その7
11月9日
今日はこの会社の最終出勤日だ。
直属の親方には話が通っているとばかり思っていて、通ってなかったので怒られた。
だけど、頑張れと言ってくれた。
他のグループにも菓子折りを贈り、親方に挨拶を告げたところで限界だった。
トイレに駆け込み泣いた。
泣けるんだなと思った。
この会社には泣くものは無いと思ったが。
これで俺の人生の一区切りが終わる。最後まで気を抜かず、安全に取り組もう。
12月29日
今年はやりたいこと全部やったような気がする。
事故も何回やってんだよって話だけど。
俺はやっぱりあの会社を辞めて良かったんだって思ってる。
そりゃ上司や同僚には恵まれたし、自分に合う仕事なんだって思ってやってきた。
だけど、1度の人生それで終わるのか?って思ってしまったら。
もしかしたら逃げたのかもしれない。
確定した未来しかないあの場所で、あの会社の社員として一生いる事があったのかもしれない。
あそこに安定はあったのだ。
家族か女か時間か金か。
私は金と家族を選んでいたら、ずっとあそこにいたのだろう。
私は女と時間を選んだから、ここにいるのだろう。
少なくとも次の会社は、もっと酷いかもしれない。
不安しかない。今まで培った経験がほとんど使えない。
タイピングもそこそこだし、接客をする訳では無いあの環境で、果たしてどこまで通用するのか。
とても怖い。
それでも私はやったのだ。挑戦をしたのだ。
後悔もある。辞めなければ食い扶持は稼げた。
面倒なこともしなくて済んだ。脳死で生きていけた。
ただ、それで生きていたくなかった。
流され続ける自分が嫌だった。
自分で選択したかった。誰の指図も受けず、自分の考えたことで行動したかった。
自分の道を誰かの言葉でつくった自分を変えたかった。
本当の意味で今、選び続けている。




