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神々の正体  作者: 箱庭
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第17話 変装

とりあえずどの程度まで姿のごまかしが効くか検証するため二人は再び家の中へと戻っていった。


レオーヌはすぐさま布袋をあさり買ってきたサングラスを取り出すとシェイスに渡した。


さっそくサングラスを掛けて鏡で確認してみる。顔の角度を変えてみたりしながら何度も自分を観察するシェイス。


「なるほど。これなら赤い瞳の色がバレないで済むな。ほんでもってマントを着込めば完璧じゃん。さすがレオーヌ!気が効くぜ」


思わずハハハと笑いをこぼしシェイスはレオーヌの肩をポンと叩いた。


しかし一方のレオーヌは鏡の前で浮かれているシェイスとは対象的になにかまだ考え込んでいるようで眉ひとつ動かさず真剣な表情を浮かべながら黙ってその様子を見つめていた。


そんなレオーヌをよそにシェイスは畳んで椅子に掛けておいたマントをバサっと広げて羽織りまた鏡を覗き込んだ。


「こうしてみると野望を内に秘めた孤高の旅人って感じがしてカッコイイなぁ。なあ、そう思うだろレオーヌ!」


一人はしゃぎながら剣を振るうポーズをキメたりと、もはや魔物の姿であることを忘れて完全に子供の頃夢見た冒険の世界に浸っている。


「なーんかまだそれだけじゃ足りないような気がするんだよね」


相変わらず冴えない表情を変えることなく小さくつぶやくレオーヌ。


そして思い立ったように、現実から遠ざかっているシェイスを残してそっと調合室へと消えていった。


しばらくしてようやく鏡から視線をはずし隣にレオーヌがいないことにやっと気が付いたシェイス。


「ははーん。また寿命がなんたらとか言って薬の研究に行きやがったな。ったく」


そう言って再び鏡に視線を戻すのであった。


その頃、調合室のレオーヌはというと…


「えっとどれだったかなー」


棚に向かい合いどうやらなにかを探しているようだった。

壁に備えてあるその棚にはそれぞれラベルの貼られた茶褐色の瓶がいくつも並べられている。液体が入ったもの粉末が入ったものなど様々だ。


「あったあった、これだ」


やがてその中からひとつを抜き出しニヤリと不敵な笑みを浮かべる。ラベルには薬品名の他に怪しげなドクロのマークが描かれている。

そして分厚い手袋と金属製の大きなトレーを持って調合室を後にした。


「あれ?お早いお帰りで」


戻ってきたレオーヌを茶化すシェイス。もうすでに鏡の世界は飽きたようでカップを片手にゆったりとくつろいでいた。


「なんだそりゃ?なに持ってんだ?」


「サングラスだけじゃ足りないと思ってね。いいアイディアが浮かんだんだ」


トレーの上に乗せられている薬品の瓶に気付きシェイスは思わず身を引っ込めた。


「ま、まさかまたへんな薬を飲ます気じゃないだろうな」


「冗談、そのつもりならもっと隠密に遂行させるさ…おっと失言」


「て、てめぇ…」


「違う違う!それ、髪の色。敵に知られてるんだったらそのままじゃまだまだ油断はできないよ。この薬品には脱色作用があってね」


つまりは髪の毛を脱色して色を変えるということだった。


「なるほど。それならさらに見つかる危険性が低くなるってことか。で、脱色って…何色になるんだ?」


「脱色だから白だよ」


「えー、白!?じいさんじゃねぇんだから、どうせなら金髪とかもっとカッコイイ色にしてくれよ」


「まあできなくはないけど脱色と違ってそれだと雨に濡れただけですぐに色が落ちてしまうんだ。それにくらべればこっちの方が遥かに効率的だよ。髪の色が白い人なんてお年寄りじゃなくてもたくさんいるんだからいいじゃん。それに髪はまた生えてくるんだし」


「まあ、そうだけどよー」


渋々といった感じでシェイスは了承した。それに今はそんなことを言っている余裕はないのだ。過去の自分の痕跡をできるだけ消し去らなければならない。


そしてさっそく準備に取りかかる。

シェイスを床に寝かせトレーの上に頭を乗せる。

それからレオーヌは手袋をはめ瓶を手にとり少しずつ髪に垂らしながら隙間を這う液体を隅々まで広げていく。


この光景。あの時にそっくりだ。シェイスは無意識にあの森の中で行われた実験のことを思い出してしまっていた。まるで苦痛を味わっているかのように顔を歪め奥歯を噛み締める。


「大丈夫?なんか顔色悪いよ?」


「いや、大丈夫だ…なんでもねぇ…」


目を閉じ悪夢を振り払おうと必至に脳の中で戦うことしばらく、ようやく作業は終了を迎えたようで髪に布がくるまれる。


「その布あと一時間ぐらい取らないでよ」


持ってきた道具を片付けレオーヌは再び調合室へと向かった。


「ふぅ、やっと終わったか」


悪夢から解放されたシェイスは大きく溜め息をつき仰向けの状態から立ち上がると疲れた顔を見せすがるように椅子に座った。


その後、調合室での後始末を終えレオーヌもそこに合流した。


「まるで砂漠の民みたいな頭だね」


ターバンのように巻かれた布を見て笑いを溢すレオーヌ。


「お前がやったんだろ」


一瞬ムスっとしながらも笑いながらそれに返答する。


「ところで明日の件なんだが…」


「ああ、鍛治屋に行くって言ってたアレね。そこまで変装すればさすがに見つからないよ」


「それはわかってるんだが、一応レオーヌにもついて来てもらいたいんだ」


「なんでだよ!」


「お前、俺としゃべっていてなにか気付かないか?」


「なにかって、なにが?」


「牙だよ牙。どんなに変装したってさすがに人としゃべるときはこれだけはどうしようもないだろ」


「確かにね…サングラスしてマスクじゃあ余計に怪しまれるし」


「だろ?とりあえず相手とコミュニケーションをとらなければならない場合はレオーヌがメインになってくれ」


「えー、それってつまり外ではシェイスとずっと行動を共にしないといけないってことじゃん」


「なあ頼むよ!」


「そんなー。もし奴等に見つかった場合僕まで道連れじゃないか」


申し出を拒み続けるレオーヌだがシェイスには奥の手がある。静かにポケットに手を突っ込み礼の石を握った。


「これはなにかなー?」


悪魔のようなささやき声で石をチラつかせる。

それを目にしたとたんレオーヌもさすがに折れた。なによりも代えがたい不老不死の手がかり天星石。これを見せられては黙って従う他なかった。



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