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神々の正体  作者: 箱庭
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第3話 覚醒

どのくらい時が経ったのだろう…


窓がないこの暗い部屋では昼か夜かさえの判別もつかない。

暴れ疲れ、身も心もすっかり意気消沈したシェイスは死んだようにぐったりしていた。ときどき見張りが通る足音も、もはや気にならなかった。


「俺はこの先どうなっちまうんだ…」


魔物化した自分の爪を見ながらただ呆然とする。扉の向こうからは自分と同じようにされた人間が他にもいるのか獣のようにうめく声がずっと響いている。

しかしこの時、シェイスは暴れ際にかすかに聞こえていたあの男達の会話を思い出していた。



自我の崩壊は当然として…


…自我の崩壊…



どういうことだ。それは徐々に自分の意思が自分ではなくなっていくということだったのか。

あの時、俺が暴れている姿を見て自我が崩壊していると奴らが思っていたとすれば…


そういえば扉の向こうから聞こえてくるうめき声は俺がこの部屋で目覚めてから今までずっと響いているな。あれは自我を失った証拠かもしれない。

だとすれば、俺は運よく自我の崩壊を免れたということなのか…


その時、背にしていた鉄の扉が突然開いた。そして暗闇からなにやら動物の肉が部屋に投げ込まれた。おそらく魔物化した人間に対する食事だろう。魔物が好みそうな生肉だ。

肉に近づくシェイスだが特に食べたいとは感じなかった。先に腹を下してしまうかもという考えが働いたからだ。


このことからもどうやら彼らはシェイスが完全に魔物化したと思っているようだ。


「俺の自我がまともだと知れたら何をされるかわからない。それに人間を平気でこんな風に扱う連中だ。利用され、よからぬことに加担させられるに違いない。こんな姿になっちまったがやるだけやってやる。ダメならこの爪で潔く死のう」


冷静さを取り戻したシェイスはこのとき脱走の決意を固めたのだった。


もう一度あの白い煙を使われるまでになんとかしなければ…


見張りが部屋を覗くその間は自我を失っているように見せるためわざと異様な声を発し暴れてみせた。


その他の時間は全て繋がれている鎖をはずすことに費やした。いくら石の壁を貫くこの爪でも鉄製のこの鎖は裂くのに時間がかかる。そのため壁と鎖が繋げられているその壁自体を削りとることでまずは手足の自由を確保することができた。だが鎖は手足にぶら下がったままだが。


そしてその鋭い爪を石壁の隙間に突き刺しクモのようによじ上ると扉上の天井で息を潜めた。


「くそっ、鎖が邪魔だ!」


こればかりはどうしようもない。垂れ下がった鎖をぐるぐる手足に巻き付ける。



そろそろ見張りがもう一度部屋を覗きに来る頃か…



………来た…



扉の覗き窓から中の様子を確認する見張り。


「ん?」


部屋の隅々まで目を光らせるが当然シェイスの姿は見えない。


…よし…このまま来い…


目をこらしながら薄暗い部屋を見回す見張り。やがてシェイスを繋ぎ止めていた鎖が無くなっていることに気付いた。


「まさか!?」


見張りは慌てて鍵を開け扉を開いた。

そして中に足を踏み入れた瞬間、この時を狙っていたシェイスは天井から飛び降り見張りの背後へ着地し首筋に一撃を決めた。


気を失い倒れ込む見張りの男。

急いで男から装備と鍵を剥ぎ取る。

そしてそのまま男を部屋に閉じ込めシェイスは廊下に出た。


「どっちだ?」


左右に道が別れている。だが右側の方から明るい光が漏れていたのでシェイスはそちら側を進んだ。鉄の扉がいくつも並んだ廊下を忍び足で歩く。


やがて階段に突き当たった。光は上から漏れている。階段を上がったところには鉄格子が設けてありその奥から人の気配が感じられる。シェイスはゆっくりと階段を上がっていった。


そしてそっーと顔を上げる。

幸いもう一人の見張りは机に寄りかかりイビキをかいて眠っていた。


音をたてないように慎重に鍵で鉄格子の扉を開け見張りを横切るシェイス。


だがこの時、うでに巻き付けていた鎖がほどけ床にジャリっと触れてしまった。


「しまった!」


その音に気付いた見張りが目覚めシェイスと目が合う。


「き、貴様!どうやって、ぬわ!」


見張りが鞘から剣を抜く前に鎖で頭を叩きつける。


「危ねぇ…」


「どうした。今なにかものすごい音がしたが」


声とともに奥の扉が開かれた。もう一人いやがったか!


「ピィーーー!」


すぐさま警告の笛が鳴らされる!


「被験体が逃げているぞー!」


もはや残された選択肢はひとつしかない…シェイスは見張りから奪った剣を構え突撃した!




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