13.壊れた教会
手紙を送った後、俺はシロについて考えていた。
この領地に来てもらったは良いけど、この領地にはまだ教会はない。
一から作った方が良いだろうか?
そんな疑問も浮かんでくる。
しかし、今は考えないことにした。
どうせ、教会を作る素材が集まったとしても――。
言葉の途中で、脳内にファンファーレのようなものがなり響いていた。
誰かのレベルが上がったらしい。
いや、違うか。
どうやら新しく作れる建物が増えたようだった。
『現在建築できる建物になります。どちらを建築しますか?』
→古びた小屋
古びた家
壊れかけた教会
材料が足りているのか、もう教会を建築することが出来るようになっていた。
まぁ、『壊れかけた……』と付いているのは、古びた小屋とかと同様で、一番最初に作れる低ランクの建物……、ということなのだろう。
ただ、これも詳細を調べたらはっきりすることだった。
【名前】 壊れかけた教会
【必要素材】 D級木材(15,000/10,000)
【詳細】 いつ倒壊してもおかしくないほど、ボロボロになっている教会。神を信仰するのに場所は問わない? 木製の神体が置かれている。
ボロボロの建物なのにD級の木材を使うのか。
でも、材料自体はかなり前から持っていた。
つまり、この教会を作れるようになった理由は、やっぱり聖女であるシロがこの領地に来たことが理由なんだろうな。
今は建築を担当してくれているアルバンがこの領地にいないので、作るのはどうかと思うが、それでも早めに作った方が良いだろう。
建築途中に戻ってきてくれて手伝ってくれるかもしれない。
そこまで考慮すると、今すぐにでも建築をする……という選択肢になってくる。
「ええい、ままよ!」
目を閉じながら、建築するの選択肢を選ぶ。
すると、例のごとくいくつもの木材が現れる。
それと同時に表示される制限時間。
『120:00:00:00』
今回はかなりの時間があるようだ。
その分、作業も複雑化されており、今まで付いてこなかった作成手順が書かれた紙もポツンと出てきた。
木をどのように切るのか。どうやって組み立てていくのか。そして、完成図。
ここまで付いているのなら俺たちだけでも何とか作れそうだ。
材料の確認をしていると、ラーレが現れる。
「また何か作るのかしら?」
ずいぶん慣れた様子で、ラーレも俺と同じように材料を調べていた。
「また住宅かしら? でも、この綺麗なガラスは何? 今までなかったわよね?」
「いや、これは教会だな。聖女がいるのに教会がないのも変だろう? あと、聖女を見るために人が来てくれるかもしれない。そこまで見越して作っておいた方が良いかなって思ったんだ」
「確かに人は来そうね。でも、そうなってくるともっと店が欲しくない? 今あるバルクさんのお店でなんでもそろうって言っても、やっぱりお店がたくさんあるのは雰囲気が良いわよね?」
「それもそうだな。早く誘致したいところだな」
ただ、肝心の人の伝手が俺にはない。
いや、クルシュとラーレをこの領地に連れてきてくれた行商人くらいか。
「あの行商人、最近見かけないけどどこに居るんだろうな?」
「私の事を呼びましたか?」
ふと気になった瞬間に、どこからともなく現れる商人。
ただ、その態度は以前と全く変わらず、へこへことした笑みを浮かべていた。
「ちょうど良いタイミングだな。まるで計っていたようだ」
「いて欲しいタイミングに現れる。それが私のモットーですからね」
「それなら俺の要望もわかっているんだな?」
「もちろんにございます。だから、私もこちらへ引っ越してこようと準備しております」
確かに商人の後ろには大量の荷物が積まれていた。
「い、いいのか? ここは辺境であまり客は来ないと思うぞ?」
「いえ、私の目に狂いがなければこれからこの領地は反映していく、と踏んでおります。だからこその先行投資です。商売はギャンブル。当たるも当たらないも掛けにございますので、ソーマ様はお気になさらないでください」
「いや、お前がそれなら良いんだが……」
ただ、信用しても良いものか……。
いや、それは水晶を見たらはっきりとわかるか。
さっそく俺は商人を調べる。
……。
うん、表示されない。
やはり、何か別の思惑があるようだ。
この商人、ビーンはここの領民になるつもりはなさそうだな。
「家は適当に使ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
ビーンは笑みを浮かべながら頭を下げていた。




