ラジオドラマの呪い
「………よし、これで完成」
そう僕が呟く。
この日は、ラジオドラマ用のホラー作品の脚本を書ききったのだ。
……まあ、締め切り日の前日に間に合わせたんだけど。
ラジオドラマの脚本を書き始めて、早5年。
様々な作品を書いてきたけど、ホラー物は苦手。
どうやったら怖がらせるか、そこが悩みどころなのだ。
今回の作品は、心霊スポットの除霊をする祓い師が逆に呪われる話。
今までの祓った霊が強力になって再び現れ、『彼』に仕返しをするというのだ。
で、最後は『彼』も地縛霊になる……
ちょっと強引なオチだけど、仕方がない。
原稿をドラマの監督にファックスを送る。
「これで、返答待ちと」
翌日、その監督から電話が来た。
『よぉ、毎度の事ながら面白い作品やなぁ。改善点は無いし、このままで行こう』
「本当、ですか?」
『ああ』
その返答を聞いて、安心した。
……のだが、問題がそのドラマの収録日に起きた。
▪▪▪
「ほな、今日はよろしくな」
監督が、ドラマの出演者にそう挨拶をした。
今回の出演は、これも贔屓にしている演劇団の皆様にお願いした。
「それでは、収録を行いましょう」
団長がそう言うと、団員の皆は収録室へ入っていった。
『……ここが、今回の現場か』
と、第一声が聞こえ、収録が始まる。
順調な滑り出し、となったのだが……急に収録室内の電気が消えたのだ。
『な、何が起こっているんだ!?』
室内に居る団員達が、慌て始める。
「おい!どうなっている!」
監督がスタッフにそう怒鳴る。
「……わ、分かりません」
スタッフの一人が、そう返す。
『き、きゃぁぁ!』
その団員の中の一人が叫んだと思ったら、電気が再び付いた。
そこには、叫び声を上げた女性団員が泡を吹きながら横たわっていた。
収録はそこで打ちきりになり、警察の取り調べが行われた。
……女性団員の死因は、検査をしても解らなかったと聞いている。
不可解ながらも、これ以上の捜査は困難とされた。
▪▪▪
ちなみに、この事件があったスタジオには昔から『いわく付き』があるみたいなのだが、これと関係があるのかも知れない。
その証拠とは大袈裟ではあるが、この事件の後にこのスタジオは閉鎖になったという。
――そのスタジオの敷地内から、白骨遺体が見つかったのはまた別のお話。