動けない程疲労していた
サーナを背負いながら町に着いて宿屋に向かうと見覚えのある四人がいた
「ロクス!」
「ロークス!」
「……」
「ロクス…」
全員がそれぞれ、違う返答をし、俺はサーナを椅子に座らせてから奴らに向き直った
「テメェラ…酷いじゃねぇか!俺達を置いて行くなんて…」
俺はそう言って、テーブルを叩いた
ピエールとクロ以外はシュン…となりピエールは歯を輝せながらクルクル回っていて、クロはだんまりをきめこんで本を読んでいた
俺はその後、動けないサーナを部屋に運び
そいつら全員に説教をした