3.万能薬
翌朝から、俺は再び数値上げを開始していた。
『戦力』を上げるために、アルバンの代わりに小屋を作ってみたり……。
『農業』を上げるために、いつもより畑を耕したり……。
『商業』を上げるために、頻繁にバルクの商店へ出向き、色んなものを買ってみたり……。
『工業』を上げるために、鍛冶を何度もしたり……。
その結果――。
「あ、上がらない……。ど、どうしてだ?」
実際には微妙に数字は上がっている。
でも、それがレベルアップにまでは到達しなかったのだ。
【領地レベル】 4(16/32)[村レベル]
『戦力』 12(18/75)[人口](17/21)
『農業』 8(35/45)[畑](8/8)
『商業』 9(42/50)[商店](1/9)
『工業』 15(2/90)[鍛冶場](1/1)
このままだと、いつまで経っても領地は大きくならないぞ?
何かもっと効率よく上げる方法を考えないといけないな。
「ソーマさん、どうしましたか? 何か悩んでるように見えますけど?」
「あぁ、中々この領地を発展させることができなくてな……」
「そ、そんなことないですよ!? ソーマさんが一人で始められたと思えないくらい急成長していますよ!」
「そうか? まだたった十七人しかいない領地だぞ? 正直村レベルとしか……」
「それは仕方ないです。噂が広まるのには時間がかかりますからね。でも、ここにいる人たちはみんなソーマさんの話を聞いてきてくれた方ですよ? 十分誇っても良いと思います」
「そっか……。俺が焦りすぎていたのか?」
クルシュに言われて、改めて考えを変える。
確かにゲームの時は一日が数分程度に縮められていたので、あっという間に時間が過ぎていた。
しかし、これは現実――。
一日で成長するにはたかがしれているかもしれないな。
「ありがとう、クルシュ。また俺が悩んでたら相談に乗ってもらっても良いか?」
「も、もちろんです。私がソーマさんの助けになれるのならいくらでも良いですよ」
それならもう少し長い目で見てみるか。
視点を変えることで、何か別のことが見えてくるかもしれないもんな。
「それなら今日は何をするかな……」
領地の発展を慌てないで行っていく……と考えると、すぐにしないといけないことは――。
「ラーレの万能薬作りか」
「S級の万能薬が必要なんでしたよね?」
今、俺が作れる万能薬はD級まで……。
一応、この万能薬をいつか作れるから……とラーレにはこの領地に来てもらった。
それを考えると、なるべく急いで作っておきたい。
【名前】 万能薬
【品質】 D[薬]
【損傷度】 0/100
【必要素材】 C級魔石(1/50)
【能力】 病気を治す[D級]
万能薬の作り方を見ながら悩む。
魔石を集めるべきか、それともこれを作る素材であった、毒草の高品質なものを探すべきか……。
「今は毒草だな。魔物を倒すには俺たちだと戦力不足だ」
領地の外を探すとなると、俺、クルシュ、ラーレのメンバーで行くことになる。
アルバンたちが離れている今、必要素材であるC級魔石を出す魔物を倒すには戦力不足といえるだろう。
「探索に行かれるのですね。ラーレちゃんを呼んできましょうか?」
「あぁ、よろしく頼む」
◇◇◇
しばらくすると、ラーレがクルシュによって引っ張られてくる。
「わわっ、な、何よ。ど、どこに行くのよ!?」
「ソーマさんが来て欲しいって言ってましたよ」
「そ、ソーマが!? そ、それならなおさらよ。ちょ、まだご飯食べてるから……」
ラーレは串に刺した焼き魚を片手に慌てていた。
確かに連れてきて欲しいって言ったけど、食事の時間くらい待つぞ……。
「とりあえず、クルシュ……。少し待つから食事くらい取らせてやってくれ」
「わ、わかりました」
「ふ、ふんっ、わ、わかれば良いのよ」
それから魚を食べるラーレを眺めていた。
すると、ラーレが顔を赤くして聞いてくる。
「わ、私のだけど、一口だけ食べる?」
「えっ?」
「一口だけ!? 一口以上は許さないからね!?」
「いや、大丈夫だぞ? ラーレが食べ終わるのを待ってるから」
「だからそうやって待たれるのが落ち着かないのよ!? 食べたいなら食べたいって言いなさい!」
「いや、別に食べたいわけじゃないぞ?」
「うぅぅ……、は、謀ったわね!?」
「だから、なんのことだ?」
首を傾げていると、ラーレは顔を真っ赤にして、目に涙を浮かべていた。
そして、大急ぎで魚を食べきっていた。
「もう食べたわよ! ほらっ、どこかに行くんでしょう? 早く行きましょう」
「わ、わかった……。それじゃあ、外へ行くか……」
それから俺たちはまず北へと向かうことにした。
理由は、深い森が広がっているから――。
森の方が毒草の生えていそうな感じがするからな。
「森へ行くのね。わかったわ。さすがに危険な魔物が出るところまでは行かないと思うけど、いざという時は逃げられるようにしておきなさいよ? 私が殿に残るから」
「だ、ダメですよ!? そんなことをしたらラーレちゃんが危険な目に遭いますよ!? わ、私が残ります……」
「はぁ……、クルシュ、あなたまともに戦えないでしょ? このメンバーなら戦闘要員は私になるから、私がやるわよ」
「でも、でも……」
「ちょっと待て。なんで、危険になる前提なんだ? そんなトラブルが起こりそうなところには行かないぞ?」
「はぁ……、あんた、今までの出来事を覚えてないの? 私が着たときから今まで、ずっと何かしらのトラブル続きじゃない? どうせ今回も何か起こるのよ!」
「いやいや、今回は毒草を探しに行くだけだからな。それ以上でもそれ以下でもないぞ?」
「いつもそう言ってるでしょ? まぁ、いいわよ。対策をしておけば、いざって時に動けるだけだからね」
ため息交じりに答えるラーレ。
そして、俺たちは森へ向かって進んでいった。




