3.城壁作成
石が集まると次はどこに擁壁を作るか、が問題になってくる。
一度作ってしまった上で町を広げるとなったら、また作り直しになる恐れもあるからだ。
「アルバン、この領地ならどのくらいの壁があったら良いと思う?」
「今でしたら、町をすっぽり覆う程度で十分かと……」
「いや、将来で考えると人が増えるからな。そうなったときにどのくらいの大きさが必要になりそうだ?」
「ソーマ様のご威光を考えますと、この国を覆っても足りないかと思われます」
当然のように言ってくるアルバン。
それを聞いた瞬間に俺は話す相手を間違えた、とため息を吐いていた。
「いや、さすがにそこまで大きくなったときは別で考える。一般的な町の広さだとどのくらいになりそうだ?」
「そうですね……。それでしたら当面は今の倍くらいの広さがあれば、問題ないかと思います」
今でも建物の数を考えると数十人は優に暮らせる。
その倍、と考えると百人程度が住める範囲……ということになるな。
確かに一旦城壁を作る範囲、と考えると妥当かもしれない。
「ありがとう、アルバン。助かるよ」
「いえ、これも全てソーマ様のためを思ってしているまででございます」
「いやいや、いつもアルバンには助けてもらっている。感謝してもしたりないよ」
素直にお礼を言うとアルバンは目に涙を浮かべていた。
「そ、ソーマ様からそのような謝辞をいただけるとは……。このアルバン、一生胸に刻みつけます」
「いやいや、大げさすぎるぞ……」
苦笑を浮かべてしまうが、アルバンは首を横に振る。
「いえ、むしろ足りないくらいです。そうですね、今の言葉は我が家の家訓として一生教え伝えようかと――」
「そ、それはやり過ぎだ……」
本当にやりかねないアルバンの行動を止める。
「そ、それよりもおそらく壁を築く工事が必要になる。人を集めてくれないか?」
「はっ、かしこまりました! すぐに集めて参ります!」
アルバンは敬礼をすると、大急ぎでその場を去って行った。
あとに残された俺は、早速城壁作りを開始する。
『現在建築できる建物になります。どちらを建築しますか?』
→城壁
やはり、ランクDの石材が城壁に必要な素材だったようだ。
しっかり、水晶にその表示が映し出されていた。
さらに、その詳細情報を表示する。
【名前】 城壁
【必要材料】 D級石材(1025/1000)
【詳細】 外敵の侵入を抑える石壁。それなりの強度を持っている。
よし、大量に石も集めたからな。
十分すぎるほどの量がある。
あとは、それこそ建築をするだけ……。
俺はアルバンが戻ってくるのを待っていた。
そして、集まったのは四人だった。
「な、なによ、いきなり呼び出して……。私はまだ食事中なのよ!?」
「えっと、ご飯は食べ終わってからで良かったんじゃないでしょうか? ソーマさんもそのくらい待ってくれると思いますよ?」
「主様ー、私が一番に来ましたよー。ほめてくださいー!」
「大トカゲ! お前、ソーマ様になんたるご無礼を。やっぱりここで成敗してやる!」
「なんだ、髭だるま。やるのか!? 今日こそはこんがり肉に買えてやろう!」
やってきたのはいつものメンバーだった。
ただ、相変わらず騒々しくて、全くまとまりが取れていない。
串に刺さった焼き魚を食べるラーレ。
そわそわと俺やラーレ、アルバンやエーファをキョロキョロ見渡しているクルシュ。
喧嘩を始めるアルバンとエーファ。
その様子にため息が出てしまう。
「とにかく、今からこの領地が魔物に襲われないようにするために城壁を作る。手を貸してくれるか?」
「主様のためなら魔物くらい焼き払いますよー?」
エーファが首を傾げながら言ってくる。
「いや、そんなことをしたら山火事になってしまう……。人間が生活をする上で必要になる物なんだ。だから、エーファにも協力して欲しい」
「そうなんですね。わかりました。主様の頼みならエーファはいくらでも。髭だるまの倍は働きますよー」
「なにをー! 建築で私を上回るつもりか? トカゲ風情に負けるはずないだろう!」
「もぐもぐ……、ご飯終わってからなら良いわよ」
「あ、あははっ……。私も出来ることは手伝いますね」
皆の協力を得られることが決まったので、俺は早速水晶から城壁作成のボタンを押していた。
すると、目の前にはたくさんの石材やモルタル。使用する道具が現れ、水晶に『60:00:00:00』の文字が浮かび上がる。
60日で作らないといけないのか……。
中々ハードなスケジュールになりそうだ。
俺たちは早速、城壁作成に取りかかるのだった。




