14.聖女の定住
とりあえず、今はビーンのことを気にしていても仕方ない。
それよりも先に教会を完成させないといけない。
俺は完成図を見ながら、ゆっくりと作り始める。
その横でラーレも色々と手伝ってくれる。
すると、そんな俺たちの下にクルシュやシロが近づいてくる。
「ソーマさん、今日も建物の建築ですか?」
「あれっ、この完成図って?」
シロが勝手に俺の持っていた図面をのぞき込んでくる。
「あぁ、教会だな。シロがいるのに教会がないとダメかなと思ったんだ」
「ありがとうね。なら、もちろん私も手伝うよ!」
「それなら私もお手伝いしますね」
シロとクルシュも教会作成の手伝いをしてくれることとなった。
まぁ、あまり建築に詳しくない四人が作っていった結果、ただでさえボロボロの建物が更に歪な形になっていく。
それでも、何もないよりはいい。
むしろ、その歪な形が俺たちらしいかもしれない。
そして、予定よりもずいぶんと早く完成していた。
完成した……といってもいいのか悩むところだけどな。
「なんだか変な形じゃない?」
「そんなことないですよ。私たちの努力の結晶ですよ」
「あははっ、変な形ー」
シロが大口を開けて笑っていた。
「まぁ、形はどうしてもアルバンと作ったものを比べるといまいちだけど、それでも俺たちが作ったものだからな。味が出ている……といえばいいか?」
「そ、それに教会があるって事は、仕事に復帰――」
「ご飯が寄付して貰えるね!!」
シロが笑みを浮かべていた。
「ご飯基準なんだな、相変わらず」
「ご飯は命の源、神のお恵みだからね。聖女たる者、そこを疎かにするわけにはいかないよ」
「ま、まぁ、それは間違いないのか……。ものはいいようだな……」
みんなで完成を祝い合っていると、商人であるビーンが感心したように近づいてくる。
「ついに完成したのですね。そして、あなた様が聖女様……。初めまして、私は商人をしておりますビーンと言います。この領地でも商いをしております。以後お見知りおきを」
そう言いながらビーンがそっと、金品を差し出してくる。
賄賂……というものだろう。
上のものとつながりを持つためには当然と言えば当然のことだろう。
ただ、相手がシロと考えるとまた別のことだった。
受け取った金の延べ棒をそのまま口へと運んでいた。
そして――。
ガチッ!!
思いっきり延べ棒をかじっていた。
「固っ!? まず!? ぺっぺっ……」
即座にその場で吐いていた。
「はははっ、シロには効果がなかったな」
「えぇ、そうみたいですね。また今度は別のものを用意させていただきますね」
ビーンも苦笑をしながら、吐かれた金の延べ棒を拾っていた。
「では、教会ができたと言うことで、ちょっと私も仕事をしてきますね」
ビーンはそれだけ言うとその場を去って行った。
そして、彼が何をしに行ったのかわかるのは、しばらくしてからだった。
◇
いつの間にシロがここにいるのが広まったのか、領地の知名度がグッと上がっていた。
確かに聖女がここにいるのだから、人が来ることは何もおかしくない。
元々、王都の教会に人が集まっていたのも聖女がいたからなのだから……。
そっちに行っていた人が流れて来ても何もおかしくない。
大量の人が来た結果、この領地には今まで以上に人が訪れていた。
そして、人の集まるところに商売がある。
バルクの商店はもちろんのこと、新しいお店がいくつか出来上がっていた。
武器屋、 防具屋、 後は食材の置かれた店や細々とした雑貨屋。
もちろん、それらはビーンが用意したもの。
そして、たくさんの領民や商店が増えたことで、領地レベルが順調に上がっていた。
【領地レベル】 4(19/32)[村レベル]
『戦力』 13(2/80)[人口](17/23)
『農業』 9(1/50)[畑](8/9)
『商業』 10(1/55)[商店](6/9)
『工業』 15(21/90)[鍛冶場](1/1)
この調子であげ続けたら次の領地レベルまでもすぐに上がってくれるだろう。
まだまだ先は長いけど……。
「あはは……、すごい人ですね」
クルシュは苦笑を浮かべていた。
「そうだな、 さすがは聖女だ」
「シロちゃんを呼び寄せたのも、ソーマさん自身のお力ですよ?」
「俺は特に何もしてないんだけどな……」
多くの人が来てくれたことがメリットの一つ。
そして、次のメリットだが……。
「せ、聖女さま! 怪我人が!!」
「すぐに連れてきて」
「聖魔法を……。聖魔法をお願いします……」
「えっ!? 聖魔法で良いの?」
ドガァァァン!!
うん、いつものシロらしい……。
俺は慌てて、回復薬を届ける。
そして、回復魔法を使えないシロのために回復薬を大量に教会に寄付することを決めていた。
やはり、回復をしてもらおうとすると、みんな教会へと行ってしまうからな。
でも、その結果、いち早くけが人の把握ができることと、治療をすることができた。
その素早い対応のおかげで冒険者の数も増えていた。
彼らは領地に定住することはないものの、安心して魔物狩りができることもあり
知覚の森でたくさん見かけていた。
これは近くの森に危険な魔物が多くいる俺の領地だと凄く助かることだった。
更に安全に魔物を倒せると、冒険者の数が増加し、危険な魔物の数も減少していた。
更に更に、魔物の素材も大量に俺の下へと運ばれていた。
「素材増えるな……」
「ありがたい限りですね」
「ちょっとあんたたち!! こちら手が回ってないんだから手伝いなさいよ!」
大慌てのラーレが俺達を呼びに来る。
その手には運ばれてきた大量の素材が持たれていた。
「あー、分かったよ、今手伝う。クルシュは一応聖女は見ていてくれるか?」
「分かりました。食材を持って側で待機していますね」
「そうだな、それで頼む」
クルシュに頼むと、俺はラーレの後についていった。




