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神々の正体  作者: 箱庭
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第4話 脱走

刃と刃が重なり合い火花が散る。同時に見張りの手にしていた長剣も宙を舞った。

王国の騎士団にまで登り詰めた腕前と魔物化による筋力の発達でシェイスは一撃のもと見張りの剣を弾き返したのだった。


「化け物め!」


だが見張りの男も怯まない。弾かれた一瞬に素早く後ずさり腰に下げていたナイフを投げつけてくる。

この距離では避けきれない。

シェイスはとっさに胸前で腕をクロスさせた。


「キィィィン!」


巻き付けておいた鎖が役にたった。


「くそっ!」


手の打ちようがないと判断した見張りは逃げ出そうと背を向けたがその瞬間にシェイスは背後から鎖を振り回して敵の後頭部へ打ちつけた。


重くて邪魔だが使い用によっては便利だ。


「いたぞ!あそこだ!」


警笛を聞きつけた他の者がぞろぞろと集まってくる。


見張り番の部屋を抜けたシェイスは急いで窓を破り外へと飛び出した。そして暗い森の中へと逃げ込む。


「被験体は森へ入った。ただちに全員へ通達!急げ!」


外は夜。ただでさえうっそうと茂っていたこの森の中は真の暗闇だった。その闇で何も見えない。途中で何度も木の根に足をひっかけながらシェイスはひたすら走った。

鎖が地面に擦れる音が敵に位置を知らせる。

振り返れば、追ってくる者の松明の光が後ろでぼんやりといくつも浮かびあがっているのが見えた。


そして次第にその光との距離は縮まってしまうのだった。


足の鎖に加え暗くて目前の障害物がよく見えない。


このままでは追いつかれてしまう…


いっそ闇に紛れて戦うか…


いや、あの数だ。それにこの連中は一筋縄ではいかない。見張りでさえあの一撃で怯まなかったんだ。


万一、あの白い煙でも使われたとしたらおしまいだ。


…どうする…


考えている余裕はなかった。


そしてとうとう松明に照らされる人影が見えそうなくらいまでの位置に迫ってきた時、突然森が開けた。


「うわぁぁぁ!」


だが同時にその先は大地をパックリ割ったような深い谷が口を開けていた。

背後から迫る後ろの気配に気を取られ、なにも反応できなかったシェイスは吸い込まれるように谷底へ落ちていった。


しばらくしてから谷の手前で集まる追手達。


「谷に落ちたか…いや、落下音が聞こえてこんな。まだ近くに潜んでいるはずだ!探し出せ!」


「はっ!!」


武装した追手は再び森の捜索へ戻った。

一方、谷底へと落ちていったシェイスは…


「危ねぇ、危ねぇ…。死ぬかと思った…」


間一髪のところで石壁に魔物化した爪を突き刺し谷底への直撃を免れ無事だった。さすがにここまで追ってくることはないだろう。

的確に壁へ爪を引っ掛けながらシェイスは谷の底へ降りていった。


「とりあえずなんとか脱走には成功したが…」


河原の小石に鎖をジャリジャリ鳴らしながら歩いていく。川の流れる音が鎖の音を掻き消してくれた。


「騎士団の仲間は無事なんだろうか。そもそもあの村で一体何が起きた?奴らはなに者だ?なにをしようとしている…」


再び記憶を呼び起こそうとするもやはり思い出すことができない。


「とにかく戻ろう…

しっかしこんな姿に成り果てて両親になんて言えばいいんだよ」


その後も夜通し川を下り続けた。


やがて朝日が昇り始め辺りが明るくなってきた。


ここまで来ればでかい音を出しても敵に悟られることはないはずだ。

ここでシェイスは鎖を断ち切ることにした。岩に鎖を固定し思いっきり剣を降り下ろす。

何度も何度も降り下ろし、ようやく四肢の鎖がはずされた。これでやっと身軽になれる。


それから川の流れが停滞している静かな水面を恐る恐る覗いてみた。

よかった。顔のほうは魔物化による目立った変化はないようだ。問題なのは異常に伸びた犬歯ぐらいか…


そしてさらに川下へと歩き続け、ようやく谷を抜けた。


先の川沿いに小さな村が見える。


村人にここがどこなのか聞きたいがこの姿じゃなぁ…ボロついた囚人服に裸足で剥き出しの鋭い爪。

村人が見たらあっという間に騒ぎになるな。


それでも村の方向へ河原を歩いていると、水を汲みにきたのかバケツを手にした一人の少女が川に近づいて来るのが見えた。


あの子に聞いてみようか…


いや、はたから見れば襲いかかる魔物にしか見えん。


いろいろ迷い岩影から様子をうかがっていた時、


「ん?」


二人の男が少女の後をつけているのが見えた。二人は剣を帯び見るからに粗暴な感じの男だった。


そして水を汲んでいた少女を背後から近づきいきなり羽交い締めにする。


「きゃぁぁぁあ!」


人さらいの野盗か!!

くそっ、出るしかない!


シェイスは岩影から飛び出した。



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