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第三話 調査


 もう一度、北山に話を聞いてから、処分を下すことになった。

 特に、バイトの件は戸松先生も重く見ている。津川先生だけではなく、戸松先生も北山から直接話を聞くことになった。


 パソコン倶楽部の廃部が決まった。残っていた、部員たちは、津川先生が預かっている。戸松先生の電脳倶楽部に移籍することも考えたのだが、北山がやっていた部費の流用に関与していた可能性があるために、全員からの聞き取りと北山からの証言との整合性を確認してから、問題がない部員から移籍の話をすると決まった。


 俺は、そのまま大将の店で待っているユウキと合流して、家に帰った。


 焼きそばを食べたはずのユウキが何か食べたいと言い出したので、簡単にパンを焼いて、コーンスープを作って食べさせた。夜中にお腹が減ったと言い出す可能性を考えて、ホットサンドが簡単にできる準備をしておく。


 食事後に、食休みをしてから風呂に入った。


「タクミ。大将が言っていたバイトを調べるの?」


「生徒会で調べるけど、難しいと思っている」


「そうなの?」


「部活連が絡んでいるから、俺が調べ始めると、証拠を消し始めるかも知れないだろう?」


「そうだね。タクミ。部活連の3年生からは嫌われているからね」


「そうだな。別に気にしないけど、調べられないのが辛いな」


「ねぇタクミ。あのバイトに心当たりがあるのでしょ?」


「あぁ」


「僕でも解る?」


「どうだろうな。風呂から出たら、秘密基地で説明するから聞くか?」


「うん。解らなくても・・・。怒らない?」


「ハハハ。怒らないよ。でも、ユウキに説明して、わかれば、ユウキが調べられるかもしれないな・・・」


 俺が調べられなければ、ユウキが調べればいい。

 やっている連中が解らなくても、誘っている連中がわかれば、そこから芋づる式に調べることはできるだろう。


 ユウキのスマホを、今、使っている物じゃなくて、セキュリティが強化されている物に変更しよう。


 風呂から出て、身体を拭いてから、ユウキにスマホを持ってくるように頼んだ。

 スマホの入れ替えをしながら説明を行う。


 俺の想像が間違っていなければ、メールに返信するバイトだろう。

 メールではなく、システムを使っているかもしれない。どちらにせよ。ユウキのメールアドレスは秘匿しておきたい。

 ユウキも俺も学校には、俺が持っているドメインで作ったメールアカウントを登録している。キャリアメールは持っているが、家族間の連絡にしか使っていない。


「タクミ?」


「あぁまずは、仕組みだけどな。多分だけど、出会い系か、似たようなサイトのサクラのバイトだと思っている」


「へぇ・・・」


「出会い系は解るよな?」


「うん。友達のメールに何通も送ってきて面倒だって言っていたよ」


「あぁそうそう、あれから誘導されて、システムに入る。最初は、無課金でやり取りができるけど、無料ポイントがなくなると、1通いくらって感じで課金される」


「へぇ。それで、儲けられるの?」


「ん?システム側が?バイトをする奴らが?」


「両方?」


「システム側は、太い客を2-3人捕まえられれば、成り立つと言っていた。オヤジに聞かないと、トレンドがどうなっているのか、わからない」


「へぇ克己パパに聞けば解るの?」


「あぁ多分だけど、オヤジはシステムを作った事があると思う」


「そうなの?」


「昔、教えてもらったから、間違いはないと思う」


「それで、バイトは?」


「そうだな。どういう話になっているかわからないけど、1通300ー500円相場らしいから、その1/10が取り分として考えれば、30ー50円くらいかな。多分、紹介者に、一人1万とか5千円とか入っているだろう」


「え?」


「ん?何を驚く?」


「紹介料で、1万円とかすごくない?」


「そうだな。でも、これから稼いでもらうと考えたら、そのくらいは安いと思うぞ、それに紹介者が居れば、途中で辞めたり、抜け出そうとしたりしないだろう?」


「あっそうだね」


 ユウキに簡単に仕組みを説明して、調査のターゲットを説明する。


「それで、僕はどうしたらいいの?」


「ユウキに、バイトを進めてくることはないと思う」


「え?なんで?」


「ユウキが、俺と付き合い出したと、結構の人間が知っているよな?」


「え?あっうん」


「女子では知らない人は居ないだろう?先生も知っているくらいだ」


「へぇ・・そう・・なの?」


「あぁ誰かが話して歩いたようだ」


「そう・・・。噂って怖いね」


 ユウキはとぼけているつもりなのかもしれないが、目が泳いでいる。

 元パソコン倶楽部の後輩から聞いたら、噂の出本はユウキで間違いはない。それを別に咎めようとは思わない。ユウキに、変な蟲が寄ってこなくて嬉しい。


「あっ話は戻すけど、どうやら、バイトの斡旋を始めたのは、部活連だと思う」


「そうなると・・・。そうだね。タクミに関係している、僕にバイトを進めてこないね」


「そうだな。それで、ユウキは、女子でメールに返信するだけとか、スマホで特定のアプリを入れて返事をするバイトに誘われたという話を集めて欲しい」


「わかった」


「3年と1年を中心に頼む」


「2年は?あっそうか、タクミが居るから、2年女子は誘われないか?」


「ユウキも居るし、話が俺に伝わると面倒だと思っていれば、2年女子は後回しになると思う」


「わかった」


「そのときに、誰から誘われたのかを聞いて欲しい」


「うん。でも、メールを返したりするだけだよね。問題があるの?」


「うーん。美和さんや未来さんに聞かなければわからないけど、例えば、メールで”会いに行きます”なんて返したとして、実際には最初からそんなつもりはないよな?」


「うん」


「そうなると、騙す目的だったって事で、詐欺になると思う。それに、30円や50円でも、バイトには違いない。だから、学校に届けていないのは問題だ」


「そうだね。バイトなら届け出が必要になるよね」


「あぁ生徒会で管理しているからな。許可の有無も大切だけど、届け出を出していないのが問題だ」


「わかった。先輩や後輩には、それで話をしてみるよ。詐欺云々は別にして、バイトの届け出が必要って説明していいよね」


「大丈夫だ。俺の名前を出してもいいし、生徒会につれてきてもらってもいい」


「わかった」


「俺は、明日からしばらくの期間、放課後の時間は、生徒会室に居る」


「うん。それじゃ僕も帰る時に、生徒会室に行けばいい?」


「あぁ」


 交換していた、ユウキのスマホの設定が終了した。

 ユウキに渡しながら説明する。


「うん。わかった」


 ユウキにスマホを渡した。

 俺のスマホも変えておこう。ユウキに先に寝室で寝ていてもいいと言ったが、ソファーで見ていると言うので、スマホからタブレットに交換する作業を行った。


 メールをチェックして緊急性があるメールがないことを確認して、ユウキを起こして寝室で寝た。


 翌日、学校に行くと、戸松先生から呼び出しが入った。

 職員室に行くと、戸松先生と元パソコン倶楽部の後輩たちが来ていた。


「話はわかった、篠崎に伝えておく、お前たちは教室に戻れ」


 後輩たちの話が終わったタイミングだったようだ。


「篠崎先輩!」


「あぁ話は、戸松先生から聞くから、教室に戻ったほうがいいぞ?もう授業が始まるぞ?」


「先輩は?」


「朝1の授業は・・・」戸松先生を指差す。


「あっわかりました。戸松先生。失礼します。篠崎先輩。よろしくお願いします」


「ん?あっあぁ」


 後輩たちが小走りで職員室から出ていった。


「戸松先生?」


「篠崎。まぁいい。歩きながら話をする」


 戸松先生は、他の科の先生が居る時には、生徒は”くん”や”さん”で呼ぶが、同じ科の先生や生徒だけの時には、周りに人が居なければ、呼び捨てにする。


「なんでしょう?」


「お前の悪い予感が当たりそうだ」


「え?」


「さっき後輩たちが来たのは、北山に、”簡単な小遣い稼ぎ”を、やらないかと言われたそうだ、バイトじゃないから、学校に届ける必要がないとまで言ったようだ」


「・・・。それで?」


「放課後に時間を貰えるか?」


「大丈夫ですよ。生徒会室に居ます」


「わかった。できれば、篠崎だけと話をしたい」


「わかりました。まぁ大丈夫でしょう」


 そこまで話をして、教室に着いた

 戸松先生が授業を行った。放課後までに、ユウキがある程度掴んできてくれると助かるのだけどな・・・。


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