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おっさんニートと沐浴しましょ

「失礼します。相田さん、そろそろ点滴無くなる頃じゃないかしら……あら! 皆さん何してるの? 安静にしてなくちゃダメじゃない」


 看護士が心愛ちゃんの点滴を換えに来た。一同はゆっくりと自分のベッドへ戻る。


「前にも言ったけど、点滴無くなったらちゃんとナースコール押してね」


「は~い」


 隣のベッドは心愛ちゃんだったのか。デュフフ……。

 最初はどうなるかと思ったけど皆わりと良い人そうじゃん。元木の事は気になるけど後3日しか一緒に居ないんだし余裕、余裕。

 あっ、プリン渡し忘れてた。冷蔵庫に入れとこ。


 ガチャ


「……無いだと」


 おばあちゃんの手作りガトーショコラが無い。大平大明神の神隠しか!?


「昼食の配膳に参りました」


「ご……ばん……おなが……べった……」


 大平大明神、妊娠高血圧症候群で管理入院してるのにそんなに食べてたら絶対退院できないだろ。


「谷さんお食事中のところ悪いんだけど、そろそろ退院指導を受けてほしいのよ」


 心愛ちゃんの点滴を交換し終えた看護士が俺に話しかけて来た。


「退院指導?」


「内容は沐浴のさせ方や赤ちゃんの体調管理についてのお話しよ。昼食後に1階のキッズコーナーを借りて行うわ。ご家族の方々も一緒に受けられるのよ」


 めんどくさ~。


「あら、いいじゃない皆で受けましょうよ」


 あっ、おばあちゃんと親父帰って来た。思ったより早いな。


 看護士が退院指導を受けないと退院させませんよと脅してきた。仕方ないので赤ん坊を連れて4人でキッズコーナーへ行った。

 キッズコーナーでは俺達の他に来週退院するであろう親子が8組ほど集まっていた。


「皆さん毎度お馴染み助産師の赤石です。今日は皆さんの育児が少しでも楽になるよう退院後に役立つ(スベ)や息抜きの方法等を伝授できたらと思います。それでは早速、沐浴指導から始めていきます」


 へ~、ゴッドハンドこういう事もするんだ~。


「お人形では味気ないので、どなたかの赤ちゃんを沐浴モデルとしてお借りしてもよろしいでしょうか? 是非、我が子をと言う親御さんはいらっしゃいませんか?」


「はい! はい、はい、は――――――――――――い!!」


 ちょ、ちょっと! おばあちゃん!?

 俺のおばあちゃんが元気に手をあげた。せっかくスヤスヤと眠っているのに。


「立候補ありがとうございます。でも出来たら起きてる子がいいかな。他に誰か立候補はございませんか?」


「は~い」


 プリピアスとヤクザイルの隣に座っている中年の派手な女性が手を挙げている。ヒョウ柄のTシャツに黒いレースのカーディガン、しかもホットパンツだ。親子共々DQNだ。こいつ等多分、休日になると田んぼに囲まれた国道をゼロク○ウンで走ってイ○ンやし○むら、またはパチンコ屋で半日以上過ごしてるような奴等だ。

 関わってはいけない人種、流石におばあちゃんもモデルを譲るはず。


「ほら! 悠ちゃん起きるのよ!!」


 ユッサ、ユッサ、ユッサ……


 おばあちゃんが赤ん坊を揺すり始めた。やーめーてー


「あなたがモデルになるのよ。モデルよモデル」


 ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ……


「お義母さん止めてください。お譲りしましょう」


「わー! 頑張れママん」


 ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ……


 頑張れママんじゃねえよ。このマザコン親父。


「何をしているんです! 赤ちゃんをそんなに揺すってはいけません!!」


 ゴッドハンドが止めに入った。それでもおばあちゃんは引き下がらない。


 ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ……


「起きて、起きてあなたの立派な男のシンボルを皆に見せつけてやりなさい」


「そうだー! 悠くんのは凄いんだよ。きっと令和の種馬として歴史に名を残すんだ」


 何言ってるんだ2人とも!? 残念ながらそのシンボルは除幕式さえ迎えず社会の闇に葬られるのに。


 ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ、ユッサ……


 あっ……こいつ等、頭おかしいんだ。だから俺ニートになったんだ……。


「止めなさい! 止めて! 赤ちゃん死んじゃいますよ。もうあなた達は退場!! た――――い――――じょ――――う―――――!!」



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