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シンデレラ体重って知ってるかい?

最近、ダイエットしています。

その思いを綴ってみました。

体重はデリケートなことなので、ご不快な思いをさせたらすみません…(;_;)

とある国のとある御屋敷でのこと。

シンデレラと呼ばれる私は今日も屋敷の床を磨いていた。

二の腕のお肉がプルプルと揺れる姿もなんだか美しい。

逞しいその背中を義母と義姉が壁から見つめていた。


幼い頃に出会った自称:魔法使いさん。

フードを深く被り、如何にも魔法使いというようなローブが特徴的だった。

父を無くして、泣いてばかりだった私に彼が言った魔法の言葉。

 

この世界の主人公は私で、いずれこの国の王子に舞踏会で見初められ、この国1番の幸せ者になれるだろうと。

憧れの王子様が迎えに来てくれるというのは、親を無くしたばかりの幼子にはあまりにも魅力的で、すっかり信じ込んでしまった。

魔法使いはどこか労わるように頭を撫でると、現れた時と同じようにシュワっと消えていった。

 

王子様を待っていれば、いずれ幸せになれるのね、と。


ぼーっとしてご飯食べて、寝てたまに掃除して、そんなこんなで毎日をふわふわと生きてきた。

そして、本日昼からの舞踏会の招待状が届いたのだった。内容は王子様の婚約者探し、物語の鐘が鳴ったのだ。国中はてんやわんやである。


あとはかまどの灰を集め、捨てれば今朝の掃除は終了。今までの下働きも終わり、この後には王妃となる未来が待っている。


その前にご飯を食べるようといそいそと食堂へと移動する。この世界の食べ物たちはとても美味しいものばかり。唯一の楽しみだ。


濃厚なトマトソースとお肉がたっぷりと絡んだミートパスタに、カリッふわふわなバターパン、揚げて甘辛く味付けしたサクサクチキン。


どれもこれも高カロリーハイジャンキー。

すっかりと太く逞しくなってしまった。

だが、そんなことは気にしない。


「主人公ってだけで幸せが約束されてるなんて、素敵よね〜」


そうして今日もむしゃむしゃ、ごくごく。

ソースだらけの口でにんまりとする姿もかわいらしい。はち切れそうなお肉で、綺麗なドレスは今にも裂けてしまいそう。

義母は心配そうに義姉は哀れみを滲ませなぜか見てくるが、そんなことは気にしない。

 

たらふく食べた後、どっこらしょと普通の馬車に乗り込む。ドナドナと運ばれ、到着したのは絢爛豪華なお城。

その中にはたくさんの食事が用意されており、一目散に近づいていった。なんだかお城が揺れているわ、なんて気にしない。


「うんまい。これもあれも、美味い。ぷりっぷりのロブスターが口の中で溶けるぅ」


「やぁ、とっても美味しそうに食べるね。そんなに喜んでくれたら城の料理人達も喜ぶだろう。失礼かもしれないが、ご令嬢お名前は?」


「私はシンデレラ。あなたこそ誰なの?」

 

急に話しかけてきたのは王子様、ではなくなんだか整った顔に髭を生やした怪しいヤツ。その後ろにはお付きの人っぽい男性。


「僕はマリック。商会で扱ってるガラスの靴を王家に献上している付き合いで、本日は参加させて貰ってるのさ。決して怪しいものじゃないよ。」


「ガラスの靴!!!まぁ、素敵ね。それって、今持ってたりするのかしら?」


「一応、目玉商品だから持ってきてはいるけど…まさか」


「売ってくれない?いくら払えばいいかしら。」


「んー、君にはおすすめはしないけど。今回はお近づきの印としてプレゼントするよ、ちょっと待ってて。」


そう言って、付き人の抱える荷物の中から箱を取り出し持たせてくれた。意外といい人だわ、この髭さん。


「それじゃ、他にも挨拶しないといけないからここら辺で。君とはまた会いたいな。」

 

ガラスの靴に履き替えて会場に戻ると、王族専用の壇上に王子様がいる。どうやらちゃんとイケメンで安心した。

どこかのご令嬢と楽しげに会話をしているようだ。

あそこには私がいるはずなのに。


「きっと私が居なくて間違ってしまったのね、仕方ない人。今すぐ行くわ!」


早歩きで壇上へと向かうが、のしのしと歩く度にピシッピシッとどこからか音が聞こえてくる。

群がる女性を掻き分け壇上を登ろうとし、騎士たちに止められた。


「ご令嬢、困ります。この先は許可されたもの以外通せません。」


「どうして?あの子は上がってるじゃない。王子様の未来の妻が来たのよ、そこをどきなさい!」


隙をついて壇上をかけ上がる。

女性がそんなことをするとは思わなかったのか、騎士の手は背中を掠めただけに終わった。

捕まってたまるもんか、グッと足に力を込め王子の方へと叫ぶ。会場中が静寂へと包まれた。


「王子、ここよ!私はここにいるわ!早く、迎えに来てちょう…きゃああああああああああ」


ピシピシ、バキッ。


足元から盛大な音がして、バランスを崩した。

ゆっくりと後ろへ体が傾いてゆく中、王子にしがみつく女に視線がいく。

重すぎる体を支えることなどできず、そのまま頭から壇上を転がり落ちていった。

首の骨が折れたのか、痛いようで痛くないようで。

あ、これ死んだわねと意識を手放した。


死んだはずなのに、目が覚めると一面真っ白な空間。


「やぁ、また会ったね。まさかあんなに盛大に落ちてしまうとは。あの後、巻き込まれた兵士たちが、君の下から中々出てこれなくて」


すごく失礼なことを言って爆笑するのは、会場で会った髭を生やした商人。いつか見た自称:魔法使いさんのような格好をしている。


「自称、魔法使いさん?…私死んだはずじゃ」


「久しぶりだねぇ。ちなみに、自称じゃなくて本物の魔法使いだからね!あと、残念ながら君は死んだ」


「そんな。幸せになれるって、世界の主人公は私だって、嘘だったの!?」


「いや、それは本当だったけどさぁ、まさか君がこんなに怠け者になるなんて思わなかったんだもん。まぁ、僕が悪かったんだけど!」


そう言って私の方を見ると、わざとらしく、上から下へと視線を動かした。


「君のために用意していたガラスの靴が、体重に耐えきれそうにないと判断された時に、主人公が変わってしまったんだよ。面白いことに。」


「何よそれ。どういうこと!?」


「まぁ、いろいろと理由があって君は選ばれた主人公になるはずだったって話さ。いつの間にか怠惰で、自己中心的で忍耐力のない、予定とは真逆に育ってしまった。」


「いや、あんたのせいじゃん」

 

「まぁ、そうとも言う。だからこそ今僕はここにいる。…ふげっ!!」


誇らしそうにするその髭面に、渾身のパンチをお見舞いしたことは一生後悔しないと思う。

揺れる二の腕の肉がプルプルと煩わしくて仕方がなかった。


「で、私を舞踏会よりも3年前に戻してくれるってことでいいわけ。しかも前世の記憶とやらも付けて。」


「そう、出血大サービスでね。君の前世は、ダイエットトレーナー!きっと役に立つさ。その代わり、しっかりと努力して未来を変えるんだよ。」


「なんで今更親切にするのよ、主人公じゃなくなったんでしょ」


「そうしないと、僕の査定がちょっとやばいというかなんというか、扶養家族いるし賞与下がるのはちょっと。それに、予定されたことが覆ると世界にヒビが入って、赤ずきんや白雪ちゃんにも迷惑かかるし、それにこんな結末に絵本が変化するのも嫌だよなぁ、なんて。」


「よく分かんないし、もういいわよ!やるならさっさとやって!」


あいあいさーとの不思議な掛け声で、魔法使いが何事かを呟き始める。魔法の言葉なのか、よく聞き取れない。

暫くすると周りが明るくなりだし、その発光に意識は飲まれていった。


「それじゃ、僕のお役目はここまでだからまたねぇ。頑張ってねぇ。それじゃ、えーと。…次の子はかぐやちゃんか。そろそろ竹から見つけて貰えてるといいんだけど、あの子。じゃないとこのまま竹の中で」


その呑気な声になんだか腹が立って。

絶対、痩せて幸せになってやるんだからと顔に1発お見舞いしたくなった。


シンデレラ体重とは、ガラスの靴がギリギリ耐えられる体重だとどこかで見ました。


美味しいものを食べて、運動もして心も身体も健康が1番だと思います。何事にも程々に。

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