とある世界の夏の一日
「・・・あれ・・」
ふと気付けば、知らない通りに立っていた。
「ちょっ、えー・・・?」
キョロキョロと周囲を見渡しても見慣れたものが一つも無い。賑やかな表通りとは違う閑静な通りが続いている。何時の間にやら脇道に入ってしまっていたようだった。元来た道を戻っても再び迷うのが落ちだろう。ぼんやり歩いていたのだからどこをどう来たかなんて覚えていないし、覚えていればここまで困っていない。
「あー・・・」
仕様がない、どこかお店で道を聞こうとサーシャは歩を進めた。一番手前の角を曲がると一面に白い花が咲き乱れていて、そしてあっけなくも探していた店は見つかった。Café『芙蓉』と看板が出ていて、どうやら喫茶店のようだった。見た目の雰囲気も悪くは無いし、自分のような子供も多少気後れするが大丈夫だろうと結論を出す。意を決して中に入った。
カランとドアベルが鳴り、客の来訪を告げる。カウンターに座って本を読んでいたギャルソン姿の青年が<顔を上げた。
「いらっしゃい」
本を閉じて立ち上がり、こちらへどうぞと声を掛けられる。
「あ・・あの違うんです!道に迷って・・それであの、えっと表通りに出る道を教えてもらいたくって・・・」
「表通り・・?表通りならうちの店を出て、左へ道なりに歩けばすぐに表通りだ、お嬢さん?」
「えぇ!?」
びっくりして思わず顔を見上げると面白そうに見降ろして来る目と目があう。よっぽど焦っていたんだなと言われ、赤面して俯いてしまった。
「まぁ・・・ここからだと死角にあたるしなぁ」
「いえ・・あの、ありがとうございました!」
居た堪れなくなりさっさと出ようとお礼を言ってドアに手をかける。
「どういたしまして・・・でも、急ぎで無いのならここでゆっくりしていくと良い」
「な・・なんでですか?」
「じきに雨が来る」
そう言って青年は微笑んだ。
彼の言ったとおり、雨はすぐに降ってきた。夕立が止むのをぼんやりと窓の外を眺めていると、コトリとテーブルに紅茶とお菓子が置かれる。
「どうぞ」
「あの、頼んでませんけど・・・」
「試作品なんだ・・・客のお嬢さんに出すのもどうかと思ったけど」
じっと待っているのも暇だろうと試食をという。代金は取らないから安心していいとも言われた。
「夏限定のワッフルサンド・・・右から白桃とサクランボ、レモンクリームにサクランボのコンフィ、それでこれがコーヒーゼリーとココア風味のチョコクリーム」
どうぞと促されおそるおそるフォークを手に取った。
「ありがとうございました」
雨が止み、試作品も全て食べつくしたところでサーシャは店を出た。夕焼けの光が花に付いている雨粒に反射して、キラキラ輝いて見える。
「また、食べに来な・・・今度は迷子にならねぇ様にして」
「・・・はい」
サーシャはペコリと頭を下げると教えてもらったとおりに歩いていく。すると、彼の行っていたとおりすぐに表通りに出た。振り返るとここからではあの綺麗な花壇は見えない。穴場だなとサーシャはにっこり笑った。
この話、設定だけはしっかり作ってあります。全然生かせてませんけど、文章化はやっぱり難しいです。喫茶店のマスターが実は異世界トリップしたトリッパーだなんてこと書かなきゃ分かんないですよね。というかこの話に全く関係ない。
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