その1
2016年のいつか
午後九時を回った頃から、部屋の西側に掛けられた時計は、毎分60回を刻む、ただのメトロノームにしか聞こえなくなった。
"また怒られた。
これで何回目か、自分のせいだから余計に腹が立つ
もう疲れた、止めてしまいたい"
スマートフォンのメモアプリを起動して、この文面を書いてからずっと手が止まっている。
10月28日金曜日、またアプリを開いた、何処かへ行きたいという時はいつもの場所に行くのだが、生憎と空は雨模様、更にどこかの誰かが寝ていた。
そこは俺の席だ、どこかへ行ってくれ、むしろ俺をどこか連れて行ってくれ……
……やはりこの仕事は向いていないのだろうか、
覚えようとしていない、確かにそうだ
俺はこの仕事をやりたくない
事実だからタチが悪い気がする
頭の周りが悪いのも事実だ
人が何を考えているかを考えて、何をすればいいのかにたどり着かない、
客観的に見れない
見ても、あぁそうですかとその先の答えを出さない
誰かに言われなければ動けない
何故そうなったのか、思い出せない
とはいえ、この仕事を続けなければ、
膨れ上がった俺の借金は解消されない
半分は実金だが、半分は精神的な借金、とでも言うべきか
負い目、と言うべきか……
やはり、俺が動けない理由はここにこそ
あるのかもしれない
その負い目に、ストレスを感じ、思考を劣らせ、判断を鈍らせる
マイナスの面で考えるたびに、きっとあの他人は俺のことを
鈍臭い奴だと認識しているのだろうと
自分で、無意識的に考えているあたり、もう末期と考えた方がいいのだろう
……あと2分で昼休みが終わる
あと1分……
続きは今度、書きたくなった時に書こう
そして俺は、アプリを閉じた