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参拾伍

 

「午前に国語、数学。午後に英語の試験を行う。中等部校舎で3年が同一の試験を受ける。時制は一緒だから不正はできない。まあ頑張れ」


 成宮先生はこっそり、「お前ら()入学確定だがな」と付け足した。

 おそらく、目の前にいた私にしか聞こえなかっただろう。

 ”お前らは”ということは、やはりこの教室は確定組の部屋なのか。他の教室とはずいぶん雰囲気が違うと思ったら、そういうことね。


 何だか、他の受験生に申し訳ない……。



 時刻になり、先生が一枚ずつ問題と解答用紙を配り始めた。

 よーし、頑張るぞ!



 ***


 ***


 ***



 15時30分。

 試験監督の「止め」の合図と共に、終了のチャイムが鳴り響いた。私たちの受験は終わった。さらば受験勉強。ようこそ春休み!


「や、っと終わった……」


 形ばかりの受験とはいえ、やはり玲海堂は馬鹿にできない。

 腐っても名門校。かなりたちの悪い問題ばかりだった。金があれば入学できるとんでもない学校だが、偏差値72は伊達じゃない。


 流石に入学確定とはいえ、こんな問題を解かされたら心が折れるのでは?

 そう思い他の受験生の顔色を伺うと、一様に疲れた様子だった。



 試験が終わると、私はそそくさと教室から立ち去った。残って他の受験生と親睦を深めても良かったが……お金持ちの令嬢、令息とまともに関われる気がしなかった。

 きっとすぐに化けの皮が剥がれて、庶民ってバレて馬鹿にされる……。

 えっ、被害妄想?


 高等部と中等部は離れているから、同じ問題を解いていた現3年生がこちらまで来ることはないはずだ。

 だから私は教室から立ち去り、ロータリーへと急いだ。



「ああ……まだかな、黒川さん……」


 試験が終わったらすぐに迎えにきてくれるとは言っていたが、もしかしたら仕事が長引いているかもしれない。

 じれったくなって、噴水のすぐ近くのベンチに座った。


 今日の”仕事”は表の仕事だろうか。裏の仕事だろうか。

 最近は表の仕事が上手くいっているから、ゆくゆくはそちらをメインにしたいと言っていた。私としてはそちらの方がありがたい。

 誰かから搾取したお金で良いご飯を食べたり、好きな本を買ったりしていると思いたくない。


 とはいえ、裏家業から完全に手を引くことはないだろう。

 重要な財源だろうし、黒川さんが表で上手くやれているのは、裏の仕事を使って上手く誘導しているからかもしれない。

 実際、政治家や資本家を脅したり、官僚を買収したりしていると酔った勢いで言っていた。だから警察に捕まらないんだ。とんでもない奴め。



 季節は真冬。

 今日はいつもより気温が高いが、だからといって、長時間外にいられる気温ではない。

 ベンチに座っている数分間の間に私の体温はすっかり奪われ、室内に戻ろうかと思案していると、遠くから声が聞こえた。



「ランス様ぁ〜。さむ〜い」

「あっためてくださ〜い」


 うわ、媚びる女の嫌な声。

 ……いや、私も黒川さんのご機嫌とりするときはあんな感じだな。ひどいこと言ってごめんなさい。

 何かが、何かが近づいてくる……!



 中等部の校舎の方から、男子生徒2人が可愛らしい女子生徒数名に囲まれながらこちらに歩いてくる姿が見えた。

 黒髪の方はあまり周囲を気にしていないようだ。

 いや、あれは無視していると言った方が良いな。

 何というか……リアル取り巻きは初めて見たな。お金持ち学校だとああいうことがあるんだ。絶対に関わりたくない。


 もう一人の男子は、何と金髪に碧眼だった。

 まるで物語の世界から飛び出してきた王子様のようで、周りの女子がつきまとうのも不思議じゃない。

 こっちは女子に笑顔を振りまいており、彼女たちの言葉に逐一反応を示している。隣の黒髪とは対照的だ。


「あれ、今日は先客がいるね。誰だろう」


 げ、気づかれた。


「編入試験に来たんだろ。うちはセーラーじゃない」

「へ〜。僕はセーラーの方が好きだな。うん、同い年なら仲良くなれるかも。僕行ってくる!」


 あ、あの……なんか、金髪の方が走ってきたんですけど……ええっ……。


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