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おっさんニートと一緒に移動

 こんな感じで、産院での生活はあっという間に過ぎていったんだ。

 そろそろ退院かなと思っていたある日の朝、田中が申し訳なさそうな顔をして俺の部屋へやって来た。


「谷さん申し訳ないんですが、大部屋へ移動していただいていいですか?」


「大部屋!?」


「10月は出産が重なっちゃってハイリスク妊婦さん達も多いんです。谷さんの容態は安定しているので大部屋でも大丈夫かと……」


 大部屋なんて無理無理、他人と同じ部屋なんてニートにとっては拷問部屋に等しい。


「赤ちゃんは? 終日同室って言ったじゃん」


「赤ちゃんは一旦私達が面倒を見ます。いつでも好きな時間に新生児室まで会いにいらしてください」


「授乳の時はどうしたらいいの? 他の患者の見舞い客も沢山来るよね」


「大部屋の方達には共同の授乳室を使っていただいてます。最初は恥ずかしいかもしれないけど定期的に助産師が授乳指導を行っていますし、他のママさん達と交流も持てますよ」


 授乳室だと!?


「分かりました。喜んで」


 俺はハイリスク妊婦さんが元気な赤ちゃんを安心して産めるように身を引いたのだ。それなのに神様はそんな健気な俺をちっとも評価してくれなかった。大部屋で待っていたのは地獄の3日間だったんだ・・・


 移動先の大部屋は3階の分娩室の側、俺が入るベッド以外の5床全てが埋まっていた。大部屋には出産以外の理由で入院している人も居る。田中には他の患者さんの詮索はしないように言われた。


 まあ、予定では退院まで後3日だしおっぱい見て辛抱したろ。


 病室に入ると女子特有の雰囲気が皆無な事に驚いた。皆仕切りのカーテンを閉めて大人しくしている。


「皆さん今日からこの大部屋に移動して来られた谷さんです。仲良くしてあげてくださいね」


 し~ん


「ん? あれ?」


 田中が俺を紹介してくれたけど誰1人として反応してくれなかった。

 でも、症状が軽いと言っても入院患者の中ではというだけで皆何かしら不安を抱えているものだろう。俺は気にしない事にした。


 シャワーを浴びた後、次の授乳まで時間があるのでベッドでゴロゴロしていたら大変な事に気付いてしまった。


 これってハーレムじゃね!?

 俺は異世界に飛ばされた勇者、悪い魔法使いにダンジョンに閉じ込められている。そこには俺以外に5人の魔女が・・・。

 そんな妄想をして楽しんでいる最中、斜め向かいのカーテンがものすごい勢いで開かれる音がした。


 シャ―――――ッ!! ガラガラガラガラガラ……


「ちょっとアンタ! 菓子折りの一つもないとかフザケてんの!!」


 んっ、俺に言ってるのか? せっかく5人目まで孕ませて後は悪魔の番だったのに……。


「開けるわよ!」


 シャ――――――ッ!


「キャアッ!! 何であんた裸なのよ!?」


 そこには点滴スタンドを杖代わりにした妊婦が居た。年の頃は20代半ばといったところだろうか。綾○は○かを肥溜めに入れてツームストーン・パイルドライバーと腕挫腕固をくらわせて2発ぐらい殴ったような顔をしている。


 うん、普通に可愛いじゃん♪


「いっ……今から着替えようとしていたんですが……」


 とっさに何とかそれらしい言葉がでた。後3日、何事も無く過ごしたい。


「ああ、そう。なら早く着替えなさいよ」


 後に確認したんだが彼女の名前は元木美結(みゆ)。俺は彼女のおかげで女の怖さと強さ、母親の心情を知る事が出来たんだ。


「ほら早く着替えて! モタモタしないで!! こっちはウテメリン追加されてイライラしてるのよ」


 ウミタリン! 何かよく分からないけど、もっと孕みたいって事!?






妊娠高血圧症候群で長期入院、出産した作者が自分の体験も交えて書いています。


私の時は血圧の最高値上190、尿淡白3000台で予定日より3週間程早く帝王切開にて出産しました。

部屋の移動は実際に経験した事です。


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