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やりこみ好きによる領地経営~俺だけ見える『開拓度』を上げて最強領地に~  作者: 空野進
2.2.S級毒草と深淵の森の魔女

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4.偽白龍王

「はぁ……、はぁ……、そ、それで白龍王様の偽者が妾の領地を漁っていたのですね」


 へこへことエーファに対して頭を下げているルルを見ていると、なんだか悪いことをした気持ちになってくる。

 一方のエーファは偉ぶって体を反っていた。


「それで、このエーファと勘違いしたちびっ子は、我が主様にいつまで立ち話をさせているつもりだ? お茶の一つでも出せないのか?」

「……!? す、すぐにご用意します。つ、付いてきて下さい!」


 エーファを完全に怯えてしまっているルルが、おどおどとしながら俺たちを深淵の森の奥へと案内してくれる。


「えっと、そこまで無理をしなくて良いんだぞ?」


 さすがにいきなりやってきて、無理やり脅しているみたいに感じて、遠慮してしまう。


「そ、そんなことはありませんです。ど、どうぞ、狭いところですけど……」


 ルルの家はと入る。

 確かに中は小さな部屋が一つだけ。

 更にそこに巨大な鍋やたくさんの薬瓶、乱雑に散らばった本などがあるので、部屋の中は更に狭く感じてしまう。


「本当に狭いわね」

「だ、ダメですよ、ラーレちゃん!? 私たちが突然きたから悪いんですよ?」

「私の部屋みたいで落ち着くね」

「し、シロちゃん!? ま、また散らかしてるの!?」

「ソーマ様をこんなところに座らせるわけにはいきません! 少しお待ちください。全てのものを捨てて参ります」

「主様のために家ごと燃やし尽くしますね」

「珍しく意見があったな。トカゲにしておくには惜しいぞ」

「ふっ、筋肉ダルマかと思ったが、ようやく知恵をつけてきたようですね」

「えっ、えっ、す、捨てたらダメなのじゃ!? こ、ここは妾の研究部屋なのじゃから……」


 ルルが大慌てで散らかったものを守ろうと両手を広げていた。


「大丈夫、燃やしたりなんてしないからね。でも、大勢で押し寄せちゃったから、やっぱり狭いね……」


 素直に感じたことを述べる。

 そればっかりは何も間違ったことは言っていないはず……。

 ただ、ルルはガックリと肩を落としていた。


「や、やっぱりそうだよね? うん、妾も分かっているんだ……。ここがかなり狭いことは……。でも、妾にはこれ以上大きな家にすることも叶わんからな……」

「そっか……」


 それならここで建築を行えば、大きい建物に変えることができるんじゃないのか?

 そんなことを考えたが、残念ながらこの深淵の森は俺の領地ではない。

 だからここで、俺のスキルから建築を行うことはできなかった。


「それなら俺の領地にこないか? ここより大きい建物を準備することができると思うぞ?」

「うっ……」


 ルルが言葉に詰まっていた。

 これはもう一押しあれば仲間になってくれるんじゃないだろうか?


「もしかして、ルルは自分の研究所を欲しいんじゃないか? 俺の領地に来てくれるならそれも準備できるが?」

「うぐぐっ……」


 凄く口を噛みしめている。

 やはり、この家だと色々と不自由があるようだ。

 ただ、俺の説得を邪魔してくる奴がいた。


「つべこべ言わずに主様がこれほど頼んでいるのだから、早く頷くといい!」

「ひっ!?」


 ルルが小さく悲鳴を上げて、俺の後ろに隠れてしまう。


「や、やっぱり妾はここの家を出るわけにはいかないのじゃ。恐ろしい領地になど行きたくないのじゃ」

「そっか……。それならしかたないね。諦めるよ……」

「あぅ……」


 俺が引き下がろうとするとルルが寂しそうな声を上げる。

 ルルの本心がわからない。

 誘って欲しいのかそうでないのか、どっちなのだろうか?


「とりあえず、俺たちがドラゴンを追い払うまでの間に考えてくれたら良いから、一度検討してくれないか? ルルに協力できることがあったら何でもするから――」

「そ、それじゃあ、一つだけ質問をしても良いか?」

「あぁ、もちろんだ」

「もし、妾が領民になったら、そのときはそなたが薬を作ってるところを見させてもらっても良いか?」


 薬って、ボタンを押して、適当に混ぜていくだけなんだけどな……。


「そんなことで良いのなら全然構わないぞ?」

「ほ、ほんとうじゃな!? 約束をしたぞ!? 嘘をついたら許さないからな!」


 今日一番の反応を見せてくるルル。

 そこまでうれしいことなのだろうか?

 とにかく、まだ領民になってもらえるチャンスが残っているので、そこだけは良かったかもしれない。



「ねぇ、さっきこの家にいたいって言っていたわよね?」


 俺とルルが話しているとラーレが間に割って入る。


「うむ、それは言ったが?」

「それなら、この深淵の森もソーマの領地にしてしまえば良いんじゃないかしら?」


 ラーレがあっさり言ってのける。

 でも、よく考えるとそれが政界かもしれない。


「そっか……、それがあったな」

「で、でも、また魔物をたくさん倒さないといけないのですよね?」


 クルシュはどこか心配そうな顔をしていた。


「でも、今はアルバンもエーファもシロもいるからな。ランクアップクエストは問題ないと思う。あとはそこまで経験を集めることだけだな」

「経験……。わ、私も剣を振ったら良いのですか?」


 クルシュが剣を振るところを想像してみる。

 まずは、クルシュが振るのではなくて、クルシュが振り回されているように思える。

 当然ながら狙ったものに当たることはまず内だろう。

 下手をすると自分が怪我を――。

 いや、側にいる俺が切られる可能性すら想像が容易にできた。

 それを考えるととてもじゃないおけど承諾はできない。


「く、クルシュは別の経験を積んでみないか? ほ、ほらっ、今までは全く聖魔法の練習をしていなかったわけだから、それをシロに教えてもらうとか……」

「聖魔法……ですか? 私、聖女見習いの時に何度も使おうとしたのですけど、全然使えなかったのですよね」


 一応、クルシュのステータスには低いながらも聖魔法のスキル欄がある。

 それに、魔力もないわけではない。

 だから使えない、ということはないはず。


「シロちゃんに聖魔法を教えたら良いんだね。任せて! 芸術は爆発だよー!」

「ば、爆発させたらダメですよー!?」


 取りあえず、これで戦力レベルが少しずつ上がっていくはず。


「アルバンは建築を続けて頼んでもいいか?」

「お任せ下さい。このアルバン、細部にまでこだわって建築していきます!」


 アルバンの建てた家はおおむね好評かを得ている。

 今にも崩れそうな教会を作ってしまった俺とは大違いだ。

 スキルを持っていないから仕方ないことかもしれないが。


「アルバンが建物ならエーファはなにをしたらいいの?」

「そうだな……、エーファは領地回りに危険がないか、調べてくれるか?」

「もちろんです。お任せ下さい」


 今すぐに飛び出そうとするエーファ。

 それを俺が慌てて止める。


「ま、まだだぞ? これから後始末に行かないと行けないからな?」

「おっとそうでしたね。さっさと偽者を血祭りに上げて、領地へ戻ってソーマ様からいただいた大切なお仕事をしましょうか」

「ま、まぁ、程ほどにしてくれ。他にすることがあったら優先してくれて良いからな?」

「主様より直々に賜った仕事以上に大切なことはありませんよ!?」


 エーファがきっぱりと言い切ってくる。


「そう言ってくれるのはうれしいが、無理をさせていないか心配でな……」

「主様のために働くことこそがエーファの幸せですからね」


 まぁ、ここまで言ってもエーファがそう言うのだから、間違いないと考えて良いだろう。


「わかった。それじゃあ、エーファの力には期待してるからな?」

「は、はい! ソーマ様の期待に応えられるように、まずはこの家を燃やしてしまいます!」

「だ、ダメじゃ!? ここは妾の大切な家じゃ。燃やされたら今後どこに住めば良いのじゃ?」

「それじゃあ、そろそろ出発するか? その偽白龍王を倒すために」

「そうですね。エーファもいつまでも偽物をのさばらせておくのは気持ちが良くありませんから……」

「私はソーマ様にどこまでもついていきます。それが危険なドラゴンの下へだろうとも……」

「エーファもドラゴンだー!」

「むっ? お前はトカゲだろう?」

「誰がトカゲだ!? この筋肉ダルマめ!」


 やっぱり最後には二人で喧嘩を始めていた。


「もう、その二人は置いておいて、現地に向かいましょう。もしかしたら私たちだけじゃ戦力がたりないかもしれないんだからね」

「ドラゴンステーキ、ドラゴンステーキ……」

「くっ、やっぱりそなたはエーファの敵……」

「シロちゃん、いつもみたいに爆発したらダメだからね」

「わ、わかってるよ。大丈夫。私はじっと後ろで焼けるのを待っていたら良いんだね?」

「別に食事をしに行くわけじゃないんだからな。危険なことだけはしないでくれ」


 いきなり魔物に向かって、突っ込んでいきそうな恐ろしさはある。

 さすがにそこまでしないとは思いたいけど、念のために釘を刺しておく。

 すると、シロは少し慌てながら応えてくる。


「そ、そ、そんなことしないよ。いくらドラゴンがおいしそうに見えても。おいしそうに……。じゅるり……。はっ!? お兄ちゃん、誘導尋問をしたね!?」

「一切してないんだが……。クルシュ、一応シロが飛び出さないように見ておいてくれるか?」

「あははっ……、わかりました」

「クルシュちゃんの裏切り者ぉ……」


 シロはその体をクルシュに掴まれていた。

 そして、そのまま引きづられていった。


「それじゃあ、ルル。道案内をよろしく頼む」

「あ、あぁ、わかったのじゃ……」


 ルルは訳もわからずにただ、頷いていた。

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『滅びの魔女の謀(はかりごと)』

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