2.岩を運ぼう
石ころをたくさん集めて一旦固めていた。
一つ一つ運ぶ分には何も問題はなかったのだが、数多く集まったタイミングでその問題に気づいてしまった。
「こ、これ……、どうやって持って帰ろうか……」
数が多くなりすぎて持ち運ぶにはかなり大変な量となっていた。
そもそも草と違い、一個一個の重量がそれなりにある。
それが数多く集まってしまったのだから、持ち運びに困るのは必然でもあった。
「クルシュ……も運べないよな」
「は、はい……。もうしわけありません」
「いや、こればっかりは俺が悪い。でも、そうなると、だれか人を呼んでこないといけないな。量がかなりある以上アルバンを呼ぶべきか」
「私が呼んできましょうか?」
「いや、一緒に行くか。ただ行くだけじゃなくて持てる分を運んでしまおうか」
「はいっ!」
俺たちは早速持てる分の石を持って、領地へと帰っていった。
◇◇◇
「石を運ぶのですか?」
アルバンに伝えると、彼は不思議そうに首を傾げていた。
確かにただ石を運ぶと言ってもわからないだろう。
「あぁ、城壁を作るのに使おうと思ってな。ただ、流石に俺たちじゃ重たくて運べなかったからアルバンに頼みたいんだ……」
「それならお安いご用です。ソーマ様の頼みでしたら――」
「ま、待って下さい! それならこのエーファにお任せ下さい! アルバンなんかに任せられないですよ!?」
アルバンに頼んでいると、エーファが間に割って入ってくる。
「えっと、俺からすればどっちでも大丈夫なんだが、エーファは運べるのか?」
俺たちの中で一番小柄のエーファに大量の石を持たせて必死に運ばせる光景を想像して、思わず首を横に振る。
「いや、やっぱりアルバンに任せる。エーファだと俺の良心が痛む」
「ソーマ様! 大丈夫です。こんなアルバンなんかにまかせずに私にまかせて下さい!」
「いえいえ、ソーマ様は私を直々に選んでいただいたのですから、私が運ぶのが当然です。このトカゲ風情にまかせるのは心配ですから」
「なにを!? この最強のドラゴンである私に勝てるとでも?」
「ドラゴンはドラゴンでも今は子供だろう?」
「よし、やるか!」
エーファとアルバンがバチバチと火花を飛ばし合う。
そんな彼らの姿を見て俺は思わず苦笑をする。
「待て待て。喧嘩をするくらいなら二人で運んできてくれ。そもそもどっちか一人だけに頼む理由がないわけだからな。二人で頼む」
「よし、それならどっちが大きい石を運べるか勝負だな」
「くくくっ、ドラゴンである私に勝てると思うなよ!」
二人が勝手に走ってどこかへ走って行ってしまう。
「あっ、石の場所はまだ伝えていない――」
そう思ったとき、既に二人の姿は見えなくなっていた。
そして、数時間後。
俺たちの目の前には巨大な岩が大量に積まれていた。
「くっ、中々やるな」
「人間の癖にそれなりにやるようだな」
なぜか達成感を持っていた二人だったが、おおきい岩と言うだけで、どちらもE級石材で、クルシュが探し出してくれたものに及ばなかった――。




