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神々の正体  作者: 箱庭
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第10話 対峙

黒みがかった邪悪な仮面が一瞬で距離を縮めてきた。

反射的に構えるも振り落とされた分厚い刃にあっさりと剣が弾かれる。一太刀受けただけで腕がしびれた。


残る片方の剣で迎撃するが繰り出す前に手首を掴まれそのまま体ごと地面に叩きつけられてしまう。


飛び上がって立ちあがり後ろへさがるシェイス。


「どうやら戦況が逆転してしまったようだな。まあ無理もない」


相変わらず楽しむように後ろで戦いを眺める指揮官の男。



「くそっ!」


弾かれた剣を拾い今度はシェイスが飛びかかった。


「キィィィン!」


魔を帯びた者同士の目にも止まらぬ攻防が繰り広げられる。


反撃の隙を与えず二刀を次々と振るう。だがその素早い動きに大剣を持った魔人兵もなんなくついてくる。


そして叩き込む二刀のうち一本が激しいラッシュに耐えきれなくなりついに折れてしまった。


「しまっ…」


わずかに鈍った動きの隙を鉄仮面の奥に潜む闇の瞳が逃がすはずがなく、後方に突き飛ばされるシェイス。


「うわぁぁぁ!」


そしてそのまま民家に激突した。ぶつかった衝撃で壁がボロボロと崩れ瓦礫が上から降り積もる。


「案ずることはなかったな。さっさとあきらめて我々に協力したまえ。それがこの国の為にもなる」


仁王立ちの魔人兵の後ろから指揮官の声が聞こえてくる。


意識が遠退きそうになるのを必死で振り払い瓦礫の中から立ち上がるシェイス。


「ゴホッゴホッ!」


唾液に混じった赤い血が服ににじむ。


「参ったな…」


ふらつく足を踏ん張りながら目の前の鉄仮面を見つめた。

もはや勝算はほとんどない。

かといってこのままむざむざと捕まってしまえば奴らの行いは闇に葬られてしまう。


なんとか生き残らねば…


シェイスは崩れた壁の破片を強く握りしめ再び魔人兵に向かって駆け出した。


再び大剣を構える魔人兵。そのまま激突するのかと思いきや、シェイスは手にしていた剣を勢いよく魔人兵に向けて投げつけた。


回転しながら向かってくる鉄の刃を大剣で弾き落とす魔人兵。だがその一瞬の隙にシェイスは指揮官めがけて走り抜けていた。


「ほう。勝てぬと判断し、この私だけでも仕留めようという魂胆か」


向かってくるシェイスに指揮官は鞘から長剣を抜いた。


「いくら魔物化したとしても丸腰で私に挑もうなどと…!?」


「おしゃべりがすぎるぜ指揮官さんよー!」


シェイスは先ほど握り潰した壁の破片を指揮官の顔面へ叩き込んだ。

粉砕された破片が砂煙を上げる。


「うっ、くそっ!こしゃくな真似を!」


視界を封じられ両目を押さえている指揮官を横切り、後ろで待機している馬へと一直線に向かうシェイス。そして繋がれた縄を爪で切り裂き馬にまたがった。


手綱を握り急いで発進させる。


「何をしている早く追え!」


指揮官の怒号とともに後を追ってくる魔人兵だったが一足早くシェイスが村を出た。


悔しそうに唇を噛み締めながら地面を叩く指揮官。


「くそぅ!…まさかこの私がしくじるとは」


猛スピードで草原を駆け抜ける。時々振り返り、後ろを確認するがどうやら追いついていないようだ。それからどんどん村を離れていった。


「ざまーみろってんだ」


村の立て札を越え、道をはずれた少し深い草原をひた走る。そしてついに村は見えなくなった。


もう人目は避けたほうがいい。


シェイスは完全に道を反れ山林付近を走らせた。


走り続けること数時間、安心からか張りつめていた緊張がほどけ疲れが一気に肉体を襲った。走りながら馬の首元に思わず寄りかかってしまう。


「ここまで来れば大丈夫だろう」


シェイスは馬を止め、木陰に腰を下ろした。


「さすがに疲れた」


畳んでいたマントを広げ体を覆う。今頃になって負った傷が痛んでくる。すでに太陽は傾いていた。


「俺の行動は筒抜けだったってわけか…あの一家が無事だといいが」


大木にぐったりともたれながら村で拾った血に汚れたペンダントを取り出す。


「あいつらが魔人兵とかいう仮面の被った化け物を使役していたことからも、どうやら俺達がイースト村に派遣されたのは最初から図られてのことだったのかもな。あの様子だと俺だけがこんな姿にされたとは考えにくい。おそらく他のみんなも…」


シェイスは独房で聴いた魔物の叫び声を思い出していた。


「いや、余計な考えはやめておこう。まだそうと決まったわけじゃない。とにかくアルバレスタに戻ってことの真相を確かめるんだ。先輩のペンダントも返さないといけないし…な…」


血を流しすぎたのかペンダントを眺めたままシェイスは意識を失った。




辺りが随分とひんやりしている。


目覚めた頃には完全に夜を迎えていた。


「はっ、眠っちまったのか!」


慌てて起き上がり周囲を警戒する。だが敵の気配などはなく、ただ虫の鳴き音が聞こえてくるだけだった。


「ふぅ…」


深い溜め息がこぼれ落ちる。この時すでに不思議と体中の痛みが消え失せていた。


「行くとするか」


闇に紛れて月明かりを頼りにシェイスは再び馬を走らせた。



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