05話 試練開始 (改)
-王との会談から、一週間がたった。
王は、約束通り、俺に家を建ててくれた。それも、ナドニウス王国の貴族達が住む、一等地に。
俺は、ニヤニヤしながら、出来上がった家を見上げる。
宮殿のような大きな建物に、広い庭。実に立派だ。庭に刺さっている剣が少し気になるが、特に問題はないだろう。
庭で少し寛いでいると、先日俺を城まで案内してくれた兵士がやって来た。
「おぉ、イール君。どうしたんだ?」
「軍部司令官として、お祝いに参りました。」
そう、彼はイール・ジェネラル。ナドニウス王国の軍部最高司令官、及び国王の側近という二つの仕事を任されている、結構すごい人なのだ。
「お祝いか、わざわざありがとう。んで、手に持っているそれはなんだい?」
「祝品の、お酒でございます。ぜひ、ゆっくりとご堪能ください。」
お酒、こっちの世界に来て初めてのお酒。心が浮き立つのが感じられた。
「カズヤ殿、そろそろ本題に戻ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、ごめん。」
「大丈夫です。それで、庭の剣、あれが王からの支給装備です。魔法効果も付与しておりますので、ぜひお使いください。」
「え?これだけなのか?」
「これだけでございます。」
「おい、それは真か?防具とかないのか?我の服装は、パジャマであるぞ…?」
「勇者には不要だ、と聞いているので。」
なんだよそれ!死んでしまうぞ?
≪カズヤ様。世界の死は、勇者の死。勇者は、世界が滅びる時までは、何があっても死にはしません。ただ、ダメージを受けた際、激しい痛みに襲われます。≫
いいのか悪いのかよく分からないな。まぁ良しとしよう。
「カズヤ殿、そろそろ出発致しますか?」
「そうだな。一週間も準備に頂いたし、そろそろ行くとしよう。」
「では、お帰りになられたら、宴会を開きますね。」
「おぉ、感謝する。」
俺は町の郊外にある、森へと向かった。まぁ、向かうと言っても……
- ナビ!〝空間操作〟! ー
≪了解。アポロンの森へ、転移します。≫
その声と同時に、視界が回転し、目の前に森が現れた。
酔って吐きそうにはなるが、実にいい能力だ。
…にしてもこの森、気味悪いな…。湿気多いし、なんか禍々しい妖気漂ってるし。
俺は意を決して、森の中へと踏み込んだ。
すると、10歩ぐらい歩いたところで、魔物が飛び出してきた。
プニョプニョした、青い身体。小さい丸いフォルム。多分、というかどう見てもスライムだ。
この世界にもスライムは存在しているんだな…。
よし、試しに切ってみよう。
-ズバッー
あ、死んだ。やっぱこの世界でもスライムは弱いんだな…。もしかして、全世界共通とか?
俺は、そんなことを考えながら森を進み、出てきた魔物を大量に倒した。
-どうやら、スライムが弱かったわけではなかったようだ。なぜなら、あの後出てきた魔物も、全てスライム同様、一撃で倒せたからだ。強さが同じなのか?
≪そうではありません。カズヤ様がお持ちの剣の魔法効果の一つ、〝絶対切断〟の効果です。なお、この効果は、剣が破壊されるまで持続します。≫
え?そんなの、チートじゃないか?ナドニウス国王、すげぇ物くれたな。
これさえあれば、上位竜討伐なんて楽勝じゃないか!
-「ええええぇぇぇぇええ!!??」
目の前にいるその竜は、ナドニウス国王がくれたチート剣を、一撃で消し飛ばした。
いくらチート剣でも、耐久力が無ければ意味がないだろ!
そもそもこいつは、ナドニウス国王の3倍程の妖気があるのだ。勝つのは難しいかも…。
もしかして俺、面倒な仕事を押し付けられただけなんじゃ…
やられた。やめときゃよかった。そりゃあ、あんな高待遇をするのも当然だろう。
そんなことを考えている一瞬の隙に、竜の口が光り、光速を遥かに越えた、光線のような物が放たれた。
-これは、完全に死んだな。
カズヤ、大ピーンチ(棒)
次回はもうちょっとで書き終わります。