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やりこみ好きによる領地経営~俺だけ見える『開拓度』を上げて最強領地に~  作者: 空野進
2.1.腹ぺこ聖女と元聖女見習い

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1.アルバンたちの出発

 アルバンとエーファは、クルシュを誘拐した犯人を連れて王都へと向かっていった。


 縄でぐるぐる巻きにされた犯人とエーファに乗るアルバン。

 実力を考えたら、安心できる二人なのだが、なぜだろう? どうしても不安が拭いきれない。


 それに小柄な少女であるエーファに乗る筋骨隆々とした鎧男であるアルバン。

 犯罪臭しかしないのだが……。


「主様、このエーファがしっかり王都を焼き払って、主様の威光を知らしめてきますね!」


 無邪気に大きく手を振ってくるエーファ。

 ただ、その行動だと俺が反乱を起こしているようにしか見えない。


「ちょっと待て! そんなこと言ってないぞ!? それだと俺が捕らえられてしまう!!」

「あれっ、そうでしたか? わかりました。では、全ての元凶はアルバンと言うことに仕立て上げておきます! それでしたら主様に被害が及ぶことはありませんので」

「おいっ、ちょっと待て!? そんなこと、俺がさせると思うのか!?」


 アルバンが鋭い視線を向けて凄んでみせるが、エーファの上に乗ったままだと、それはたいして迫力が出ない。


「えっと……、ソーマさま……。本当に大丈夫でしょうか? その……、私かラーレちゃんが付いていった方がいいのでは?」

「うーん、俺もその方が良いような気がしてきたな」


 クルシュが不安そうに二人を見ながら言ってくる。

 俺も不安の声を上げるとエーファが再び俺たちの方へ向いて、声を上げてくる。


「主さまー!! 大丈夫ですよー!! 全てエーファにお任せ下さいー!!」

「お、落ちる!! お前、なんで大トカゲに戻らないんだ!?」


 振り向きざまに落とされそうになるアルバンが慌てていた。

 いや、まだアルバンは頭に乗っているだけマシかもしれない。

 誘拐犯はロープで引きづられているだけ……。

 すでにその体は土まみれ、泥まみれで、目を回している。


「ふ、不安要素しかない……。でも、確かエーファってドラゴンへ戻るためのスキルがまだ戻ってなかったよな」


 白龍王エーファ。

 その力はこの領地の誰よりも強かった。

 ただ、呪いを受けていて弱体化していたところに襲撃を受け、なぜか俺が彼女を助けてしまってこの領地に住んでくれることになった。

 呪いの方も人化することで、解除することはできたのだが――。


【名前】 エーファ

【年齢】 10752

【職業】 白龍王

【レベル】 4(0/4)[ランクE]

『筋力』 2(14/150)

『魔力』 9(1/500)

『敏捷』 2(3/150)

『体力』 3(9/200)

【スキル】 『威圧』1(214/1000)『龍魔法』2(145/1500)『飛翔』1(45/1000)


 やはり、スキルには『人化』が戻っていない。

 いや、今は人になっているわけだから『龍化』か?

 とにかくそのスキルが復活してくれない限り、エーファはただの少女である。


 今でも龍魔法が強力すぎるので、十分この町の戦力になってくれている。

 今のままで戦力になっているということは、元がどれだけ強かったのか、という話にもなってしまうが――。


「はぁ……、全く、何をしてるのよ。わざわざエーファに乗らなくても、馬車で行けば良いじゃない」


 目を細め、ため息交じりにラーレが言う。


「あっ……」


 それを聞いて俺はハッとしていた。


「それも、そうですね。わかりました。私、バルクさんから馬車をもらってきますね」


 クルシュが大急ぎでこの町、唯一の商店へ向かって行く。

 ただ、数歩進んだ瞬間に盛大に転び、顔から地面へ突っ込んでいた。


「あうっ!?」

「だ、大丈夫か、クルシュ!?」


 慌ててクルシュの側に駆けよって、彼女の身を案じる。


「あははっ……、大丈夫ですよ。その……、ちょっと転んだだけですから……」

「で、でも、血が出てるぞ……。治療、治療……」


 その場で慌てふためいてしまう。


「そ、そうだ、回復薬!」

「い、いえ、そこまでするような怪我じゃないですよ!? わ、私に使わずに、それはこの町の金銭の足しにしてください」

「いや、金よりクルシュだ! ほらっ、少し染みるぞ!」


 静止させようとするクルシュを振り切って、俺は回復薬を血が滲み、赤くなっている膝にかけていく。


「うっ……」


 すると、クルシュは痛みで苦悶の表情を浮かべていた。

 しかし、弱みごとをいうことなく、グッと手を握りしめ、痛みを耐えていた。

 その甲斐もあり、傷はすぐに治った。

 ただのかすり傷程度だったので、低級の回復薬でも十分に治ってくれるようだ。

 まぁ、それは当然であったが、それでも俺は安心してしまう。


「よし、これで大丈夫だろう」

「あ、ありがとうございます、ソーマさま……」


 クルシュは頬を染めながらも、うれしげな笑みを向けてくる。

 俺も安心してクルシュへと視線を向けると、ばったり彼女と目があってしまう。

 すぐ側にあるクルシュの顔。

 彼女も次第に恥ずかしくなってきたのか、顔が更に朱色に染まっていく。


 さすがにこれはやり過ぎた……。


 俺は慌てて顔を背ける。クルシュの方も頬に手を当てて俯いてしまった。

 すると、そんな二人を見たラーレが両手を広げ、呆れ混じりに首を振っていた。


「全く何をしているのよ、二人とも。ソーマは心配しすぎ! クルシュもそそっかしいのよ。元々鈍くさいのだから気をつけなさい!」

「た、確かにただの怪我だもんな……」

「ありがとうございます、ラーレちゃん。次は気をつけますね」


 ラーレに窘められたことで我に戻ると、二人して彼女に頭を下げる。


「わ、わかれば良いのよ、わかれば……」


 謝られたことに少し慌てるラーレ。

 すると、何か考えたのかエーファがその場で盛大に転ぶ。


「おわっ!? い、いきなり転ぶな!!」


 慌てた声を出すアルバン。

 しかし、エーファはそんなこと気にすることなく、俺の方をチラチラ見てくる。


「主様ー、エーファも転んでしまいましたー。優しくしてくださいー」

「いやいや、エーファよりアルバンたちのほうが大変だ。ちょ、ちょっと待っていろ!」


 龍であるエーファは転んだだけだと怪我はおろか、擦り傷すらついていない。

 一方アルバンは受け身すら取れずにそのまま放り飛ばされて、側の木に頭をぶつけていた。

 俺は慌ててアルバンの側に行くとエーファは頬を膨らませて拗ねていた。


「むぅ……、そんな筋肉だるまのことなんて放っておいたら良いのに……。主様は人が良すぎます……」


 しかし、それを気にすることなく、俺はアルバンに対して、回復薬を渡す。


「そ、ソーマさま!? こ、こんな貴重なもの、いただくわけにはいきません。わ、私めは適当に唾でも付けておけば治りますので、その薬はソーマさまがお持ちください」


 薬をそのまま押し返してくるアルバン。

 もちろんここまでは想定の範囲内だった。

 俺は首を横に振り、無理やりアルバンに渡してしまう。


「ダメだ! それはアルバンが飲むんだ。それとも俺の頼みも聞けないのか?」

「うっ……。ソーマさま……。こんな私めにそこまで気を遣っていただけるなんて、本当に……、本当にありがとうございます。こちらは家宝として神棚に飾らせていただきます」


 珍しく強めの口調を使ったのだが、アルバンはその斜め上を行く。

 思わずその場で転けてしまいそうになるのを堪えて、ため息交じりにもう一つ回復薬を取り出す。


「わかった……。それは神棚に飾っても良いからこっちの方を飲め。これは命令だからな」

「そ、そこまで私のためにしていただけるとは……。このアルバン……、命尽きるまでソーマさまに尽くさせていただくことをここで改めて宣言させていただきます」


 目に腕を当てて、涙を拭うアルバン。

 どう見ても大げさな態度。


「ソーマ……、おっさん、どこか頭打ったの? いくらなんでも大げさすぎるわよ?」


 ラーレが少しだけ心配してくる。

 確かに頭を打った衝撃でどこか状態異常に陥っている可能性もあるか……。

 俺は一度アルバンも調べてみることにした。


【名前】 アルバン

【年齢】 36

【職業】 聖騎士

【レベル】 20(1/4)[ランクC]

『筋力』 31(35/2100)

『魔力』 11(395/600)

『敏捷』 5(174/300)

『体力』 25(35/1300)

【スキル】 『剣術』11(662/6000)『聖魔法』4(10/2500)『木工』3(1824/2000)『威圧』6(15/3500)『剛剣』2(584/1500)


 数値を見る限り、どこもおかしくなっている部分はない。

 つまり、この態度はいつものアルバン、ということで間違いないようだ。


「大丈夫そうだな……」

「……むしろ、大丈夫じゃないわよ。どこか頭でもぶつけた方が正常に戻ったんじゃないかしら」


 辛辣な言葉を投げかけるラーレ。

 その隣でクルシュも同意見なのか、苦笑を浮かべていた。


「あ、あの……、アルバンさんもそうですけど、そちらの方にも回復薬を差し上げた方が良いんじゃないですか?」


 クルシュがおどおどと告げる。

 その視線の先には、ロープでぐるぐる巻きにされた誘拐犯の姿があった。

 しかし、アルバン同様に飛ばされ、木にぶつかったようで目を回していた。


「……別にクルシュを誘拐する奴なんて放っておいたら良いじゃない?」

「えとえと……、確かに誘拐は悪いことですけど、でもでも……」


 アタフタとするクルシュ。


「それもそうだな。確かに王国に引き渡す前に大けがをされても困るな。俺たちが拷問をしたように見えてしまう」

「主さまー! 拷問ならぜひこのエーファにお任せを!」

「トカゲ風情にそんなことできるものか! このアルバンこそが最適かと提言させていただきます」


 エーファとアルバンがにらみ合いながら言ってくる。

 いや、拷問なんてする気がないんだけど……。

 俺は苦笑をしながら言う。


「ま、まぁ、そんなときが万が一……、億が一訪れたら、そのときは頼むな……」

「はいっ!!」

「お任せ下さい!!」


 俺に頼られたと思ったのか、二人はうれしそうな声を上げていた。

 その様子を見て、苦笑を浮かべずにはいられなかった。


「はぁ……、あんたも大変ね。まるで子育てみたいね……」

「そう思うならラーレも手伝ってくれ……」

「無理よ。あの二人はあんたの話しか聞かないじゃない」


 ようやく回復薬を飲んでくれて、その効果に感涙しているアルバンを見ながら呆れてしまう。


「えっと……、それよりも王都への出発はどうされるのでしょうか?」


 ぼんやりと呟くクルシュ。

 結局、アルバンたちが王都へ出発したのは日が暮れる少し前になっていた――。


コミック版が完結しました。

書籍版をベースに話の展開を修正させて貰っております

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新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『滅びの魔女の謀(はかりごと)』

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