おっさんニートと夜泣き_2
夜泣きとは、特にこれと言った原因が無いのに乳幼児が夜中に泣き出し、ぐずり続ける事を言う。早ければ生後3ヶ月頃から始まり、平均的には1歳半頃まで続く。
あれから1ヶ月、相変わらず夜泣きは続き、俺だけではなく家族皆が寝不足になっていた。なのでこの頃にはベビーベッドを夫婦の寝室に移し、俺も不本意ながらリビングではなく親父と一緒に寝ていた。
ギャアアァア、ウギャアアアァァ、ウギャアアアァァ
深夜2時、また怪獣が目覚めた。
「美保りん、また始まったよ!」
「あー、はいはい」
俺は赤ん坊を抱っこすると、背中を軽く叩きながら家中を歩き回る。
「また悠くんは夜泣きなの?」
「すみませんね」
階段を降りようとした時、叔母さんに声を掛けられた。
「私が買ってあげた夜泣き対策の本、ちゃんと読んでる?」
「……」
叔母さんが買って来てくれた【ジー○式で赤ちゃんもママもぐっすり快眠】という本の内容は外国人が外国での育児を想定して書いている。そこに書かれている夜泣き対策は、とても日本の密集住宅街で実践できるものではなかった。
ウギャアアアァァ、ウギャアアアァァ、ウギャアアアァァ
「美保りん、全然泣き止まないよ! 夜間救急に行こうよ!!」
「止めんか!!」
親父は医者に夜泣きと診断された後も、納得できないでいるのか、はたまた面白くなってきたのか分からないが直ぐに夜間救急に連れて行こうとする。しかも今月に入ってから3回も救急車を呼んでいる愉快犯だ。常に監視していなくてはならない。
「やっと寝た……」
「喉渇いてたのかな?悠くん」
添い乳で授乳する事40分、喉が渇いてたのか泣き疲れたのか分からないがやっと赤ん坊が寝た。起こさないように慎重にベビーベッドに移す。着陸成功、俺達もベッドに戻って眠りにつく。
「……美保り~ん♪」
ウトウトし始めた頃、親父が猫なで声で後ろから抱き付いて来た。
「ヒッ!」
「久しぶりに仲良くしようよぅ♪」
「ヒエエッ!!」
とうとうこの時が来てしまった。
夫婦だから当たり前の事なのだが、中身は息子のおっさんニート。36歳マザコンのおっさんが45歳のおっさんニートとまぐわう不条理。
「美保りーん♪ ちゅきちゅき~、チュ~♪」
(親父と初体験なんて絶対嫌だ!! てか息が臭い、腐ったスーパボールみたいな臭いがする)
「あなた止めて! 生理中なのよ!!」
俺は咄嗟に考えた嘘を親父に言った。これなら違和感が無いので大丈夫なはずだ。
「美保りんのイチゴジャム♪ 美保りんのイチゴジャム……ハアハア……」
「ヒッ!」
親父は逆に興奮して迫って来た。どうやらマザコンに加えて変態のようだ。
「美保りんのイチゴジャムジュルジュルしちゃうよお――――!!」
「ヒイイイイィッ――――!!」
ほんの少し性的表現があるのでR15指定入れました。
ある国では夜泣きは基本放置するそうです。日本では防音性の高い家でないと無理ですね。




