12.『空腹』
結局シロはクルシュの隣の家に住むことになっていた。
そして、俺が臨まないにも拘わらず領民となったことでシロのステータスも見ることが出来るようになった。
【名前】 シロ
【年齢】 16
【職業】 聖女
【レベル】 28(0/4)
『筋力』 5(214/300)
『魔力』 80(624/4050)
『敏捷』 20(6/1050)
『体力』 7(95/400)
【スキル】『聖魔法』14(651/7,500)『空腹』5(984/3,000)『逃げ足』7(1,158/4000)『説得』2(63/1,500)
本当に聖女で間違いないようだった。
しかも、昨日使っていた爆発も聖魔法だったことがこれで証明されてしまった。
ただ、問題はいくつかある。
まずはシロ自信に『採取』のスキルはないこと。
ここから昨日の毒草がもしクルシュが見つけたものだったら、AないしはSランク相当の毒草だったことが証明されてしまった。
これはかなりもったいないことをしたかもしれない。
しかし、今更そんなことを言っても仕方のないことだった。
ただ、その頃よりももっと気になることg他ある。
「なんだ、このスキル??」
理由はわからないのだが、シロのスキル欄に『空腹』なんてものがあった。
ただ腹が減るだけの能力?
そんなもの、バッドスキルにしか思えないのだけど……。
ただ、調べてみないことにはなんとも言えない。
俺は更にそのスキルを詳細に表示することにした。
『空腹』
腹が減っては戦ができない。つまり、空腹を満たせばいくらでも戦争ができる。
食事を取れば、その量。その回数に応じて、魔力経験値に加算される。
まさかの経験値増加系スキルだった。
これだけみると大当たりの部類だ。
しかも、シロのステータスを見る限り、本人が意識していないにも拘わらず大成功の結果に収まっている。
「なるほどな……、いくら食事しても腹が減るのは、食べたものを自動的に経験値へと変換しているからか。いくら食べても空腹を満たせない……。あれっ? やっぱりバッドステータスか?」
判断に困るスキルだ。
そして、レベルだけど、アルバンとほぼ同等。
この領地に住むのなら十分に戦力として数えても良いほどのレベルではあった。
特に今はアルバンとエーファが出かけている。
とてもありがたい存在だ。
◇
「さて、……シロのことをなんて話そうか?」
俺は机の前に座ると、必死に手紙と向き合っていた。
宛先は教会。
ここにシロがいることを報告して、決して誘拐目的ではなく、勝手に来たことを伝えようとして、こういう手段になっていた。
しかし、いざ書くとなるとどうしても筆が止まる。
「あーっ!! そもそも俺は誰に対して送れば良いんだ!? 今日下院最高責任者って一体誰になるんだ!?」
「あれっ? 手紙? 教会の最高責任者ならわざわざ送らなくても直接言葉で発してくれてもわかるよ?」
もしかして念話とかそういった類いの魔法も使うことができるのだろうか?
それなら確かに便利だが、そもそもここは俺の私室。
どうしてシロが部屋の中にいるんだ?
「クルシュちゃんに呼んできて欲しいって言われたんだ。お兄ちゃん、考えごとをしているときは周りが見えなくなるからって」
「べ、別に回りが忌め無いわけじゃないぞ?」
「でも、お兄ちゃん、シロがこの部屋には行ってきたことも気づいてなかったよね? 一応ノックはしようとしたんだからね」
「それは気づかなくて悪いな……。って、仕様としただけなら気づくはずないだろ!?」
「だって、お兄ちゃんが中で気になる話をしていたからついついね。それよりも、伝える事って何かな?」
「あぁ、悪い悪い。ここにシロがいることを伝えた方が良いかなって思ったんだ」
「うん、確かに聞いたよ。でも、私の事ならわざわざ言わなくて良いのに……」
「いや、領主としてそこはしっかりしておかないといけないところだからな。これからこの領地にシロが住んでいく以上避けられないことだ」
「だって、その教会の最高責任者が私だからね? 聖女は教会のトップだよ?」
「へっ??」
だって、昨日の話を聞いていると、誰か教会のトップがいて、その人が見習を集めて聖女教育を施しているだけ……だと思っていた。
出も実際は全く違うようだった。
「私、トップ。お兄ちゃんが言いたいこと、把握。おけー?」
「あ、あぁ……。大丈夫だ」
でも、これは手間が省けてくれる。
一応もう一つシロにお願いをしておこうか。
「それならここにシロがいることを一応教会の人に伝えてくれるか? もし探していたら困ることになるだろう?」
「だ、大丈夫だと思うよ?? ほ、ほらっ、私は別に探すような人ではないからね?」
さっきまでの話は淡々と答えていたのに、急に歯切れが悪くなるシロ。
「――もしかしてここにいることがバレたくないのか?
「そ、そそ、そんなことないよー!? 私がここにいることは教会のみんな知っていることだからね?」
昨日の会話とは全く違うことを急に言い出すシロ。
その時点で嘘をついていると言うことがわかってしまう。
「まぁ、いいか。どうせ俺が送らないといけないんだからな」
「わ、わかったよ。わ、私は行くね?」
今すぐにでもこの場から逃げさりたい……、という思惑をひしひしと感じる。
まぁ、今ここでとどめておく理由もないので、扉を開けてシロを見送っていた。




