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俺は、電脳世界が好きなだけの一般人です  作者: 北きつね
第十章 ワンクリック詐欺
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第四話 犯人探し


 戸松先生に見せたパソコンのホーム画面は、いわゆるワンクリック詐欺に引っかかって、指示されたプログラムセットアップしたのだ。


 ホームにセクシーな女性がセクシャルな格好で表示されている。

 そして、金額と連絡先が書かれた画像になっている。


 質の悪いワンクリック詐欺を踏んだようだ。

 電脳部にも注意しないと駄目だろうな。ウィルスではないけど、プログラムのセットアップ制限くらいは付けておいて欲しかった。


「戸松先生。そんなわけで、犯人探しをしなければなりません」


「そうだよな」


「注意だけすればいいとは思いますが?」


「そうか、それを俺に任せるというのだな」


「はい。俺が言うのは無理ですので、戸松先生にお願いします」


「わかった。野球部とサッカー部とバスケ部だな」


「はい。履歴までは確認していませんので、その3つの部から攻めてもらえれば、犯人が解ると思います」


「処分も併せて任せてくれ」


「はい」


 戸松先生に犯人探しを頼んだが、俺は俺で別のラインから犯人の特定を行う。


「篠崎先輩」


「丁度よかった」


 元パソコン倶楽部。現在の電脳倶楽部の後輩の一人を呼んだ。


「なんでしょうか?」


 数少ない。まともだった元パソコン倶楽部の男子部員の一人だ。確か、下坂と呼ばれていたはずだ。


「手伝って欲しい」


「はい。僕で良いのですか?」


「下坂は、今回のパソコンの配布には、反対だったのだろう?」


「え?違います。反対だったのは、Windowsを入れての配布です」


「なぜ?」


「えーと。篠崎先輩は、お気づきだと思いますが、Windows だとアプリを勝手に入れたりする部が出てくると思ったからです」


「他には?」


「理由ですか?」


「特には・・・」


「そうか・・・。あっそうだ。今日、来てもらったのは、ログやプログラムの調査を手伝って欲しい」


「ログの調査?」


 ノートパソコンに移動させたサイトの情報を見せる。


「あぁ」


「これのURLがこれだ。SSLは使われていない」


「へぇ」


「悪いけど、サイトの動きは調べていない。それを併せて調べて欲しい」


「わかりました。ログは?」


「あぁそうだった。侵されているパソコンは、3台で1台は電脳倶楽部に置いてある。あと2台は生徒会準備室だ。ルータのログも見られるようになっている。アカウントは、あとで渡す」


「わかりました。レポートにまとめればいいですか?」


「そうだな。このURLを持ち込んだ奴が居ると思うけど、特定できる情報を探して欲しい」


「はい」


「生徒会から、電脳倶楽部への依頼と考えて欲しい」


「わかりました」


 二つ目の用事も終わった。

 報酬は、戸松先生と決めていた内容を伝えた。部活動の一環だから報酬は必要ないと行ってきたが、依頼は依頼なので、報酬を支払う。実際には、戸松先生が手配をするのだけど、報酬は報酬だ。


 さて、ユウキに連絡して合流してから帰るか!


『タクミ』


「こっちの用事は終わったぞ」


『うん。そうだ、タクミ。各部のパソコンって返ってくるの?』


 返ってくるって必要って事だろう。


「ん?OSを入れ替えて返すぞ?なんで?」


『宿題をやるのに丁度いいらしいよ。家に、パソコンがある子ばかりじゃないから、自由に使えるパソコンがあると嬉しいみたい』


「わかった。戸松先生に伝える」


『ねぇなんで、パソコンを引き上げたの?』


「ん?戸松先生から発表があるから少しだけ待って欲しい」


『わかった。この子たちが原因じゃないよね?』


「ユウキは、どこに居る?」


『今?文化部が集まっている所だよ』


「大丈夫。とばっちりを受けただけだ。2-3の注意点はあるけど、間違った使い方はしていない」


『よかった。そのまま伝えるね』


「あぁ俺は、生徒会室に居るから、終わったから来てくれ、一緒に帰ろう」


『わかった!』


 15分後に、ユウキは生徒会室にやってきた。

 後片付けをするのに、5分ほど待ってもらってから、一緒に帰った。


 帰り道で、食材を購入した。


 家に到着すると、雨が振り始めた。


「美和さんの所にも結構来ているな」


「うん。工業だけじゃなくて、中学や小学校からも来ているみたいだよ」


「そうか・・・」


 森下美和が始めたのは、子供の避難シェルターだ。

 ネットのいじめや誹謗中傷やリベンジポルノに晒された女の子を一時的に預かって、法律のちからを使って解決する。法律が及ばない時には、なんらかの対抗手段を取るのだと笑っていた。俺は、出会い系サイトの時に世話になった”まーさん”の顔が浮かんだが、美和さんが言うには、”まーさんは最後の砦”だと笑っていた。本当に、謎が多い”大人たち”だ。一番、わかりやすいのはオフクロだろう。他の大人たちは、仕事だけを聞けば”まーさん”以外は想像ができる。しかし、事情が全然わからない。一般的だと本人たちは言っているが、一般的な仕事をしている者たちが、自宅を持って、さらに子供のために家をつくろうとは思わないだろう。それも設計や素材や機能に、かなりのわがままを言っているのは、間違いはない。

 オヤジは工業の出身で、その時の伝手があると言っているが、ユウキはどうかわからないが、俺にはオヤジの様な伝手ができるような様子はない。

 家の設計は、建築科ができるだろう。家の建築は、土木科と建築科の合同だろう。家の配線は、電気科なら問題はない。細かい部分だが、細工がしてあったり、飾りが施されていたり、センスがいい小物が置いたのは、インテリア科を卒業した者だろう。塗料にも気を使ってくれている。機械部品も多く使われている。電子機器も当然のように使われている。もし、オヤジの知り合いだと言うのなら、オヤジは学校中に知り合いがいたことになる。それも、大人になってから協力してくれるような知り合いだ。

 俺も、学校には知り合いが多いが、ユウキを介しての知り合いが多い。オヤジと同じ年齢になったときに協力してくれるのかは未知数だ。


「どうしたの?」


「ん?あぁ少しだけ考えことをしていただけだ」


「ふーん。そうだ、ママがタクミに頼みたいって言っていたよ?」


「美和さんが?」


「うん。ママがミクさんの所と頻繁に連絡するのは面倒だから、ネット会議ができるようにしたいらしい」


「え?そんなの、オヤジの所に頼めば?」


「克己パパが、タクミと僕にやらせたらどうだと言ったらしいよ。それに、克己パパの会社は、男性社員ばかりだから、ママがダメ出しをしたらしい」


 ユウキの話は、時系列が前後することがある。

 思い出したままにしゃべるので、よくわからなくなってしまう。時系列で話をまとめてくれたら嬉しいのだが、出来ないのだ。


 今の話だと、美和さんは、最初にオヤジに頼もうとしたが、オヤジの所は従業員が男性だけなので、オヤジがそれで大丈夫なのか聞いたら、駄目だと言われて、俺とユウキの名前が出てきたという所だろう。美和さんが言ったのか、オヤジが言ったのかはわからないけど、断れるような話ではなさそうだ。

 実際に、美和さんから依頼が来てから考えれば間に合うだろう。


 未来さんの所とのネット会議だと、話を聞いてからにはなるだろうけど、センシティブな内容が話されるのなら、独自で構築したほうが良いかも知れない。いじめを受けていた女の子たちのアフターケアに使うのなら、手軽さを考えなければならないだろう。

 まだ、依頼が来たわけじゃないから、美和さんから正式に話が来てから考えればいいか・・・。


「ユウキ」


「ん?なに?」


「飯にしよう。何が食べたい?」


「うーん。今日は、カレーの気分!」


「わかった。肉は、鶏肉になるけどいいよな?」


「うん!チキンカレーだね」


 ユウキの頭を軽く抑えながら家に入る。

 カレーの材料と手順を考え始める。玉ねぎや馬鈴薯はまだある。チキンも胸肉があったはずだ。コンソメも粒状の物があったはずだ。人参は、ユウキがあまり好きじゃないから、我が家のカレーには人参は無い。その代わりに、玉ねぎを多めにするのが、俺たちのカレーだ。

 ユウキは、カレーにウスターソースとチーズをかける。俺は、そのまま食べるのが好きだ。

 明日の分も一緒に炊いておけば困らないだろう。


 計画が組み上がった。

 あとは実際に料理をするだけだ。手順を間違えなければ、ほぼ同時にできるはずだ。


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